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門川市長記者会見(2018 年3月26日)

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2023年4月12日

市長記者会見(2018年3月26日)

児童養護施設等退所者支援の充実について

 本日は,「児童養護施設等退所者支援の充実」について,御報告します。市民の英知を結集した「はぐくみ憲章」。その理念である「市民ぐるみ・地域ぐるみの子育て支援」を更に推進させるため,市役所の組織も抜本的に改革しようということで,福祉,保健,医療,教育を一体化し,子ども・若者に関する施策を総合的に担う「子ども若者はぐくみ局」の創設から,間もなく一年が経過します。区役所には「子どもはぐくみ室」も設置しました。

 私が敬愛する故河合隼雄先生が以前,こんな話をされていました。「自立というのは人に依存せずに生きることではなく,自分がどれほど依存しているかを自覚し,必要な助けを受け入れ,感謝していることではなかろうか」と。人のお世話にならずに生きていくということは不可能なので,それを目指すことが決して「自立」ではないということです。

 しかし,残念なことに,昨年6月に大規模に実施した本市独自の調査では,児童養護施設の退所者は,本来なら拠り所となる家族に頼ることができず,身近に相談できる大人が少ない状況の中で,自立を迫られていることが明らかになっています。こうした退所者を支えるには,社会全体で子どもを見守り,大切に育てていく,京都に息づく「はぐくみ文化」を生かした取組をこれまで以上に推進していかなければいけない。そんな決意を新たにしているところです。そうした想いに共感いただいた京都児童養護施設長会,京都市ユースサービス協会,京都市社会福祉協議会,同志社大学と連携し,この度,退所者の人生の船出を応援する生活ハンドブックを作成しました。

 このハンドブックは,退所者が社会生活を送るうえで実際に起こりそうな事例をもとに,退所後の必要な支援・相談窓口,お金や仕事に関する必要な情報等を行政の専門用語を避け,分かり易くマンガで解説しており,子どもたちに手に取ってもらいやすいようになっています。

 本日は,作成に御協力いただいた皆様もお越しいただいていますので,紹介させていただきます。まずは,京都児童養護施設長会から,京都聖嬰(せいえい)会の北村俊樹(キタムラ トシキ)さんです。次に,京都市ユースサービス協会から,南青少年活動センターの清水方人(シミズ マサト)さんです。次に,京都市社会福祉協議会から,ボランティア支援部部長の木俣紀子(キマタ ノリコ)さんです。これらの方には,編集委員として,実際の経験を踏まえた多くの有意義な御意見をいただきました。また,本日は来られていませんが,実際の施設退所者の方や約20の関係団体からも御意見を頂戴しております。

 例えば,「施設で過ごす期間が長かった子ども達は,ポストを見る習慣がなく,料金支払いの督促状を見落とすことがある。」といった事例や,性感染症検査を受けるよう子どもに勧めると,子どもたちはすぐに「そんなん大丈夫やって!」と言ってしまうエピソードは,より現場の実態に近い内容となっております。

 続きまして,イラストを描いていただきました同志社大学漫画研究会から藤田太郎さん(フジタ タロウ)さんです。非常にかわいらしいタッチの絵で,コミカルに描いてくださり,伝えたい内容を視覚に訴えることで,子どもたちにも印象に残るハンドブックになったと思います。なお,この春に児童養護施設を退所される方にも,イラストのデザインを手伝っていただきました。

 皆様のおかげで,非常に分かりやすく,使いやすいハンドブックが完成しました。自治体が,関係機関で編集委員会を立ち上げて,こうしたハンドブックを作成するのは指定都市初となる取組であり,内容も全国一の内容であると自負しております。更に,皆様には,このガイドブックの推薦コメントを頂戴しております。時間の関係で御紹介できませんが,皆様の思いを御一読いただければと思います。改めて皆様に敬意を表するとともに,感謝申し上げます。

 児童養護施設等を退所される方への支援は,このハンドブックが核となった支援を実施してまいりますが,本市では,昨年6月の調査を踏まえ,相談窓口の充実をはじめ,孤立化の防止や財政的支援,更には適切な情報提供など,退所者の不安を解消し,退所者と伴走しながら支援する体制を整えました。主に4点の支援策を紹介します。

 まず1点目は,「新たな相談窓口の追加」です。9月に市内7箇所の青少年活動センターを退所者の相談窓口として,追加しました。退所直後は,我々が想像している以上に大きな不安を抱えています。その不安を解消するため,いつでも相談に乗れるよう体制を整えました。

 2点目は,「居場所の確保」です。児童養護施設の退所者は,孤立してしまう傾向があります。昨年11月から,同じ境遇を持つ退所者が集まる「食」をテーマとした交流事業を定期的に開催し,他の人と交流しながら,居場所を確保する取組を実施しています。

 3点目は,「支援コーディネーターの配置」です。施設退所者の不安や困りごとに対して,活用できる既存の支援策があるにもかかわらず,施設退所者と支援をつなぐ取組が不十分でありました。平成30年度から,新たに児童養護施設及び児童心理治療施設に合計8名の支援コーディネーターを配置し,入所中から退所後を見据えた支援計画を策定するとともに,退所後も,日々の生活で抱える不安や悩みの相談相手として活動してまいります。

 4点目は,「生活・居住支援の実施」です。現在の給付型奨学金だけでは生活費と居住費をまかなえない等,経済面での不安感が大きく,大学への進学を諦めていた退所者が多くいました。平成30年度からは,退所後も安定した生活を送るため,在籍していた施設等を居住の場として,原則22歳まで提供するとともに,生活費及び居住費を本市が支給します。

 児童養護施設を退所した若者たちには,負い目を感じず,当たり前の生活を送って欲しい。そして,進学の意欲のあるひとはどんどん進学して欲しいと同時に,社会や世界にも大きく視野を広げ,世界の人々の幸せと平和のために活躍できるようになってもらいたいと願っています。

 入所中から退所後まで切れ目のない支援を実施し,「すべての子どもたちが無限の可能性を発揮できるまち・京都」の実現に向けて,市民ぐるみで進めて行く,それを行政がしっかりとバックアップし,全力で取り組んでまいります。

 

京都聖嬰会 北村氏

 退所後の支援というのは,入所中に始まっており,進学したくても,財政面で非常に厳しいものがあり,最終的な自立にはなかなかつながりませんでした。このように支援を拡充していただき,選択肢の幅が広がったと思っています。その上で,このようなガイドブックを活かしていければと思っています。

 

質疑応答

報告案件に関する質疑

(児童養護施設退所者支援の充実について)

記者

 編集委員会を立ち上げるのが自治体初ということですが,今後の展開や見通しについていかがでしょうか。

市長

 現場の第一線で日々様々な困り事を抱えた人と接しておられる方々や,京都の学生さんと連携すれば,市役所の職員だけでは気付かない観点のガイドブックができるのだと感じました。このネットワークをさらに継続していくとともに,この経験を京都市政のあらゆる場面で活かしていきたいと思います。

 私も読ませていただきましたが,困り事のある人のために作られたものは全ての人に分かり易く説明されています。

 ブラックバイトの問題では,大学まで卒業した人が,どうして改善に向けた行動を起こせないのか。そういった現場の実態を踏まえた教育や研究ができていません。したがって今日の経験が市民啓発など色々な場面で活かせると感じています。

 

記者

 このように中身が良いものを作ったとしても,有効に活用することが重要かと思いますが,そういったことに対する市長のお考えはありますか。

市長

 平成29年度が養護施設退所者への支援を充実させるキックオフの年というくらいの気持ちで取り組んできました。実態調査を踏まえ,関係者と連携を図りながら相談体制や居場所作り,そして大学進学のための入居延長,居住生活費といった財政支援策をしっかりと整えたうえで,このようなハンドブックを作らせていただきました。関係者の御尽力に感謝するとともに,我々も覚悟を決めて退所者の生活を支えていきたいと思います。

 

 

 

報告案件以外に関する質疑

(京都府知事選挙について)

記者 

 市長が先日の議会でも答弁されていた9号と1号のバイパス問題について,西脇候補が公約に掲げていますが,一方,福山候補は慎重な姿勢を見せています。改めて,その争点について,市長の御見解をお聞かせください。

 

市長

 京都市,京都府,国の三者に加え,交通関係の専門家にも参画いただき,将来道路ネットワーク研究会を作り,その中で議論を行い,この1月に意見がまとまりました。京都高速道路残る3路線の廃止,そして公共交通優先の「歩くまち京都」を推進していくことを前提としながら,ボトルネックとなっている堀川通の整備の必要性が指摘されています。堀川通は全体で6車線ですが,JR京都駅付近を潜る部分だけが4車線になっていますので,その部分の道路の整備が一つ,名神高速道路と京都高速道路など,既設の高速道路をうまく有効に活かすことによる広域的な交通網が画期的に良くなることが一つ。また,滋賀県や亀岡などの広域的な周辺自治体との関係において,自然災害と近隣自治体の危機管理等から必要性は高いと思います。費用負担の在り方も含めて検討していくことがまとまりましたので,そのことをそのまま西脇候補が掲げられているということであり,特別新しいことを掲げられているということではないと私は感じています。

 なお,前回の知事選挙の京都市内の投票率は31.03%でした。非常に投票率が低いということが最近の全国の傾向でもありますが,やはり投票に行っていただくということが極めて大事だと思います。新たな取組として右京区では,民間商業施設と連携した期日前投票等も行いますが,投票率向上が大事であると思っています。

 

 

記者

 9号と1号バイパスについて費用負担の在り方を含めて検討をしていくと思いますが,特に亀岡のバイパスの件について,市長はどのような費用負担が望ましいと考えていますか?

市長

 これは私が申し上げているということではなく,将来道路ネットワーク研究会における議論として出ているということです。簡単に結論を出すのではなく,今後関係者で協議していくことになると思います。

 

 

(民泊について)

記者

 民泊条例において,良質な民泊を目指す視点と,違法な民泊を排除するという視点があると思いますが,そのバランスについてどのようにお考えですか?

市長

 京都市の独自条例を制定するために,我が国トップ水準の専門家の方に議論いただくとともに,多くのパブリックコメントの御意見をいただきました。議会でも深い議論をしていただき,非常に良い条例ができたと思っております。3月15日から受付・相談窓口を開設し,現時点で約300件の相談が寄せられるなど,非常に関心の高さを実感しております。その中では,本来の民泊の姿である,家主居住型の相談が非常に多いです。マンションを借りて,買って民泊をするというのは,本来の民泊ではないと思っております。家主居住型の相談が非常に多いというのは,この間,市民ぐるみで民泊の議論を深めてきた一つの結果ではないかと思っております。近隣とのコンセンサスや消防法等による安心安全の確保等をしっかりとしていただく必要があるため,届出までは時間がかかるかもしれません。 

 現時点で相当の違法民泊があることが事実であると思います。法令に則った体制,手続きをとっていただくことを啓発していきたいと思います。引き続き,オーナーマンションにつきましては,管理組合で議論し,民泊を認めない場合はしっかりと意思統一し管理規約に明記していただきたいと思っております。そうすることで,将来のトラブルを防ぐと同時に,住宅の価値を維持向上できると考えています。そうした啓発を進めていきたいと思います。

 なお,平成30年度の組織改革で,保健福祉局に課長2名,係長4名を増員し,20名から26名体制に拡充します。旅館業法審査,住宅宿泊事業法審査,宿泊施設監視指導担当の3班を主として,違法民泊を適正化する取組を強化します。さらに消防局では,本庁舎の方で4名増員し,さらに民泊が多い,中京区,下京区,東山区には各2名の計6名の職員を増員し,防火・防犯等を含め,全庁を挙げて取り組んでいきたいと思います。

 

 

記者

 京都市と京都府の条例における規制のバランスについては,どのようにお考えですか?

 

 

市長

 京都府でも京都市の議論をしっかりと注目いただき,京都市周辺地域は京都市と同じ状況になる可能性が高いということで,京都市の条例と親和性のある条例を制定していただいたと考えております。なお,地域活性化を目的に観光客の誘致に熱心な府北部では,その場所にふさわしい条例となっており,非常にバランスのとれた条例であると感じております。

 

 

(大学の再編等について)

記者

 公立大学や私立大学も含めた運営法人のグループ化や大学の再編等の最近の動向について,どのようにお考えですか?

市長

 今,18歳の人口が約120万人です。昨年に出生した赤ちゃんが94万人であり,少子化が将来の大学運営を困難にするということは自明のことであります。そのような中で,京都市においても様々な取組を大学関係者と進めてきました。その一つが留学生です。大学の維持ということだけでなく,留学生をお招きして,京都で学び,世界で活躍していただくという取組を進めてきました。大学進学のために,日本語学校に学んでいる方も含めると,留学生の数は,この10年で約2倍の1万人になりました。

 大学の経営については,大学コンソーシアムを作り,「大学のまち,学生のまち京都」を力強く発信していくことで,ブランド化をしました。それぞれの大学が単位互換制度に取り組み,切磋琢磨することで,京都の小さな大学も含めた定員の充足率は全国水準と比べ非常に安定しています。

 平安女学院の山岡学長が中心となり,「日本小規模大学連盟」の設立準備委員会を立ち上げられました。中小企業は法律において保護,支援する体制がありますが,日本の大学政策に,中小規模大学を支援するような仕組みはありません。そのため,自然淘汰されていく恐れがあります。京都大学,同志社大学,立命館大学等々の総合大学の魅力もありますが,小規模大学の魅力も大事です。

 一つの大学で全部の先生を揃えられない時に,先生を大学同士で共有することができれば,それぞれの大学の建学の精神や教育方針を活かして,学ぶことができます。大学がこれだけ集積している京都において,全ての大学が役割を果たしていけると思います。

 京都発の大学政策というのも,来年度の大きなテーマにしたいと思っています。文化庁が全面的に京都移転するということで,京都発の文化政策,文化によって,まちづくり,福祉,産業,あらゆるものに横串を通した取組が今進もうとしています。大学政策もそうした形で取り組んで行きたいと思っています。

 

 

記者会見資料

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