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門川市長臨時記者会見(2017年2月2日)

ページ番号214374

2023年4月12日

平成29年度予算案の概要

 来年度予算案について,現在編成作業の大詰めを迎えているところですが,予算額も固まってまいりましたので,本日はその概要を私から御説明させていただきます。 

【予算の基本姿勢,重視した視点】

 はじめに,来年度予算を編成するに当たっての基本姿勢2点を申し上げます。

 1つは徹底して市民ぐるみで議論を重ね,市会の議決も頂きました「はばたけ未来へ! 京プラン」。そこに掲げる京都の未来像を実現するために,私が市民の皆様に昨年の選挙の時にお約束した,133項目の市長公約。それを全て盛り込んだ「京プラン」実施計画・第2ステージ,307の事業を計画しております。来年度予算では着実に前進させていき,304の事業に着手していく。そして,「くらしに安心,豊かさ実感,未来に責任」のまちづくりを,力強く推進してまいります。

 もう1点は,厳しい財政状況の下で,京都の未来を切り拓く施策をしっかりと進めるため, 市民の皆様と共に汗する「共汗」と徹底した政策の「融合」による事業の構築に取り組みました。京都の最大の強みで,京都の宝である「文化力」を基軸にして,文化と産業・観光,文化と福祉,文化と教育,文化と地域活性化をはじめとする,あらゆる政策分野を融合,充実させ,総合的な施策を展開するとともに,市民の皆様,民間事業者の皆様などあらゆる主体の参画と,行政の縦割りを排した全庁的な連携により,効果的で効率的な,質の高い事業を構築してまいりました。

 

【重点政策の推進】

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 こうした基本姿勢の下に,29年度は,ここに掲げる4点を重点課題として,政策を推進してまいります。

 1点目は,「日本の“こころの創生”を牽引する『世界の文化首都・京都』の実現」です。歴史と伝統に支えられた生活文化,地域の絆,おもてなしの心,自然との共生といった京都の最大の強みである「文化力」を基軸に,あらゆる政策分野を融合・充実し,京都への全面的な移転が決定した文化庁と共に推進することで,京都を,そして日本を文化で元気にしてまいります。

 2点目は,「京都経済の活性化と質の高い雇用の創出」です。観光,伝統産業,大学,中小企業といった,京都の知恵と強みを活かした成長戦略を推進することで,京都経済の更なる活性化に弾みをつけ,市民や中小企業の皆様すべてが確かな豊かさを実感できる,そんな社会を実現いたします。また,好調な観光については,その経済効果をしっかりと市内の隅々にまで,多くの市民の皆様に行き渡らせることが大事であります。同時に,世界中から人々が訪れる観光都市としての魅力に更なる磨きをかけ,都市格を向上させ,それを国内外に発信してまいります。

 3点目は,市民の皆様のいのちと暮らしを守り,子育て環境を充実することです。国の政策とも呼応しながら,一人ひとりがいきいきと輝くことのできる健康長寿・福祉のまちづくりを推進するとともに,これまでから最優先で取り組んできた全国トップ水準の福祉・教育・子育て支援を更に充実させます。

 併せて,防災・減災対策,老朽化対策を推進し,市民の安心・安全な暮らしを守るまちづくりを推進します。

 4点目は,参加と協働による地域の個性と活力あふれるまちづくりです。市民の皆様お一人おひとりが“ひとごと”ではなく“じぶんごと”“みんなごと”として取り組んでいただく究極の市民参加であります。“みんなごと”のまちづくりを行政が積極的にサポートしていく。そして,市民や民間事業者,大学など,あらゆる主体の参画の下に,地域の多様な魅力と個性を活かしたまちづくりを進めるとともに,京都に国内外から人の流れを呼び込み,東京一極集中の打破を目指してまいります。

 

【主な事業の概要】

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 それでは,主な事業について,予算の四本柱に沿って具体的に御説明を申し上げます。

 

(柱1 文化)

 1つ目の柱は,「日本の“こころの創生”を牽引する『世界の文化首都・京都』の実現」です。実は5年前の私のマニフェストに「世界の文化首都・京都」ということを掲げたのですが,その時点では一切注目していただけませんでした。ようやく文化庁の全面的な移転が決定し,京都の都市格が向上して世界的な評価も高まり,こうしたフレーズが現実のものとして,多くの方の共感を呼ぶようになってきました。

 そこで,文化庁の全面的な京都移転決定を踏まえ,文化を軸として,産業・観光から福祉・教育など,あらゆる政策分野と連携し,全庁を挙げて総合的な施策を展開いたします。

 まず,産業・観光分野と文化の連携です。来年度は,文化庁との共催事業として,中国,韓国の都市とともに,「東アジア文化都市2017京都」を実施します。これは2月18日から11月までの長期に渡る事業であります。市民や文化団体の皆様ともしっかりと連携しながら,年間を通じた文化による交流事業やイベントを行うとともに,ASEAN及び文化都市の19都市の首長も参加する「東アジア文化都市サミット」を初めて開催します。

 また,国際マンガコンテストや,朝鮮通信使にゆかりのあるまちが全国から集う交流会を東アジア文化都市の開催と合わせて実施してまいります。観光・産業の振興や国際化の取組とも連携しながら,事業を展開いたします。

 さらに,大政奉還から150周年という節目の年を迎えるにあたり,京都市を含む,幕末に京都で活躍された先人たちとゆかりの深い21都市が相互に交流・連携を図る記念事業を開催いたします。

 こうした文化事業の開催に加え,国内誘客強化の取組として,三大祭をはじめとする京都の多彩な文化の魅力をしっかりと国内外に発信し,京都の文化力を一層高めていくとともに,観光客の更なる増加につなげてまいります。

 4ページを御覧ください。

 京都の伝統文化を支えてきた伝統産業の振興は,文化政策と切り離して論じることはできません。伝統産業の工房,そしてそこで生み出される工芸品は,それ自体が奥深い魅力を持つ京都文化の真髄そのものであります。新たに展開いたします京都遺産などと併せて,その魅力を多くの人々に伝えていくとともに,更なる販路の開拓など,伝統産業振興の取組を進めてまいります。

 世界遺産・二条城については,その価値と魅力を,活かし,高め,国内外の多くの人々に伝えるとともに,それを将来に渡って受け継いでいかなければなりません。そのために,新たな早朝観光の充実をはじめ,二条城の魅力を発信する様々な取組を行うとともに,貴重な石垣の保存に向けて必要な調査を実施します。

 美術館の再整備については,31年度のリニューアルオープンに向け,実施設計・工事を着実に進めてまいります。また,文化庁で来年度に新設される助成事業を活用し,芸術団体・芸術家等と産学官の連携により,文化芸術創造拠点・京都の持続的な文化振興の発展を目指します。本プロジェクトでは,現代アート・実演芸術の分野を中心に,文化芸術の担い手・支え手などの育成を図り,国内外とのネットワーク構築を行いながら,伝統から現代までの総合的な文化事業を展開いたします。

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 子育て・健康長寿・福祉と文化の連携です。一人ひとりがいきいきと輝き続けることのできる,健康長寿と福祉のまちづくりを実現するため,文化芸術の持つ力を最大限に活かします。具体的には,子育て支援施設や福祉施設などに芸術家を派遣するモデル事業を実施し,様々な困難を抱える人々を文化芸術の力で支援するための手法を検証します。

 また,「健康長寿のまち・京都推進プロジェクト」については,文化事業への参加を,現在行っている「健康ポイント事業」にも加え,外出のきっかけとしてアピールすることで,文化の振興と健康づくりを一体的に促進してまいります。来年度は新たに,「健康ポイント事業」に対応したスマートフォンアプリの開発や,各区役所・支所に新たに創設される「健康長寿推進課」が中心となり,地域に積極的に出向いて健康づくりに取り組む事業を展開し,あらゆる場所,あらゆる機会に「健康長寿のまちづくり」を広げてまいります。

 次に,教育・大学政策と文化の連携です。これまでから,子どもたちが「ほんもの」の文化芸術に触れることのできる機会の充実に取り組んできましたが,文化庁の全面的な移転に向け,学校教育,そして生涯学習の分野においても,京都ならではの伝統文化・伝統芸術,先端芸術等を体験することのできる機会の更なる充実に取り組むとともに,「天才アートKYOTO」とも連携し,障害のある方が文化芸術活動において一層の個性・才能を発揮でき,積極的な社会参加をしていただける取組を進めます。

 また,市立芸術大学及び銅駝(どうだ)美術工芸高等学校の移転整備も含め,崇仁地域のまちづくりとも連携して推進してまいります。

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 最後に,「まちづくり・地域活性化と文化との連携」です。若手芸術家が京都で暮らし,その創造的活動が地域の活性化につながる,こうした取組として,これまで空き家の紹介・アトリエの提供など,居住・制作・発表の場づくりを行ってまいりましたが,これを更に発展させ,芸術関連の職業情報の紹介などを通じて,大学を卒業した後の若手芸術家が,芸術をなりわいに京都にとどまって活躍していただくことが,京都の文化力を高め,京都の経済の活性化にもつながります。こうした取組を進めてまいります。

 京都駅東南部エリアについては,京都駅と鴨川の間にある非常にポテンシャルの高い地域であります。これまで歴史的な様々な要因から活性化が遅れてきましたが,活性化方針策定委員会からの答申を受け,本年度に策定する,芸大の移転も踏まえた活性化方針に基づき,「文化芸術」と「若者」を基軸とした新たなまちづくりを推進してまいります。また,現在審議中の「京都遺産」候補にもなっている西陣においては,「西陣」という呼称の発祥から550年という記念すべき年を契機として,その多彩な歴史・文化・観光資源を活かしたモデル的なまちづくりに取り組んでまいります。

 

(柱2 経済・雇用)

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 2つ目の柱は,「京都経済の活性化と質の高い雇用の創出」です。国とも連携してこれまで取り組んできた経済対策の効果等もあり,景気は回復基調にあります。京都経済を一層活性化していくためには,中小企業の成長を支援することで新たな消費や投資を呼び込み,さらに雇用の一層の安定化に結びつく経済の好循環を,市内の隅々に行きわたらせる取組が必要であります。

 地元企業の事業拡大や企業誘致を推進するため,企業立地促進助成制度の充実や土地所有者への奨励金制度の創設などを行うとともに,京都の未来を見据え,中長期的な観点から,市内全域の公有地・民有地等を対象に,学術研究・先端産業等の用地創出に向けた検討を進めます。また,人手不足に悩んでおられる中小企業,とりわけ観光関連産業分野における担い手を確保し,雇用の安定化を促進するため,首都圏などの求職者を対象とした魅力発信等の取組を支援してまいります。

 正社員の府内有効求人倍率が昨年12月に1.05倍となり,関西で一番高くなりました。非正規を含めると,市長就任後,リーマンショックの影響等により平成21年8月に0.48倍まで下がったのが,昨年12月は1.37倍になっています。正社員の有効求人倍率が1倍を超えたのは,今回が初めてで,非常に望ましいことですが,人手不足は深刻な状況にあります。こうしたこともしっかり踏まえて,サービス業等の労働生産性を向上させ,さらに首都圏等で京都への就職をアピールする取組を進めていきたいと思っています。成長戦略の推進に当たっては,伝統産業やものづくりなど,京都の持つ強みを最大限に活用します。国内外のものづくりに関するベンチャー企業や起業家を京都に呼び込み,円滑にビジネスを展開していただけるよう,ビジネス拠点の整備等に取り組むほか,ライフサイエンス分野の起業促進に向けた支援を行ってまいります。

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 観光は引き続き好調ですが,その経済効果を京都経済全体に波及させるために,安定した雇用の創出,伝統文化・伝統産業などの活性化につなげ,京都に住む人,そして京都を訪れる人,すべての人々の満足度の向上につながる取組を推進します。

 京都の観光地経営の舵取り役である「京都市版DMO」が中心となり,京都の様々な魅力を国内外に強力に発信するとともに,道路の混雑緩和や宿泊施設の拡充,民泊対策等,市民と観光客の皆様がともに快適に過ごせる環境整備を進めてまいります。特に,季節,場所,時間と3つの集中を打破するための様々な環境整備を進めてまいります。

 

(柱3 福祉・子育て,安心安全)

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 3つ目の柱は,「市民のいのちと暮らしを守り,子育て環境を充実」です。市民の皆様が年齢を重ねられても,地域社会の中で一人ひとりのいのちが輝き,心豊かに暮らしていただける。地域の人々に支えられて,また地域の人々で支え合う,健やかな,温もりのある地域社会を京都で実現していきたいと思います。

 「健康長寿のまち・京都」を実現するため,昨年5月に,90もの幅広い市民団体,企業等の参画の下に立ち上げました「健康長寿のまち・京都市民会議」にしっかりと活躍していただき,市民ぐるみで取組を進めてまいります。来年度は,この取組を更に拡充し,様々な政策分野と連携しながら,全庁を挙げて「健康長寿のまちづくり」を推進いたします。取組の核となる「健康長寿のまち・京都推進プロジェクト」の充実に加え,スポーツ施設については,予算を前年度から40%増額し,大規模施設の改修・整備を着実に進めるとともに,身近なスポーツ施設の維持・修繕も充実してまいります。合わせて,「健康長寿」をテーマとした公園整備にも取り組み,身体を動かすこと,スポーツに参加することを楽しむことのできる環境づくりを推進いたします。また,地域住民との共汗による,コミュニティの活性化と健康づくりを一体的に推進していく仕組みづくりを進めるなど,あらゆる政策分野に渡って,健康長寿のまちづくりを推進します。

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 昨年3月,京都市会で議員提案によって「京都市手話言語がつなぐ心豊かな共生社会を目指す条例」が制定されました。この条例の掲げる理念を形にし,手話によって互いにつながり尊重し合うことのできる共生社会を実現するため,テレビ放送等による手話への市民の理解促進,インターネット中継における手話通訳の導入など手話による情報取得機会の拡充や,手話を学ぶ環境の整備など,一層の取組を進めてまいります。

 子育て環境の充実については,これまでから,厳しい財政状況の中にあっても多くの財源を振り向け,例えば3年連続で国基準による待機児童ゼロを実現するなど,全国トップ水準の取組を推進してまいりました。本年4月には952人の保育所等の受入枠を増やします。そして,来年4月にはさらに1,081人分の受入枠が確保できるよう,来年度予算において,保育所の整備に過去最大となる36億円を超える予算を計上し,「待機児童ゼロ」の継続と保育所により入りやすい環境づくりを進めてまいります。また,京都市では,これまでから全国に先駆けて民間の保育士の処遇改善に取り組み,全国平均の1.4倍という給与水準を維持してまいりました。全国では年収で315万9千円,京都市では430万6千円であります。それでも保育士の確保が難しいという状況になっています。

 今回,ようやく国においても,昨年6月に策定した「ニッポン一億総活躍プラン」に掲げる方針のもと,来年度予算に保育士の処遇改善が盛り込まれました。平均して2%のアップのための予算が組まれましたが,ある意味で京都市が作ってきた高い水準に国が追い付いてきたわけで,より一層京都市の保育士の処遇をよくするため,更なる充実を図り,全国トップ水準の維持・向上に努めます。

 さらに,処遇改善と併せて,遠隔地出身の保育士の方が京都市内の保育所に就職しやすくなるよう,宿舎借り上げに対する助成制度を新たに創設するとともに,府市協調により,オール京都で学生等に対して保育の魅力を発信し,保育士の担い手確保のために万全を期してまいります。どんどんと保育所の新増設等を進めておりますが,やはり保育士の確保が非常に大事であります。

 私立幼稚園等に対しては,新たに満3歳児未満を対象とした親子登園事業の実施に対する補助制度を創設し,事業の充実を図ります。すばらしい理念・伝統を有する私立幼稚園がしっかりと役割を果たすことができると同時に,市民の皆様のニーズに対応できる取組であります。

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 家庭の経済状況等に左右されず,すべての子どもたちが希望を持って成長し,学べ,社会で活躍できるように,今年度中に「京都市貧困家庭の子ども・青少年対策に関する実施計画」を策定します。家庭の自立や子育て力の向上に向けた支援,子ども等の健全な育成と将来を見据えた支援。これらの施策を,行政,地域,関係機関等が一体となり,新たに創設する「子ども若者はぐくみ局」,区役所に創る「子どもはぐくみ室」を先頭に,全庁的な融合のもとに,展開してまいります。

 保護者への支援として,産後間もない時期の母親に対する健診費用の助成を開始するなど,医療機関とも連携して,産後初期の母子に対する支援の強化を図ります。また,多様化する様々なニーズに対応する保育サービスも充実させてまいります。また,子ども等への支援として,食事の提供や学習支援など,子どもの居場所づくりを行うNPOなどの民間団体としっかりと連携し,補助や,児童養護施設退所者等の子どもの交流の場づくりといったことにもきめ細かく対応してまいります。

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 学習支援といたしまして,小学校4年から中学校3年までの本市独自のプログラムであります「小中一貫学習支援プログラム」がありますが,これがとりわけ学力の厳しい子供たちの学ぶ意欲を喚起し,学力向上に大きな役割を果たしてきました。このプログラムの小学校4年生・中学校1年生における実施回数が多くなります。経済的に厳しい家庭に対する支援の充実を進めてまいります。

 また,放課後の学習支援を行う未来スタディ・サポート教室の全中学校での実施,スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの配置拡大を行います。

 教育環境の充実については,新しい普通科系高校の整備に向けた基本計画の策定を行うほか,新しい定時制単独高校の整備に着手します。また,小学校増収容対策,小中一貫教育校の整備,学校統合についても,教育委員会としっかりと相談し,着実に推進してまいります。

 13ページを御覧ください。

 危機への備えであります。市民の皆様の安心・安全を守るため,防災・減災対策や既存インフラ設備の老朽化対策を推進します。台風や局地的豪雨等により浸水リスクが増大している中,浸水被害から市民のいのちと財産を守るため,雨に強いまちづくりを推進してまいります。

 これまでから,厳しい財政状況の中でも災害時の都市機能を確保するため,橋りょうの耐震補強などに最優先で取り組んでまいりました。橋りょうについては,東日本大震災直後に「いのちを守る 橋りょう健全化プログラム」をまとめ,これに基づき計画的な対策を進めてまいりました。この5年間で14橋の耐震補強,28橋の老朽化修繕を完了します。来年度から新たに第2期プログラムを推進し,より一層の対策を進めてまいります。また,重要な拠点施設等を結ぶ道路の沿道に位置する,建築物の耐震診断を促進する補助制度を新たに創設するほか,民間保育所等の耐震化についても引き続き行ってまいります。

 道路維持補修費等については,前年度の15億7,600万円から50%増となる23億5,100万円にまで増額します。今年度から新たに運用を開始している市民協働による維持管理「みっけ隊アプリ」は非常に好評で,市民の皆様からすぐに情報を提供していただいています。そして自分たちで出来ること,役所がやらなければならないことが非常にわかりやすくなり,それに対応して補修の予算も大幅に増額し,市民の皆様に身近な道路の安全を推進してまいります。

 

(柱4 参加と協働)

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 4つ目の柱は,「参加と協働による地域の個性と活力あふれるまちづくり」です。これまでから,あらゆる施策・事業について,市民・地域の皆様の御意見をお聞きし,市民が主役の市政を進めてまいりました。京都のまちの様々な課題の解決を「ひとごと」あるいは「役所がやること」ということにせず,「自分ごと」,「自分たちごと」,「みんなごと」として捉え,提案しながら実行する取組が大きく動き始めました。「まちづくり・お宝バンク」には,これまでに220件を超える提案が寄せられています。そして早くも実行に移った取組がいくつも出てまいりました。来年度も引き続き,徹底した市民参加のもと,市民を主体としたまちづくりを推進してまいります。同時に,区民の皆様が自ら考え,提案し,行動する取組を支援する「区民提案・共汗型まちづくり支援事業予算」も6年目を迎えました。地域に根差した取組が大きく前進し,市民の皆様の地域のまちづくりへの関心が高まっております。こうした取組もしっかり根付かせて,発展させてまいります。

 また,多様な広報媒体を複合的に活用した市政情報の発信,「クロスメディア広報事業」によりまして,市の施策・魅力,京都市の「伝える力」の更なる向上に努めてまいります。

 京都市への移住促進・支援については, 東京圏に向けた,京都で暮らし,京都で働く魅力の発信などを強化するとともに,北部山間地域における移住相談から定着支援に至るまでの総合的な取組も充実・強化します。

 北部山間地域については,自ら現地に居住して,地域住民と連携しながら活性化に取り組む,北部山間かがやき隊員の配置を拡充するとともに,地域の産業の振興にも取り組んでまいります。

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 洛西ニュータウン・向島ニュータウンの活性化については,地域住民で活動していただいているNPO法人,自治会,事業者,行政が一体となって議論した結果,今年度中に策定する「洛西ニュータウンアクションプログラム」,「向島ニュータウンまちづくりビジョン」に基づきまして,地域団体のまちづくりの取組をしっかりと連携して支援していくきめ細かい取組のほか,公園整備等の魅力向上に取り組みます。

 また,京都駅東南部エリアについては,「文化芸術」と「若者」を基軸とした新たなまちづくりを推進するとともに,西陣についても,伝統産業や文化,芸能といった地域の強みを活かした活性化に取り組みます。

 なお,先日,臨時記者会見で御説明させていただいた大型汎用コンピュータオープン化事業について,早急に第三者の専門家による検討委員会を設置し,原因究明,最良の方策の検討等を行うこととしております。現時点で,今後の事業の進め方やオープン化後の新システムの稼働時期,全体経費は確定させられていない状況になっております。しかしながら,行政サービスの向上,業務の効率化を目的とするオープン化事業を完遂するため,また,新システム稼働までの間,市民の皆様への行政サービスの提供に影響を与えないようにするため,必要となる最小限の予算額を計上しております。遅延している福祉系システムの稼働を最短で平成30年1月,つまり1年延期と想定したうえで,新システムの開発経費や現行システムの管理運営経費等,オープン化事業に関連する予算として,来年度予算で約47億円を見込んでおります。併せて,今年度予算から,遅延している福祉系システムの開発費として,約8億円を来年度へ繰り越したいと考えております。

 

【財政構造改革の推進】

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 重点政策をしっかりと進めていくため,成長戦略の推進と一体となった財政構造改革にも徹底して取り組んでいきます。予算編成の方針をお示しした昨年11月の時点では,世界経済の減速や,円高の影響による市税の落ち込み,そして,本年度の地方交付税の大幅削減などを受けまして,一般財源収入は,「はばたけ未来へ! 京プラン」実施計画・第2ステージでの見込みから140億円も落ち込み,財源不足額は349億円まで拡大するという,極めて厳しい見通しとなっていました。こうした厳しい状況をしっかりと全職員が受け止めたうえで,それでもなお縮み志向に陥ることなく,京都の未来に必要な政策を推進していくために,一般財源収入の精査はもとより,聖域を設けることなく財政構造改革を断行し,あらゆる知恵を結集して,財源不足の縮減に取り組んできたことで,予算編成過程を通じて202億円の財源を捻出いたしました。

 一般財源については,直近の経済情勢や,国の地方財政計画等を踏まえて精査した結果,教職員給与費移管の影響を除く額では3,820億円となり,11月時点の見通しからは38億円の増となりましたが,本年度予算からは△57億円の減と,なお厳しいものとなっております。景気の回復基調を受けまして,市民税個人分や固定資産税は堅調な伸びを見せております。その一方で,企業業績や個人消費は力強さを欠く状況も見られ,市民税法人分や地方消費税交付金はなお厳しく見込まざるを得ません。

 財政構造改革の取組としては,まず人件費の大幅な削減が挙げられます。196人の職員削減などにより,「京プラン」に掲げる目標額11億円を大きく上回る,2倍以上の24億円を削減しました。事業見直し等については,聖域を設けず,あらゆる政策分野において徹底した見直しを行い,前年度の41億円,また「京プラン」の目標40億円を上回る48億円の財源を捻出しました。資産有効活用等による20億円の財源確保も合わせ,財政構造改革による財源捻出は,「京プラン」では71億円としておりましたが,目標額を21億円上回る92億円に上ります。

 さらに,大規模投資事業について,事業の優先順位や規模の精査を行い,財政負担の圧縮・平準化を図ったほか,直近の金利情勢を踏まえた公債費利子の精査など,あらゆる視点で歳入歳出の精査を徹底し,72億円の財源を確保しました。

 17ページを御覧ください。

 このように,財政構造改革や歳入歳出の精査を徹底することにより,「京プラン」実施計画に掲げる目標を大きく上回る財源を捻出し,11月時点の財源不足の見通し349億円の半分以下に圧縮することができました。しかし,市民税法人分や地方消費税交付金の大幅な減などにより,一般財源収入が大きく落ち込み,財源不足額は147億円と「京プラン」における見通し109億円からは38億円の拡大を余儀なくされております。

 全国トップ水準の福祉や子育て・教育支援,そして市民の安心・安全をしっかりと守り,京都の未来に繋げていく先行投資を推進するため,この財源不足147億円については,行政改革の取組により将来の財政負担が軽減される額の範囲内で活用することができる,行政改革推進債の発行や,公債償還基金取崩しによる「特別の財源対策」を活用してまいります。

 

【予算規模】

 19ページを御覧ください。

 この結果,予算の規模は,特別会計,公営企業会計も含めた全会計で1兆6,896億円,一般会計で7,669億円となります。29年度から,これまで都道府県が負担していた義務教育,小中学校や総合支援学校の教職員の給与費が指定都市に移管されます。615億円の教職員の人件費を京都市が新たに負担することになります。その影響で,一般会計予算規模は前年度予算から392億円の増となりますが,この影響や,景気の回復に伴う中小企業融資預託金の減,120億円減,国の施策終了に伴う臨時福祉給付金の減,82億円減といった大きな変動要素を除くと,実質的には予算規模はほぼ横ばい,21億円の微減となります。

 国が返済に責任を持つ臨時財政対策債を除く実質市債残高の状況ですが,防災・老朽化対策や保育所整備等を着実に進める一方で,将来世代に過度な負担を先送りしないという観点から市債発行額を適切に管理し,全会計では実質市債残高を前年度から202億円減らすこととします。

 20ページを御覧ください。

 一方で,一般会計だけを見た場合,新規の借り入れ508億円に対しまして,返済額583億円を下回るよう抑制しておりますが,「特別の財源対策」である公債償還基金の取崩しを実質市債残高の増と取り扱わなければなりませんので,これを含めると前年度比,一般会計では23億円の増となります。今後とも引き続き投資規模の的確なコントロールをしていくとともに,成長戦略と財政構造改革を一体的に推進し,「特別の財源対策」の縮減を目指してまいります。

 結びに,連結ベースでの財政健全化です。かつて,京都市財政の最大の課題であった市バス・地下鉄は,現在では経営健全化を着実に前進し,連結ベースでの健全化に大きく貢献しています。地下鉄事業については,「経営健全化計画」に掲げ,京都市一丸となって取り組んでまいりましたお客様数1日当たり5万人の増客について,目標であった37万5千人を今年度に2年前倒しで達成できる見込みであります。29年度においても,それを更に上回る,1日当たり37万8千人を見込むことができました。市バス事業についても路線・ダイヤの充実など,引き続き利便性の向上に努め,そのことが経営の改善にもつながるようにしてまいります。

 御説明は以上です。来年度予算案に盛り込んだ取組について,2月市会に提案し,市会でしっかりと御審議いただくことになりますが,議決後,スピード感を持って,京都の今と未来のために着実に実践し,市民の皆様が安心安全,豊かさを実感し,未来に責任ができるように,全力を傾けてまいります。

 

質疑応答

(教職員の人件費増加について)

 

記者

 教職員の給与費が市に移管されるが,これまでの取組への影響は。

 

市長

 これまでの制度は,任命権や人事権は政令指定都市,給与の支払いは都道府県といったねじれの状態が続いており,国レベルにおいても長年の懸案でありました。今回,その懸案である税財源の移管が実現できたことは大きな前進であります。

 また,京都府が独自で取り組まれていた京都式少人数学級(7億円分)の取組について,移管に伴ってどうしていくかが課題となっていましたが,来年度,国において教職員の定数を増やす方針が示されたことを踏まえ,5億5千万円を国に負担いただくことになりました。また,京都府には24名(1.5億円分)の講師を中学校に派遣する形で御対応いただきますので,これまでの取組がしっかりと継承できることになりました。

 

 

(大型汎用コンピューターについて)

 

記者

 大型汎用コンピューターについて,29年度内に金額や内容が確定した時点で補正予算を組むのか。

 

市長

 補正予算を組む必要があるかはまだわかりません。議会で予算案を議論いただくと同時に,専門家を含めた第三者委員会でもしっかりと検証していただく必要がありますので,見込みの予算としております。予算額が大きいですが,来年度,国民健康保険や介護保険制度の仕組みが大きく変わりますので,それらに対応するため大きな金額になっております。

 

 

(文化庁移転に関係する予算について)

 

記者

 来年度の地域文化創生本部設置に伴う文化関連事業は。

 

市長

 地域文化創生本部の設置に当たって文化庁が新たな事業を実施されますので,すでに名乗りを上げています。文化芸術創造拠点・京都プロジェクトとして,現代芸術や舞台芸術など総合的な文化事業を展開してまいります。

 また,文化庁移転の趣旨は,京都を拠点として文化で地方創生を実現することであります。したがいまして,文化庁の事業とともに,京都市の既存事業も見直し,文化を観光や産業,福祉,地域社会,健康長寿などと連動させ,より効果的な取組を進めてまいります。

 

 

(財源不足について)

 

記者

 毎年予算編成の中で,財源不足と発表しながら,予算案が出されるときには,やり繰りして無事に組むことができたと発表される。美術館の整備に当たっては財源がないという主張もあった。京都市の財政状況が本当にどこまで厳しいのかということが伝わっていない。

 財源不足を発表した11月以降に行った財源対策について,例年の対策との違いは何か。また,特別な対策を講じたのか。

 

市長

 今回の予算編成の中で一番厳しかったのは人件費の削減です。市長就任以来,1万6,000人の職員を1万3,000人まで削減してきました。

 一方で,生活保護を担当する職員は増員し,きめ細かい就労支援等を実施してきました。その結果,生活保護者数は全国で増加していますが,京都市では減少に転じています。必要な所に職員を配置しながら,京プランで掲げた11億円の人件費減の目標に対して,24億円まで削減できた点が,全庁を挙げて努力したことだと思います。また,一般財源を市バスや地下鉄に充てていましたが,全庁を挙げて市民ぐるみで取り組んできた結果,削減できたのも大きな成果であると思います。

 新たな予算をつけずに,縦割りを排して,すべての局の事業から文化性を引き出し,文化政策と融合していく。そうすることで新たな負担をかけずに文化事業を展開する。このことは,予算編成に携わった全職員が実感しているところだと思います。

 予算編成については,第一線で仕事をする人間が積み上げるボトムアップと明確な方針のもとに取り組むトップダウンの融合が一番大事だと思っています。トップダウンで決めていく場合は非常にわかりやすいですが,融合しながら決めていく場合はわかりにくいと思います。これをいかにわかりやすく伝えるかが重要であり,議会や市民にわかりやすく伝える努力が必要だと思っています。

 率直に申しまして,福祉関係の必要経費の増,税収の伸び悩み,地方交付税の削減,こういった要因がある中で予算を編成するのは至難の業であり,根本的には国の地方財政計画の見直しが必要だと思います。

 財政状況は依然厳しいままですが,明るい展望もあります。市民税の個人分が堅調に増えてきているのは,市民の豊かさにつながっているということですし,正規職員対象の有効求人倍率も初めて1を超えて,関西で1番高くなりました。中小企業の活性化,安定した雇用の創出ということを都度申し上げてきましたが,こうした明るい兆しもありますので,一層努力してまいりたいと思っています。 

 

記者

 子育て環境の充実に力を入れている印象があるが,保育士の処遇改善に係る新規予算で更なる年収の増を見込んでいるか。

 

市長

 約30万円増えます。京都市は国を超えて独自予算で取り組んでおり,国が追いかけてきたのだから,そこまでやらなくてもいいという考え方もあります。また,国の基準よりも手厚く保育士を配置しております。今後,保育士だけではなく,児童館・学童保育の職員の処遇の改善を図ることもよいことです。

 京都市は児童館と学童保育を多くのところで一体にやっています。国は学童保育の処遇改善を図っているため,我々としては児童館専任の処遇改善を図ることが当然になります。そうすると,国が少し基準を上げると,これを受けて,京都市では,更なる予算が必要になります。

 保育士会や保育園連盟等の関係者から緊急要望も受けていますし,全体として最も大事な取組ですので,全面的に幅を広げて実施するという決断をしました。

 

記者

 予算の執行に当たって,京都市直接ではなく,京都市が関わっている実行委員会において,違法労働が問題になっている電通と契約している事案もいくつかある。予算が実行委員会を通じて,違法労働の問題があった現場に流れていく可能性がある中で,今後の対応をどのように考えるか。

 

市長

 京都市では,様々な不祥事等があった場合に,入札の停止などの措置がありますが,客観的な基準を作って公開しております。

 京都市では,国の基準をそのまま適用していますが,今回の事案は,現時点では,京都市の入札の一時停止には当たらない状況になっております。

 今後,推移を注意深く見守っていきたいと思っています。国と都道府県,指定都市の基準は微妙に違っていて,公正な基準を公開していますが,現時点では適用にならないということです。

 

記者会見資料

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