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京都市外国籍市民施策懇話会1998(平成10)年度報告

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2019年4月16日

京都市外国籍市民施策懇話会1998(平成10)年度報告

                                                       1999(平成11)年3月19日

京都市長
   桝本 頼兼 様

                                                   京都市外国籍市民施策懇話会座長  仲尾 宏 

 

 京都市外国籍市民施策懇話会は,京都市における外国籍市民の市政への参加を推進し,「共に生きる社会」を構築するため,外国籍市民に関する諸問題について調査・審議し,京都市が取り組むべき課題等について意見を求める機関として設置されました。
 京都市には,現在,およそ4万3千人の外国籍市民が暮らしており,その数は市民全体の3%を占めております。そして,外国籍市民の定住化と多様化により「多文化社会」が進展しているなか,外国籍市民に関する諸問題も広範多岐にわたっており,きめの細かな対応が行政に求められております。
 この懇話会では,1998年(平成10年)10月7日に第1回会議を開き,これまで3回の会議を重ねてまいりました。このたび,1998年度(平成10年度)における懇話会としての意見をとりまとめましたので,その結果をここに報告します。
 懇話会としては,この報告の趣旨が今後の市政に反映されるとともに,外国籍市民に関する問題が地域社会の中で同じ市民の問題として多くの方々に理解されることを願っております。
 最後になりましたが,市民と一体となったまちづくりが求められている今日,この懇話会はとりわけ自らの意見を市政に反映させる道が十分でなかった外国籍市民の市政への参加を推進させる新たな取組として非常に意義深いものであり,こうした制度を設けていただいたことに感謝申し上げます。

目次

第1 会議概要

  1 開催状況

  2 調査・審議内容

第2 提言

  1 民族学校,外国人学校等の条件整備について

  2 就職問題について

資料

  京都市外国籍市民施策懇話会設置要綱

  京都市外国籍市民施策懇話会委員名簿 

第1 会議概要

1 開催状況

第1回会議:1998年(平成10年)10月7日(水曜日) 午後1時30分から3時30分まで

       京都ロイヤルホテル

第2回会議:1998年(平成10年)12月3日(木曜日) 午後2時30分から5時まで

       ウィングス京都

第3回会議:1999年(平成11年)2月4日(木曜日) 午後2時30分から5時まで

       京都市国際交流会館

2 調査・審議内容

(1) 第1回会議

 ア 懇話会座長の選出

    全会一致で仲尾宏委員を懇話会座長に選出した。

 イ 各委員からの意見発表

   ○外国籍市民と日本人が同じテーブルで議論し合う例は珍しい。委員の情熱と様々な体験をもって,会議の成果をあげていきたい。

   ○子育ての過程でいろいろな困難があった。学校教育における外国人教育や人権教育について話し合いたい。

   ○京都に長年住み愛着がある。民族教育,公務員の国籍条項,老齢年金等の福祉,共生を進めるための国際交流等について話し合いたい。

   ○長年,クリーニング業界で役職に就いていた。いろいろな立場を乗り越え共生できるようなものを後世のために残していきたい。

   ○大学教育の現場では交流のみという時代ではなくなっている。多様な文化が活動できるには,住居の保証が必要である。

   ○20年間留学生の面倒をみてきたが,心の問題だけは変わっていない。留学生の妻が女性の立場で活躍できる場が必要である。

   ○日本語も英語も分からない外国人が増えてきたが,そうした外国人にとって日本社会には言葉,制度,心の壁がある。

   ○外国人の妻は,日本人の夫しか頼れるものがない。ネットワークもなく情報が行き届いておらず,その溝を埋めていく議論をしたい。

   ○1987年に日本に来たが,職がなく留学生から脱皮できない。国際交流の取組が本当に共生のために役立っているのか疑問である。

   ○仕事を通じて,最近は外国籍市民だけでなく,日本人も困っていると感じている。在日朝鮮人の在留資格や民族教育について話し合いたい。

   ○共生という観点では,市民・行政の両面で問題を抱えている。現在では,京都はハード・ソフト面とも遅れ,国際都市という印象はない。

   ○帰化したが,物心ついた頃から出自にはこだわってきた。市民とは,ただ住んでいるだけでなく,市民として発言できることが必要である。

 ウ 懇話会で調査・審議する事項

  今後,次の7項目について調査・審議することとした。

  ◆ 市政参画について(地方参政権を含む。)

  ◆ 住宅入居における問題について

  ◆ 民族学校,外国人学校等の条件整備について(助成及び日本学校との交流等)

  ◆ 市立学校における外国人教育・人権教育について

  ◆ 社会福祉について(医療,保険,年金等)

  ◆ 就職問題について(地方公務員の国籍条項を含む。)

  ◆ 情報提供とその担い手について(共生のための国際交流等を含む。)

 

(2) 第2回会議 ~民族学校,外国人学校等の条件整備について~

 ア 現状報告

    教育委員会事務局及び事務局から説明を受けた。

 イ 各委員からの意見

   (ア) 外国籍児童・生徒の教育の保障

   ○日本に在住する外国籍の子どもが母語・母文化教育を受ける権利も保障することを人権としてとらえなければならない。国籍にかかわらずすべての児童・生徒が安心して教育を受けられるよう取り組むことが大切であり,そのためには日本人が正しい歴史認識と民族差別をなくす人権の考え方を学ぶ必要がある。また,未来に向け,どのような交流,人権教育をしていくのかを考えていく必要がある。

   ○多くの日本人は,以前は就学案内が在日の子どもたちに来なかったことや今も民族学校卒業生には義務教育を受けていないという理由で国立大学を中心に受験資格がないことを知らない。民族学校出身だからとか国籍が違うことで,大学に入れないことやスポーツ大会等に参加できないことは,子どもにとって非常につらいことである。行政も民族学校関係者も,もっと広くこうした実情を知らせて,解決していく必要がある。

   ○生活の場としてどこの国に住んでいようと,国籍に関係なくすべての民族の子どもたちに,当然の権利として教育が保障されるよう取り組まれるべきである。

   ○日本人社会の側から外国人の人権保障の問題について目をふさいでいる。差別意識の払しょくには,小学校からの教育が大切である。地域に民族学校がなくても,小学校へ外国籍の講師を呼ぶことなどにより,外国の文化や生活についての理解を促すこともできる。

    ○これからの京都市の戦略として,すべての民族の子どもたちが教育を受ける権利を持ち,その中身として母語・母文化教育を受ける権利を保障していこうという方向性を確認すべきである。民族学校への助成の根拠にマイノリティ文化の保護という視点があれば,中国やブラジルの子どもたちの文化的な保障も大切であることが分かるはずである。

    ○外国籍の子どもにとって,言語的な支援を必要とする場合もある。ニューカマーも含めた外国籍の子どもに対する教育施策の充実が必要である。

   (イ) 民族学校等への助成・交流

   ○民族学校で学ぶことは,歴史的な経緯から当然の権利として尊重されなければならない。民族学校との交流は大切であるが,日本の学校に通う在日の子どもたちが母語や母国の文化を知らないことで劣等感のようなものを生じさせないようにすることも必要である。

    ○民族学校等の条件整備は市の権限で解決できる問題とできない問題があるが,不十分な行政支援しか得られず限られた教育環境のもとで民族の当然の権利である民族教育が行われている点を,広くアピールしていく必要がある。

   ○日本弁護士連合会は民族学校に対する文部省の基本姿勢が重大な人権侵害であるとの勧告を出した。現在,この見解が民族学校への支援の理論的な柱となっている。財政的にも,民族学校がなければ,その児童・生徒を市立学校で受け入れなければならないことを考えれば,京都市としても工夫できるのではないか。

    ○民族学校等への民間レベルでの支援活動や学校間の交流のみではなく,地域社会で理解を得るための交流といった視点も必要である。

   ○これから外国語教育をしようとする学校があるならば,立ち上げの段階からサポートすべきである。

 ウ まとめ

    5項目について提言することとした。 なお,民族学校への経常的な財政的支援の増額については,平成11年度予算の編成作業に間に合うよう,提言に先立ち,懇話会座長名で申し入れることとした(1998年12月22日申入・9頁参照)。

 

(3) 第3回会議 ~就職問題について~

 ア 現状報告

    総務局及び事務局から説明を受けた。

 イ 各委員からの意見

   (ア) 地方公務員の国籍要件

    ○白川勝彦元自治大臣の談話から2年,京都市国際化推進大綱の策定から1年が経過している。その間も,就職の機会が奪われている。政治的判断が先か,事務的分析が先かは別にして,懇話会委員のじれったい思いをとりまとめる必要がある。法の下の平等,就職の機会均等から早急に京都市として最大限の取組を行ってもらいたい。

    ○他都市が撤廃に進んでいる中,国際都市を標ぼうしている京都市が撤廃していないことは,後ろ向きにみえる。京都市における外国籍市民の占める3%という割合からみれば,現在の外国籍の職員数(一般職:34名,特別職:40名)は少ない。

    ○採用に当たり地位等が制限されていれば,天職としての魅力を感じることができず,応募者も少ないと思う。京都市は,国際文化観光都市として,抜本的かつ前向きに検討してほしい。国籍要件のない職種の職員募集に当たっては,周知徹底のため,市民しんぶん等を十分に活用すべきである。

    ○市職員自身は,市職員に国籍条項があることを知っているのか。市職員自身がもし任用制限を受けた場合,どのように感じるのかということも含めた研修が必要である。

    ○民間への啓発を行う立場として,行政側が国籍条項により制限していることは矛盾が生じるのではないか。

    ○公務員の使命は市民への奉仕であり,昇任できないから魅力ないという考え方も危険である。

    ○白川勝彦元自治大臣の談話及び京都市国際化推進大綱では,国籍条項の撤廃を推進するように述べている。職務の研究も,既に他都市の例があり,比較的容易にできるのではないか。

    ○公務員が判断する場合,法律や条例等で枠が定められているとともに,幾人もの決裁を経るため,個人の判断では曲げることはできない。その意味で,公権力の行使や公の意思形成の範囲の検討に当たっては,あまりこだわる必要はないのではないか。

   (イ) 民間の就職問題

    ○就労状況等に関する実態調査は,在日韓国・朝鮮人に対しても必要である。就職に際し,本来すべきでない質問や通名の強制の実態が存在している。これらの問題に対して訴えていくところがなく,就職110 番のような相談機関の開設を考えていく必要がある。

    ○就職問題については,人権としての枠組みが保障されなければならない。調査による実態把握を定期的に行うことが必要である。

    ○日系人の中には不安定な雇用について相談に来る。まず,ニューカマーの実態調査が必要である。ニューカマーにとっては,在留資格と言葉の問題がある。労災の問題にしても当事者同士が知らない。そのため,第三者機関としての人権ケースワーカーのようなものが必要である。

    ○日本では留学生の数を増やすことに力が注がれているが,その後の対応について配慮されていない。優秀な留学生には就職もあるが,それ以外の者の面倒をみることも必要である。

    ○現在の民間企業における就職差別は,国際的にも認められない。母子家庭等でも差別されており,就職差別はまさに日本社会の縮図である。日本を世界から尊敬される国にするためには,企業にも倫理的責任が問われているという認識を持たせる必要がある。

 ウ まとめ

     2項目について提言することとした。

第2 提言

1 民族学校,外国人学校等の条件整備について

 京都市は,すべての外国籍の子どもについて教育を受ける権利を保障することを理念に施策を行うことが必要です。
 京都市には,現在,義務教育に準じた教育内容を実施している民族学校が5校あります。しかしながら,民族学校は,学校教育法上は「各種学校」とされ,国からの補助はなく,自治体からの補助も私立学校と比べて極めて低額となっています。また,民族学校卒業生には,国立大学を中心に受験資格が認められておりません。
 こうした現状を鑑み,京都市は,民族学校の処遇改善に向け国に対して働きかけるとともに,民族学校の保護者負担の軽減と教育条件の整備を図るための財政的支援を一層充実していくことが必要です。
 民族学校や外国人学校等と,市立学校や地域社会との交流は,児童・生徒や住民との相互理解を促し,人権を尊重する意識を醸成することにつながります。現在,民族学校等と市立学校等との交流が行われておりますが,今後も,当事者の自主性を尊重しつつ,多様な交流を充実していくことが必要です。
 また,国際情勢の緊張等を契機として,民族学校等に通学する児童・生徒に対する嫌がらせや差別事象が生じています。こうした行為は,決して許されません。 京都市は,すべての人権を守る立場から,民族学校等に通学する児童・生徒が安全に通学できるよう,啓発等を通じてその人権を十分保障していく必要があります。
 更に,言葉や在留期間等の異なる外国籍の子どもに多様な教育の場を保障する観点から,外国人学校等に対しても,様々な角度から支援していく必要があります。 

 以上を踏まえ,次の5項目について取り組まれるよう提言します。

 ■ 民族学校が学校教育法上「各種学校」扱いとされているために生じている教育助成金や国公立大学への受験資格等の処遇の改善に関する国への要望 

 ■ 民族学校の保護者負担の軽減と教育条件の整備を図るための財政的支援の一層の充実 

 ■ 民族学校等と市立学校等並びに地域社会との交流の充実

 ■ 民族学校等に通学する児童・生徒の人権保障

 ■ 外国人学校等への支援の継続とそこで学ぶ外国籍の子どもに対する教育施策の充実

2 就職問題について

(1) 地方公務員の国籍要件

  京都市は,現在,一般事務職,一般技術職,消防職及び学校事務職の4職種を除く65職種のすべての職種について,外国籍市民にも門戸を開いています。
 しかしながら,市長部局(約1万人)のうち55%が一般事務職であるように,国籍要件が設けられている4職種は,京都市職員数の多数を占めております。
 その結果,京都市職員に占める外国籍職員の割合は1%にも満たず,外国籍市民の京都市職員への採用の道は限られたものといわざるを得ません。
 地方公務員の国籍要件については,白川勝彦元自治大臣が公務員に関する基本原則に基づき公権力の行使及び公の意思形成への参画に携わる職については任用しないという制限付きで外国籍市民を一般事務職等に採用することを容認して以降,既に,2年が経過しております。
 これまで,多くの政令指定都市(12都市のうち7都市)では,一般事務職等における外国籍市民の採用を制限付きで認めています。
 京都市は,京都市国際化推進大綱において「最大の職員数を数える4職種について,地方自治法における住民本位の精神に立ち返り,採用可能な職種・職位の検討を進める必要がある」と定めております。
 外国籍市民の中には,地域社会に貢献したいという真摯な思いを持つ方も多く,法の下の平等や就職機会の均等という観点から,早急に任用上の課題を検討し市職員採用のおける国籍要件を見直すことが必要です。
 なお,その際には,公務員に関する基本原則を踏まえつつも,幅広い分野で人材が活用されるよう,外国籍市民が任用できる職種・職位をできる限り拡大することが望まれます。

(2) 民間企業の就職問題

 外国籍市民に限らずすべての人にとって,就職の機会均等と安定した雇用状況の確保を図ることは,非常に重要なことであります。

 しかしながら,在日韓国・朝鮮人に対する偏見と差別意識から,依然として,就職の機会均等の保障が十分になされておりません。
 また,近年,新たに来日する外国籍市民にとっては,在留資格や言葉の問題から,不安定な雇用状況がみられます。
 したがって,京都市は,その所管する業務が限られているものの,外国籍市民の公正な採用選考を実現し外国籍市民が安定した職業生活を送れるよう,様々な部署とも連携をとりながら,施策を充実していくことが必要です。

  以上を踏まえ,次の2項目について取り組まれるよう提言します。

 ■ 市職員採用における国籍要件の緩和(一般事務職等における外国籍市民の採用機会の可能な限りの拡大)

 ■ 外国籍市民の就職機会の均等など,労働者としての権利を享受するための施策の実施(相談体制の確立,実態調査の実施,啓発等)

申入れ

                                                                                                                                     1998年12月22日

京都市長 桝本 頼兼 様

                                                                                                                                       京都市外国籍市民施策懇話会座長 仲尾宏

                                                                                      申 入 れ

 京都市における外国籍市民の市政参画を推進し,共に生きる社会を築くに当たり,外国籍市民に関する諸問題について幅広い観点から議論し,京都市が取り組むべき課題等について意見を求めるため設置された京都市外国籍市民施策懇話会は,1998年10月7日に初会議を開き,議論すべき課題を設定しました。
 また,12月3日の第2回会議では「民族学校,外国人学校等の条件整備」について審議し,多くの委員から京都市の民族学校への財政的支援の一層の充実について要望が出されたところであります。
 京都市外国籍市民施策懇話会は,会議で出された意見等を報告書としてまとめ,市長に提出する予定をしておりますが,上記の第2回会議での審議を受けて,現在,京都市が編成作業をされている1999年度予算に反映することができるよう,報告書の提出に先立ち,下記について委員の総意により緊急の申入れを行います。

                                       記

 京都市は,1982年から民族学校への教材整備費として補助金を支給するなど,民族学校や民族学校に通う児童・生徒の保護者への支援を実施されております。
 しかしながら,民族学校は,学校教育基本法上は「各種学校」であり,国庫補助もなく,自治体からの補助も私立学校と比べて極めて低額であります。学校を支えてきた保護者等の負担も大きく,とりわけ長引く不況のもとで学校運営が極めて困難な状況となっています。
 こうした現状に鑑み,各種学校としての民族学校の所管は都道府県に属してはいますが,京都市は,すべての外国籍の子どもの人権とその教育を受ける権利を保障するとの理念のもとに,その緊急の具体的施策として,民族学校の保護者負担の軽減と教育条件の整備を図るための財政的支援を一層充実されるよう,京都市長に提言します。

京都市外国籍市民施策懇話会委員名簿

第1期委員名簿(敬称略)
 国籍 氏名
 日本

白石 厚子 (シライシ・アツコ)

田村 太郎 (タムラ・タロウ)

仲尾 宏 (ナカオ・ヒロシ)

三好 克之 (ミヨシ・カツユキ) 

余 昌英 (ヨ・ショウエイ)

 韓国・朝鮮

 李 美葉 (イ・ミヨプ)

金 泰成 (キム・テソン)

姜 信春 (キョウ・ノブハル)

白 吉雲 (ペッ・キルウン)

 中国 陳 萍 (チン・ピン)
 米国 レベッカ・ジェニスン
 スリランカ J.A.T.D.にしゃんた

お問い合わせ先

京都市 総合企画局国際交流・共生推進室

電話:075-222-3072

ファックス:075-222-3055

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