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共同記者会見(2014年5月13日)

ページ番号166827

2023年4月12日

元京都市立貞教小学校跡地における京都美術工芸大学東山キャンパス構想に関する基本協定締結式の開催について

総合企画局市民協働政策推進室プロジェクト推進担当(電話222-4178)

門川市長

 学校法人二本松学院新谷理事長,河野学長,また,新谷会長ありがとうございます。

 京都市立貞教小学校の跡地を京都美術工芸大学で活用を進めていくこととなりました。

 京都市立貞教小学校は,明治2年に,明治維新で都の地位を失って大変なショックがあった京都の町衆達が,子ども達さえしっかり育てば京都の未来は明るいと考え,英知を集めて立ち上げました。

 文部省が設置されたのが明治4年で,小学校制度が発足したのが明治5年ですが,明治維新の直後の明治2年に地域に根差した64校の小学校がつくられました。これが,日本で最初にできた小学校でありました。

 しかし,社会のドーナツ化現象,少子化といった中で,子ども達の学びの場,教育環境を充実するために地域の方々が,断腸の思いで学校の統合を決断され,貞教小学校は今,東山開睛館として教育活動が展開されています。

 学校法人二本松学院は,京都に伝わる日本の素晴らしい伝統工芸の感性や匠の技,芸術をしっかりと未来に伝えるために,新谷理事長をはじめ,多くの方々が大変な努力をして,2年前に京都美術工芸大学を開校されました。私も学校法人二本松学院が運営する三条烏丸の京都伝統工芸館を拝見し,素晴らしい人材を育てておられると感服しております。

 学校跡地をもっと有効に活かしたい,それが私たちの願いであり,使命でありますので,新たな提案制度を創設しましたところ,学校法人二本松学院から元貞教小学校で新たな大学キャンパスの創設の提案をいただき,しっかりと審議させていただき,地域の概ねの合意を得て,この度,基本協定の締結に至ったものでございます。

 特に,提案内容にある人材の育成については,京都の未来,日本の未来にとって大切なものであり,非常に重要であると考えています。

 なお,来年は,琳派400年の年にあたります。河野学長は,琳派の研究の我が国の第一人者であり,琳派400年の記念事業の呼び掛け人でもあります。琳派400年の年に伝統工芸・伝統文化の集積地である京都市の東山区において,大学の起工式が行われることを嬉しく思います。

 早速,学校法人二本松学院と京都市,地域で事前協議会を発足させ,地域の皆様に丁寧な説明をしながら,新しいキャンパスが設置できるよう努めてまいります。

 元貞教小学校跡地は,京阪七条駅や京都駅から徒歩圏内であり,園部キャンパスとダブルキャンパスとして,非常に連携のとりやすい場所でもあります。

 さらに,寺・神社・伝統文化・伝統産業・地域に密着していける場所でもあります。

 貞教学区の方が,京都伝統工芸館に行かれ「これだけ立派な作品をつくられる先生・学生さんがいる大学であれば是非来て欲しい。」と言われたとも聞いています。

 素晴らしいキャンパスになることを期待しています。

新谷理事長

 まず初めに,この度,学校法人二本松学院の京都美術工芸大学東山キャンパス構想に関して,京都市と基本協定の締結に至りましたことについて,御支援いただきました京都市長をはじめ,京都市役所の皆様,また,本学の構想に御理解をいただきました地元の長田貞教自治連合会会長をはじめ,地元の皆様,多くの関係者の皆様に,心から御礼を申し上げます。

 学校法人二本松学院は,平成2年に設立され,平成3年に建築分野で即戦力として活躍できる人材育成を目指して,京都建築大学校を開設しました。

 平成7年には,当時の通産省から,それまで一子相伝と言われました伝統工芸の技術を伝える「後継者育成の学校を引き受けていただけないか」という話がありました。全国,津々浦々探し回りましたけれど,通産省としては見つける事が出来ず,是非,京都でやっていただきたい,という 御要望がございまして,京都伝統工芸大学校を開設するに至りました。

 伝統工芸分野の皆様の御協力を得て,無事開設することができましたが,色々な問題が発生してまいりました。

 一子相伝という中で後継者を育てるということは,商売敵をつくるということになりますので,理解を得ることは大変なことでございました。

 ですが,おかげさまで,京都建築大学校は,1万人あまりの卒業生を輩出し,京都伝統工芸大学校からも,約2,500名の伝統工芸士の後継者を有為な人材として輩出しています。

 業界の皆様から,ようやく「この学校があって良かったな。」といったお言葉を頂戴できるようになりましたが,それには20年の歳月が必要でございました。

 こうして積み重ねてきた信頼と実績を基に,平成24年4月に,全国で唯一「工芸学部」を持つ大学として,京都美術工芸大学を開学いたしました。

 京都美術工芸大学は,世界を代表する美術工芸文化が息づく京都で,わが国の伝統と文化を尊重し,その継承と文化の創造を担う有為な人材を育成することを建学の理念としております。

 この建学の理念にもとづき,よりよき教育,研究環境を整備するために,この度,平成29年4月を目途に,元貞教小学校跡地に東山キャンパスを設置させていただきたいと考えております。

 貞教学区は,美術工芸が息づく工芸のまちであり,また,同地域は三十三間堂,清水寺,京都国立博物館など,多くの神社,仏閣,文化財に囲まれていることなど,「本物」を学ぶことを目的とする本校にとって理想的な教育環境にあります。

 東山キャンパスは,京都美術工芸大学工芸学部を中心に活用させていただきたいと考えております。学生数は,現時点では,収容定員が400名でございますが,将来的には,新しい学科や大学院の設置を含め,定員増についても検討してまいりたいと考えております。

 新しいキャンパスの施設構想については,現時点では,15mの高さと,建築面積は

 3,000㎡程度,延べ床面積は10,000㎡程度の校舎をイメージしております。校舎内には講演会等に500人程度が活用できるホールを設置する予定です。今後,地元の皆様から御意見を賜りながら,詳細を詰めてまいりたいと思います。

 新キャンパスがオープンした暁には,地域の生涯学習の支援,伝統工芸産業をはじめとする産業活性化,文化財保存修理等の面でも貢献したいと考えております。

 また,同地区は,川端通沿いの車でもアクセスしやすい場所にありますので,修学旅行生や観光客にお立ち寄りいただくなど,観光の面でも貢献したいと思っております。

 さらに,若く元気な学生がこの地に増えることは,地域の賑わいなど地域活性化につながると期待しております。

 最後になりましたが,元貞教小跡地を活用させていただくに当たり,京都市においては,小学校が自治活動の拠点の役割を果たしてきたという歴史的な経緯を十分尊重し,その機能の維持には十分配慮したいと考えております。

 地元の皆様,京都市の皆様に京都美術工芸大学に来てもらって本当によかったと言っていただけるよう,地元の皆様に誇りに思っていただけるよう,最大限の努力をしてまいりますので,何卒,温かい御支援をお願い申しあげます。

 また,本日,このように多くの皆様の前で発表をさせていただくことについて,大変ありがたく思っています。

河野学長

 本日の基本協定締結に際して,このような場を設けていただいたことについて,京都美術工芸大学を代表し,門川市長をはじめ,貞教学区の皆様,長田自治連合会長をはじめ,関係の皆様方に厚く御礼を申し上げます。

 1,200年の歴史と伝統のある京の都に東山キャンパスを開設することは,京都美術工芸大学の教育にとって,極めて意義深いことであり,その第一歩を,本日,踏み出すことができました。

 教職員一同心からうれしく,また,感謝を申し上げております。

 さて,私からは,教学の面について,お話したいと思います。

 この地は,本学の教育目的にとって,理想的なロケーションにあります。

 ここには世界に冠たる寺社仏閣が数えきれないほどあり,平安京以来の歴史を誇っております。京都国立博物館をはじめ,この地で所蔵される美術品や文化財が質量ともに傑出していることは改めて指摘する必要もありません。

  京都は伝統建築だけではなく,近代建築においても抜きん出た地位を持っています。

 また,この地は,京焼・清水焼,京扇子をはじめとする伝統工芸が,世代を超えて受け継がれてきた工芸のまちであります。

 日本の美は生活の美であるといって過言ではありません。生活の美の中心をなすのは建築であり,また,工芸です。この2つにおいて,先人が切り拓いた伝統を確実に受け継ぐとともに,そこに自由な発想や斬新な視点を融合して日本の美のパイオニアになることを目指すのが本学の建学の精神であり,教育方針です。こうした場所でオリジナルに触れることで磨かれる,美意識や感性は,建築や工芸美術を志すものにとって,何ものにも代え難い貴重な財産であります。

 また,芸術文化都市,国際都市,大学都市である京都市に立地することのメリットを活かすことで,建築家,工芸家,デザイナーなど様々な分野の人たちや,企業,あるいは,他大学,諸外国との活発な交流が可能となります。

 こうした交流による知的刺激を通じて,学校の勉強だけでは身につかない,グローバルな感覚,ビジネス感覚,そして,最新のトレンド感覚を磨くことができます。

 さらに,この地は,京阪七条駅と指呼の間にあり,JR京都駅からも徒歩圏であるなど,交通の便もよく,通学の面でも学生にとっても大きなメリットがあります。

 京都美術工芸大学としましては,東山キャンパスと園部キャンパスをダブルキャンパスの形で活用し,東山キャンパスでは,まち全体をキャンパスにして,京都という都市のメリットを最大限いかした教育を行っていきたいと考えております。

 貞教小学校の貞教とは,正しく教え導くという意味であるとお聞きしました。その地にキャンパスを開く機会を恵まれた私たちは,その精神を良く守り,貞教小学校の名を汚すことのないよう全霊を傾けて教育に当たることを誓い申し上げます。

 このような,教育環境として理想的な場所に新キャンパスを開設できますことは,本学にとって大きな喜びではあります。

 しかし,東山キャンパスが単に本学の発展だけでなく,地元の新しい展開,京都市の飛躍,ひいては,我が国と,我が国に期待を寄せる世界の成長に貢献できますよう,誠心誠意頑張る所存であります。

 何卒よろしく御理解,御支援を賜りますよう,心からお願い申し上げます。

門川市長

 今後10年以内には,元貞教小学校の鴨川を越えた対岸の崇仁地域に京都市立芸術大学が移転・開校することが決まっており,将来的には,美術工芸の一大拠点として,この周辺一帯が社寺・伝統文化・伝統工芸の地域になります。京都,ひいては,日本の伝統文化と伝統産業を飛躍させる大きな役割を担うのではないかと考えています。

 国内外から来訪する多くの学生や観光客に伝統産業を振興することが必要です。特に,伝統産業にとって市場を開拓することや,匠の技や感性を継承することが,今一番のテーマであり,そのことに結びつくものと考えています。

質疑

記者

 地元の工芸家やデザイナーとの交流について,大学として,どのように考えていますか。また,地元との連携は,具体的にどのようなことを考えていますか。詳しく教えてください。

新谷理事長

 先ほどもお話ししましたとおり,この学校が創設しました前身というのが,伝統工芸の後継者育成を目的でスタートしましたので,初期の段階では,職人の方々が道具一つ公開するのもためらうというような状況でありました。これでは言い方は適切ではありませんが,伝統工芸から人が離れていくのではないかと感じ,物づくりの原点を我々の学校で行わないと後が続かないのではないかと考えました。

 私どもでは,東日本大震災からの復興を願い清水寺に仏像を奉納させていただいています。清水寺からは,「我々は山を買って木を育てていこうとしている。しかし,それをつくってくれる人材が続いていくのだろうかと考えると,改めて,学校にはしっかり頑張っていただかないと困る。」という言葉をいただきました。

 清水寺からは,我々大学に対して,重要文化財の経堂をお貸しいただくことで御協力いただいています。今年度も,ゴールデンウィークに工芸作品の展示会を開催し,1万5千人を集客することができました。

 「学生たちが励みになるような形で,しっかりと清水寺もサポートしていくので,大学も頑張っていただきたい。また,学生のみなさんも頑張りなさい。」とバックアップしていただいていますので,我々もその御好意に甘えるのだけではなく,しっかりとしていかなければと考えています。

 

記者

 清水寺と今取り組んでいるものと,さらに東山キャンパスで新たに深めていくものや他の寺社仏閣との連携として新たに取り組んでいくものについて,お聞かせ願いませんか。

新谷理事長

 最初に御協力いただいたのは,京都の伝統工芸の各組合でございました。組合が今一番困っているのは,先ほど市長が申されたとおり,販売経路が一番のウィークポイントになっております。我々は10年前から,イタリアのロンバルディア州ミラノの「APA協会」や国際家具見本市「ミラノサローネ」などで,どんどん作品を展示しております。また,フランスのパリには,エコール・ブール国立工芸学校やアトリエ・アール・ド・フランスといったフランスの大きな工芸の組合がございます。約4,500社の組合ですが,日本と同様に伝統工芸は厳しい状態になっておりまして,伝統工芸を発展させていかないといけないということで,先だっても,フィレンツェにおいてフランス,日本,スペイン及びイタリアの4カ国で,「芸術的職人伝統工芸国際憲章」に署名をいたしまして,お互いに良い作品の交換をしよう,販売の協力をしようと取り組んでいます。こういった取組を大学が中心となって,作品の発表だけではなく,販売も現地で行いたいと考えています。

 

記者

 地域との連携という点は,いかがですか。

新谷理事長

 以前,陶磁器組合がパリで展示会をされていて,「客の入りが悪いのだがどうしたら良いか。」と日本まで電話があり,サポート体制が出来ていますので,「フランスのアトリエ・アール・ド・フランスへ聞かれてはいかがですか。」と電話一本でお答えすることができました。そういったフランスとの交流の強みをいかして貞教学区を発展させていきたいと考えています。

市長

 冒頭,新谷理事長からお話しがありましたが,学校の跡地ですので,地域の未来を踏まえ,地域活動の拠点としての機能が維持できるように最大限の配慮を行うということは,私どもや地域にお伝えいただいています。地元の長田自治連合会会長御自身が陶芸家であります。地域が伝統工芸のまちでありますし,寺・神社あるいは博物館を通じて伝統工芸の発展,あるいは販路開拓を,共同事業を通じて展開していきたいと考えています。その時も大学と地元,京都で議論し,地元の発展に貢献していきます。

 

記者

 市長にお伺いしたいのですが,市としてこの提案を決めた大きなポイントは何でしょうか。

市長

 学校跡地については,「市民等提案制度」に基づいて,広く提案を募集していますが,学校法人二本松学院の提案は,大学のまち,文化芸術ゾーンを形成する拠点,伝統工芸のまち京都の発展に大きな期待ができることから,京都市として活用を決めました。

 また,地元の方々に説明させていただいたところ提案内容が素晴らしいと判断していただきました。特に,伝統工芸の担い手の育成が,地元にとっても大きな課題になっておりますので,課題の解決にも貢献できると判断しています。

市長(展示している雛形模型について)

 大学としては3年目ですが,これだけの作品を造れる人材を育てていただいたと感じています。指物や宮大工といった伝統工芸の担い手を見事に育て上げていただいています。

河野学長

 大学で伝統建築を学んでいる学生が,嵐山にある山門を10分の1の大きさに再現しています。こういった技術を言葉で教えるのではなく,現物を造って教えることはこれまでありませんでした。現物を造るには,刃物を研ぐことも覚えないといけません。はじめは,何故,刃物を研がないといけなのかと思いますが,現物を造ってみると「なるほど道具には素晴らしい文化がある。」と気付くことができます。外国との違いは,ノミひとつとっても違いがあります。外国ではグラインダーで一気に処理をしますが,日本ではノミを使い,少しずつ処理をします。そのため,日本の伝統工芸の方が手間暇をかけていますが,仕上がりは素晴らしく,こういった技術は残していかないといけないと思っています。

市長

 手間暇をかけて,自分の意思で造れば,ホンマもんが造れるということです。

 

記者

 校舎は新設するということですか。

新谷理事長

 校舎は新設するつもりですが,市長から既存の建物は,工芸材料置場などで活用してもいいのではないかと提案がありました。しかしながら,耐震性に問題があります。

 いずれにしても,地元の皆様との話し合いはこれからですので,御意見を十分にお聞きして,決めていきたいと思っています。

 

記者会見資料

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