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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第12回 教育・人づくり部会

ページ番号35882

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第12回 教育・人づくり部会

日 時 : 平成12年11月10日(金) 午前10時~12時

 

場 所 : 都ホテル「コスモスホール」

 

議 事 :

(1) 京都市基本計画第2次案について     

(2) その他

 

出席者 :

◎金井 秀子(京都教育大学名誉教授,京都文教短期大学児童教育学科教授) 

川阪 宏子(市民公募委員) 

北川 龍市(京都市日本保育協会会長,京都市社会福祉協議会会長) 

佐々 満郎(京都府私立中・高等学校長会事務局長) 

佐々木博邦(市民公募委員)

○シュペネマン・クラウス(同志社大学文学部教授) 

庄村 正男(京都市PTA連絡協議会元会長) 

永田 萠(イラストレーター) 

福田 義明(京都市私立幼稚園協会会長) 

水谷 幸正(佛教大学理事長) 

山本 壮太(NHK京都放送局長)                               

 

以上11名 

◎…部会長     (50音順/敬称略) 

○…副部会長     

 

 

1 開 会

金井部会長

  第12回「教育・人づくり」部会を開催させていただく。

 

 

2 議 事

(1) 京都市基本計画第2次案について

金井部会長

  本日は京都市基本計画の第2次案についてご議論いただきたい。第2次案は10月に開催された審議会総会での議論及びその後事務局に寄せられた文書による意見を基に,調整委員会で第1次案を修正したものである。

  なお,調整委員会においては,先般発表された京都市の「市政改革大綱(案)」の内容も加味して検討を行った。

  それでは,第1次案からの主な変更点について,当部会関連部分を中心に説明したい。

  まず,第1章第1節3の学校教育に関する部分では,(1)ア(ア)「開かれた学校づくり」において,「学校評議員制度に若者が参画すべき」というご意見を基に「幅広い世代の地域住民が学校運営に参画する」との記述を,市政改革の考え方等に基づき,学校施設について「児童館や老人デイサービスセンターなどの他の施設との合築・複合化を進める」という記述をそれぞれ追加した。

  次に,第2章第1節4の生涯学習に関連する部分では,(1)イ「社会的課題についての学習機会の確保・提供」において,「民間と競合する講座内容を見直し,役割分担を図るなかで,…社会的課題についての学習機会を確保・提供する」との記述を追加した。

  第2章第2節3の大学に関連する部分では,(2)で「「産官学」の官とは本来国家のことである」とのご意見を踏まえ,「産官学」を「産官公」に変更した。

  第3章については,市政改革の考え方等に基づき,限られた行政資源の効果的活用など,市政改革にかかる記述を強化している。

  なお,基本計画を分かりやすいものとするため,新規性や象徴性などのあるポイントとなる主要な事務事業を「ちょっと注目!」として各章の政策の中に例示した。

  まず本部会に関連のある部分について,その後で全体について問題点をご指摘いただきたい。本日が当部会の最終回となるので,忌憚のないご意見をうかがいたい。

  まず,学校教育に関連する第1章第3節3についてご意見をうかがいたい。

 

佐々木委員

  国際的に教育改革が大きな課題となっている時代に,総会や文書による意見,また市民からの意見に,教育に関する提言が少ないことに驚いた。基本構想では一貫して「信頼」と「パートナーシップ」がキーワードとなっているが,当部会の関連分野の記述ではそれら基本構想の中心概念が欠けているように感じられる。

  学校教育における信頼ということを考えた場合,生徒と教師,生徒と学校,生徒同士,学校と父兄等,生徒,学校,地域,父兄,社会全てを含んだ信頼関係の構築が必要となる。基本構想に今まで確かなものと思われていたさまざまな社会的な制度やしくみへの信頼が時代の転換期の中で大きく揺らいでいるという記述があるが,この10年に適切な対応をしないと20年先,50年先にどうなるか心配だ。経済力が低下しても教育力が確保されていれば,21世紀に希望が持てる。

  この項の「基本的方向」は「「家庭」が最も安心できる場所となり…」という記述で始まっているが,もう少し信頼というキーワードから見直してはどうか。子どもを指導したり管理したりするのでなく,自己決定権やそれに伴う責任感,子どもたちが今何を考え,何を求めているのかという意見を汲み上げ,学校づくりに生かすといった部分がほしい。現行体制の下でもできることはある。時代のパラダイムシフトに合わせた制度やシステムの改革を盛り込むことで,21世紀に向けての計画として意味のあるものとなる。京都の自らの生活を自らの責任で律していく自治の伝統を学校生活にも延長し,自ら考え,決定し,責任を持つことのできる子どもを育てるという方向性を盛り込むことができればいい。

 

シュペネマン副部会長

  「基本的方向」の最初で,家庭は安心できるところ,地域は温かくまた厳しく見守るところ,学校は集団のなかで可能性を開花させるところという役割分担がされているが,そう簡単に役割を定義してしまっていいのか。役割を定義するのであればもう少し正確に定義すべきで,「基本的方向」の前半の文章にはあまり意味がないように思う。この部分を削り,佐々木委員のご意見に従い,もう少し新しい信頼やパートナーシップを中心にした方向性を書いたほうがいいのではないか。

 

金井部会長

  学校教育に限らず,子どもをどのような人間に育てるか,そのためにどのような教育をすべきかが問題であり,いちばんの基本は家庭での教育だと思う。学校教育において教師と生徒,生徒同士の信頼関係が大事だというご指摘があったが,その信頼関係が芽生える最も基本となる場所が家庭であり,家庭での親子の間の信頼関係があってこそ他人との信頼関係を築くことができる。家族も一種のパートナーシップであり,家庭で信頼やパートナーシップをきちんと育てることが大事だ。人を信頼する心を育てるのは家庭であり,家族を信頼できず,家庭が安心できる場所でないとき,どうして社会で信頼関係を築くことができるのか。親の生き方を見て子どもは自分の生き方を学ぶ。心豊かで情緒の安定した,自ら生き方を身につけられる子どもを育てるためには家庭が最も重要であり,「基本的方向」で家庭について最初に記述されていることには意味がある。

  学校における教師と生徒の信頼関係は大事であり,そのためには生徒との信頼関係を築くことのできる素質を持った人が教師にならなければならないが,その基本はやはり家庭にある。子どもを育てる方法は1つではない。いろいろな角度からいろいろな方法が取り上げられているが,これらの具体的な事業を進めていくなかに,当然信頼とパートナーシップが盛り込まれていくことになる。

 

水谷委員

  教育の問題は多岐にわたり,100人いれば100通りの教育論がある。それをまとめると「基本的方向」に書かれているような記述になる。しかし,家庭での教育に対して京都市がどうサービスし,支援するのか。例えば,宗教家として特定の宗派を離れて宗教情操教育という立場で家庭にアプローチすることはできるが,(1)ア(イ)「家庭・地域における教育力の向上」で京都市は家庭の教育力の向上に対して何ができるのか。

  もう一つは,(5)「ゆとりと潤いのある学習環境づくり」とあるが,最近「ゆとりの教育」とは何かが問題になっている。授業時間を減らすことがゆとりではないはずで,ここで言う「ゆとり」は何を意味しているのか。

  3番目に,(5)ウ(イ)「私立高校や専修学校・各種学校との連携」とあるが,なぜ「府立高校との連携」がないのか。

 

教育委員会(矢作教育長)

  この基本計画全体が市民全体で京都市をどうしていくかという発想で書かれている。家庭や地域の教育力の向上に対して京都市として何ができるのかというご質問については,少子化,核家族化する社会の中で,PTAや地域を通じて連携を図り,家庭の教育力の向上を果たすことができればいいと考えている。京都市が「こうあるべき」と言って家庭に踏み込むわけではない。人づくり21世紀委員会での取組のように,市民の取組を行政がお手伝いするものと捉えていただきたい。

  (5)の「ゆとりと潤い」については,明治以降,公教育は日本の近代化,科学や社会の発展のために行われてきたが,今日では世界と共に日本の国が進んでいくという目標の下にやっていくべきだ。内容的にはきちんとした教育を行わなければならないし,教育課程の厳しい枠の中でも何とかゆとりをつくっていく取組を推進していきたい。

  ウ「若者に魅力ある高校づくり」については,今後10年間で市立高校の改革を進め,私立高校等についても支援していくという趣旨である。

 

水谷委員

  家庭に京都市がどうアプローチするかは難しい問題だ。地域の小学校のPTA企画の講演会に招かれ,教育における親の役割をテーマに話をする機会があったが,集まってきたのは15人程度だった。役員が熱心に取り組んでいても,一般の親はあまり関心がない。

  事実かどうかは分からないが,「ゆとりの教育」による学力低下が最近問題になっており,それに言及しておく必要はないのか。

  京都市民の高校進学者は府立高校がいちばん多いと思う。市民にとって魅力ある高校という意味では,私立高校等との連携を書くなら,なぜ府立高校との連携を書かないのか,今の説明では分からない。

 

佐々委員

  京都市内には私立高校が29校あるが,年数回,教育委員会と私立学校の間に話し合いの場が設けられている。(5)ウ(ア)は設置者の立場で書かれているのだと思うが,(イ)は連携ということであり,府立高校についても言及しておいたほうがいい。

  「ゆとり」に関しては,例えば,新しい指導要領では,小学校で台形の面積を教えなくなるが,なぜこのような割愛をするのか分からない。基礎学力については(2)ウ(ア)に「子どもたちが基礎的な学力を確実に身につけ」という記述があるが,今後大学への進学が容易になるとともに,小中学校の学力まで下がることになるのではないかと心配している。義務教育としての責任を持ち,小中学校での基礎学力は徹底して身に付けさせなければならない。ここでの「ゆとり」は教育環境のゆとりという意味ではないか。

  基本的に家庭が大事だという部会長のご意見があったが,中坊公平氏が朝日新聞の連載で「年間3万3千人が自殺する世の中だが,自殺しようとしたとき,自分が育ってきた家庭のことを思えば自殺を思い止まるのではないか,家庭とは絶対的受容の場である」という趣旨のことを書いていたが同感だ。家庭とは最も安心できる場であり,家庭への信頼が自殺を思い止まる大きな力となる。家庭教育学級や生涯学習講座等の状況を見ても,子育ての問題に興味を持つ人は少ないが,こどもみらい館のような施設が地域の身近なところにもっとあればいいと思う。もう一つは,高校の家庭科などで,家庭のあり方について学ばせる必要があるのではないか。そういう意味でも「基本的考え方」の家庭についての記述は残しておくべきだ。

 

水谷委員

  私立高校に補助を出しているので連携するという意味なのかもしれないが,補助金を出していない府立高校との連携も必要ではないか。市内の学校を魅力的にするには全て連携したほうがいい。

 

金井部会長

  京都市は府立高校とも当然連携しているはずで,ここでは財政的な補助を行っているという意味で,私立高校等に対する京都市の振興施策が書かれている。

 

水谷委員

  京都市は私立高校に対してどの程度補助金を出しているのか。

 

教育委員会(門川教育次長)

  京都市では市民が通っている私立高校に対して,総額約4千万円の補助をしている。専修学校・各種学校に対しては,専修学校・各種学校協会に若干の補助金を出している。

 

佐々木委員

  学校教育においての府市協調だけでなく,あらゆる分野で府市の垣根を取り払って協調していかなければならない状況にある。いろいろ制約はあると思うが,未来に向けて一歩踏み出すという意味で,調整委員会の場で府市協調についての記述を盛り込むことを検討していただきたい。

 

金井部会長

  どういう形で府立高校との連携についての記述を盛り込むかについては,調整委員会の場で検討したい。

 

佐々委員

  (2)ウ(ウ)「高度情報化や国際化などに対応できる子どもたちの育成」と関連して,高度情報化や国際化に対応することも重要だが,日本人としてのアイデンティティ,国語教育や読書力の育成も重要なのではないか。国語の時間が戦前は4年生で10時間以上あったが,戦後どんどん減らされ,新しい指導要領では4時間になる。自国の言葉が十分習得されていないのに国際化を謳うことには疑問を感じる。読書力の向上に関しては図書館の充実が重要になるが,京都市には新中央図書館構想もあり,高度情報化や国際化だけでなく国語教育や読書力の向上,図書館の整備についても盛り込んでほしい。

 

金井部会長

  (2)ウ(イ)に「作文・読書などにより」という記述があるが,そこに「国語力の向上」を入れるとかしたらどうか。

 

山本委員

  高度情報化,国際化に関連して,少し違うアングルから意見を述べたい。この度のアメリカの大統領選挙では報道が二転三転して混乱している。今後ますます情報化は進むが,情報化社会の一つの側面はマスメディアや映像で,そうした情報環境の中で生きていく子どもたちにテレビ等のメディアを通じた情報についての批判的な見方を身に付けさせる必要がある。

  ここ数年日本でもメディアリテラシーということが盛んに言われるようになったが,これは教育の問題であり,ブラウン管に出てくるものは現実ではないということを教えなければならない。メディアリテラシーを教育の中に最初に位置付けたのはカナダだが,カナダは恒常的にアメリカの文化侵略を受けており,アメリカから入ってくる情報を批判的に見なければならないというところから始めた。小学校1年生でテレビの中の世界と現実は異なることを教え,2年生ではローアングルやズームイン,ズームアップといった専門的なことを教え,人間として現実に手で触れる身の回りの世界とブラウン管の中の世界は異なるということを教えていく。日本はメディアリテラシーについての教育が遅れている。NHKもテレビを使ったメディアリテラシー教育を始めており,先日京都府下の5年生の子どもたちを集めて,自分たちで3分間のテレビ番組をつくるという体験教育を行った。子どもたちは番組づくりの現場を見ることにより,テレビの情報が加工されていることを学ぶ。(2)ウ(ウ)にメディアリテラシー教育についての記述を追加してはどうか。

  もう一つは,映像社会の問題と関連して(5)アで書かれている「学校ビオトープ事業」等は重要なことだ。コンピュータ・グラフィックスの世界は人間の手でつくられたものであり,バーチャルな環境の中では人間は成長しない。バーチャルな世界では体験できない,手で触れ匂いを嗅ぐことができる「自然」や「本物」に触れ,生き物の痛みを感じる教育が大切だ。

 

金井部会長

  非常に重要なご指摘をいただいた。映像に浸って育つ子どもたちの心が将来どうなっていくのかについては危機感を持っている。自然の営みからいろんなことを学んで育つことは人間としての基本であり,自然に触れて生命の尊さを学び,自然をいつくしむことで心が安らぐような人間を育てることが大切だ。

  続いて,第1章第2節2の子育て支援に関する部分についてご意見をうかがいたい。京都市として何ができるかだけでなく,私たちが市民として何ができるかということも念頭においた内容となっている。少子化が進んでいるが,核家族の中で子どもを産み育てることは女性にとって肉体的にも精神的にも,また経済的にも負担のかかることであり,子育てを家庭にだけ任せておくのではなく,地域の人がいろんな形で支援していく必要がある。行政だけではできない部分もたくさんある。

 

福田委員

  戦後教育の行き着いたところが学級崩壊だったわけだが,京都市では学級崩壊はほぼ解消されたのではないか。京都市は今年度から小学校の行事等に地域の人々を招く「開かれた学校づくり」の取組を行っており,幼児教育に携わる一人として,運動会や学習発表会等に招かれる機会があった。この新しい試みを見守っていきたい。2002年から学習指導要領が改正になり,小学校と幼児教育との連携が始まる。今年度も小学校の教育研修会から幼稚園・保育園の団体に対して講演の要請があったが,幼児教育と小学校教育の連携の中で「開かれた学校」がつくられていくことにより,地域や家庭が安心して子どもを育てられる土壌がつくられつつあると思う。

  (3)「障害のある子ども,養護に欠ける子どもの子育て支援」については,私立幼稚園でも100~150人の障害のある子どもを預かっている実態があり,「保育所に対し」は「保育所や幼稚園に対し」,「保育士の加配」は「保育士,教諭の加配」と修文していただきたい。

 

北川龍市委員

  子どもを安心して産み育てられる環境づくりが大事だ。核家族化の中で,子どもの育て方が分からない母親が増えている。保育所等にゼロ歳児を朝6時に預けて夜7時に迎えに来るなど,子育てを他人任せにしている親も多い。そういう環境を改善しなければならない。日本では50坪以上の住宅を建てると税金が高くなるが,一定以上の広さの住宅は逆に税金を低くするなど,核家族化を防ぐために多世代が同居できるような環境づくりをすべきだ。現実に可能な取組としては,地域に保育園,幼稚園を中心とする子育て支援センターをたくさんつくり,母親が気軽に相談できる環境づくりをしていただきたい。

  われわれが長い時間をかけて審議してきた基本計画がどう実行されるのか心配だ。答申後,基本計画がどのように実行されたかを報告していただいたり,われわれも一緒に事業に取り組む機会があるのか。

 

金井部会長

  親が子どもと同居していたり近くに住んでいて,子育ての手助けやアドバイスができる場合はいいが,現実にはそれは難しい。多世代住宅を行政が支援するにしても,親の側にそれに対する理解がなければならない。

 

庄村委員

  先ほど子育てをテーマとする講演会への参加者が少ないという話があったが,大人の考え方が問題だと思う。人づくり21世紀委員会の取組にも地域で参加する人は限られている。21世紀に向けて活動の輪を広げていくことが課題であり,地域の保護者全員が少しでも参加できるような環境づくりが大切ではないか。こどもみらい館などを利用して,親同士が知り合いになり,相談し合って不安を取り除くような活動を10年,20年かけて展開し,保護者の意識が少しでも高まるような取組をしてほしい。

 

川阪委員

  (5)イ「子どもの権利擁護,虐待防止」について,子どもの虐待は近年激増しており,新しく児童虐待の防止等に関する法律も施行される。児童虐待は親のストレスや社会的環境などが原因で起こっており,まだまだ増えると思われるが,「児童虐待の早期発見」だけでなく「児童虐待の救済システムの充実,ケアの充実」を付け加えていただきたい。新しい法律では児童虐待がある場合,近所の人や医者,弁護士,教師などが通告しなければならないことになっているが,当事者の半数以上がそれを知らないという調査結果がある。「市民への広報・啓発活動の推進」とあるが,当事者の認識を深める広報を先行して行っていただきたい。

  また,「児童相談所の機能や体制の充実」とあるが,今までは児童虐待がある場合,児童相談所の職員が警察の協力を得て家庭内に立ち入っていたが,新しい法律では児童委員も一緒に入れるように改正された。児童相談所の職員や児童委員など子どもの虐待防止に関わる人の資質の向上に取り組んでほしい。

  これまで審議を重ねてきて,基本計画の内容はよくまとまってきたと思うが,前文に書かれているような財政等の制約もあり,盛りだくさんな内容の全てを実現するのは難しい。また,十分に議論が尽くされたわけではなく,実施時に異議が出る可能性もある。推進責任とフォローアップについては明記しておくべきだ。

 

永田委員

  今回が最後の部会ということだが,この審議会の発足から今日までの間にも世の中は予想を上回るスピードで変っている。われわれは過去の良き時代,自分たちの幸せな子供時代の家庭や地域,学校を基準にして考えがちだが,時代は確実に変わっている。「基本的考え方」の家庭,地域,学校という役割分担についての記述は必要だと思うが,私たちの経験に基づく家庭や地域,学校のあるべき姿は幻影かもしれないという恐れを持つべきで,そのうえで高い理想を掲げなければならない。家庭も地域も確実に崩壊し,変わっていくと思うが,学校教育だけは変えてはならないし,変えずにすむ方法がまだ残っている。「家庭とはこうあるべきだ」という考え方にとらわれるべきではない。私自身仕事を持ちながら子育てをしてきたが,ここに書かれている内容の大半は私たちが当時切望したものであり,今も同じ不安を若い母親たちが抱えているとすれば,10年後にこれらが解決するとは思えない。

  こどもみらい館の近くを通る機会が多いが,夜遅くまで明かりがついており,公園に地域の中高生が集まっている姿が見られる。地域に住む者として,地域にすばらしい施設ができることの思いがけない効果を実感している。厳しい財政状況の中でここに挙げられている全ての施設計画が実現するとは思えないが,施設をつくる際には思いがけない効果もあるので,あまり役割分担をはっきりしてしまわないほうがいい。

  児童を虐待する母親が虐待を受けている場合も多く,子どもを助けることは親を助けることにもなる。その場合にも家族を類型として捉えて,母子家庭や父子家庭は何かが欠けている家庭と捉えてはならない。今後の日本社会ではそういう家庭が当たり前になるかもしれない。

  京都の素晴らしさはたくさんある。「京都方式」と呼ばれるような京都らしいやり方を,既存の施設の中に機能として盛り込む努力を続けてほしい。高い理想に到達することが目的ではなく,その過程こそが大切だと思うので,折りにふれ京の人づくりに関心を持って成果を見守っていきたい。

 

北川龍市委員

  先ほどの私の質問に対して事務局から答えていただきたい。

 

事務局(葛西政策企画室長)

  この計画の実行性の確保については,「計画の推進」に進行状況を定期的に点検し市民に公表し,柔軟な計画の進行を図るとともに必要に応じて見直していくと記述している。

 

北川龍市委員

  誰が点検するのか。新たに計画推進委員会を設置するのか。ここに書かれていることだけではよく分からない。

 

事務局(葛西政策企画室長)

  具体的なあり方については今後調整委員会等で検討していただくことになるが,行政だけでなく市民も参加する組織を考えている。京都市としては基本計画を答申いただいた後に具体化していきたい。

 

金井部会長

  引き続き,第2章第1節4の生涯学習に関する部分についてご意見をいただきたい。

 

水谷委員

  神社仏閣にはそれぞれ宗教的意味があり,規模や歴史もさまざまだが,いずれも現在社会における機能を果たすことが要求されている。(1)ア「京都ならではの学習機会の確保・提供」に「豊富に存在する神社仏閣など恵まれた生涯学習資源を活用した学習機会の確保・提供に努める」とあるが,京都市が神社仏閣を生涯学習資源として活用していくという方向付けがされたということであり,ぜひこれを実行していただきたい。

 

永田委員

  (2)ア「図書館機能の充実」について,京都市の図書館には童話や絵本の蔵書が少ないと言われるが,絵本作家の間では21世紀に向けて高齢者向けの絵本づくりが課題となっている。児童書は文字も大きく,高齢者の読み物となる可能性は高いので,ぜひ児童文学図書の充実を盛り込んでいただきたい。

 

川阪委員

  (1)イ「社会的課題についての学習機会の確保・提供」の記述が少ない。重要な項目であり,「人権文化の構築や…環境の保全など」の部分を膨らませて,高齢化や国際化,情報化についての記述を付け加えればさらに充実した内容になるのではないか。また,社会的課題学習と要求課題学習は対立するものではなく,互いに補完的な関係があるので,そういう学習機会も重要だと思う。

  ウ「生涯学習におけるバリアフリーの推進」ではバリアフリーだけでなく,IT教育と生涯学習をリンクさせることが重要だ。

 

金井部会長

  最後に,第2章第2節3の大学に関する部分についてご意見をいただきたい。

 

シュペネマン副部会長

  特に私立大学は経営面で難しい状況にあり,すでに学生数が定員を下回っている大学もある。数年のうちにいくつかの大学は確実につぶれる。市にとっても望ましい状況ではないが,こうした現況について言及しておく必要はないのか。

 

金井部会長

  大学への進学者の絶対数が減っており,特に私立大学の場合は経営的に危機に瀕しているが,文部省の方針は大学は自助努力せよということだ。

 

北川龍市委員

  経営面だけ考えず,定員数を減らしてもっとゆとりある京都らしい教育をしてはどうか。

 

水谷委員

  京都市としてはこれ以上の表現は難しいのではないか。

 

(2) その他

総合企画局(高橋プロジェクト推進室長)

  ――(9月に開館した「キャンパスプラザ京都」の概要説明)――

 

金井部会長

  本日言い足りなかった点等があれば,11月17日までに事務局に文書で提出していただきたい。答申案については12月15日の総会で審議する予定である。

  本日をもって当部会は終了するが,皆さんの教育・人づくりへの熱意が集約された京都ならではの基本計画になったと思う。2010年の社会は全てを予測できないが,時代の変化に合わせて臨機応変に対応していかなければならない。厳しい財政状況のなかでどのくらい実現できるのかという不安もあるが,この基本計画を努力目標として掲げ,財政的裏付けがなくても,市民が皆で意欲を持って子どもの教育に取り組めるよう,われわれも地域での啓発活動に努めたい。皆さんの熱意と努力,今後の活動に期待したい。

  それでは,これで閉会としたい。

 

 

3 閉 会

 

 

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