スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市の基本構想・基本計画(資料編)/京都市基本構想等審議会/第9回 文化・観光・産業部会

ページ番号35870

2001年2月1日

21世紀・京都のグランドビジョン 京都市基本構想等審議会 記録/第9回 文化・観光・産業部会

日 時 : 平成12年6月7日(水) 午後1時30分~3時30分

 

場 所 : 京都ロイヤルホテル「青雲」

 

議 事 :

(1) テーマ別討論「産業」について     

(2) その他

 

出席者 : 

伊住 政和(裏千家今日庵常務理事,京都市ユースボランティア21顧問) 

市田ひろみ(服飾研究家) 

内田 昌一(京都市中央卸売市場協会会長) 

竹村 寿子(市民公募委員) 

中村 弘子(千家十職塗師十二代中村宗哲)

○橋爪 紳也(伏見区基本計画策定懇談会座長,大阪市立大学文学部助教授) 

堀場  厚((株)堀場製作所代表取締役社長) 

三谷  章(市民公募委員) 

山上  徹(同志社女子大学現代社会学部教授) 

◎吉田 和男(京都大学大学院経済学研究科教授)                               

 

以上10名

◎…部会長     (50音順/敬称略)

○…副部会長

 

 

1 開 会

吉田部会長

  第9回「文化・観光・産業」部会を開会させていただく。

  ――(部会審議の進め方について再説明)――

 

 

2 議事 

(1) テーマ別討論「産業」について

吉田部会長

  ――(資料の構成について再説明)――

  本日のテーマについて最初に事務局から資料説明をしていただく。

 

産業観光局(西口局長),総合企画局(小林情報化推進室長)

  ――(資料「基本計画検討資料「産業」」,「京都市南部地域における創造のまちづくりのための研究会~主な意見について~」に基づき説明)――

 

吉田部会長

  内田委員から事前にご提言をいただいており,本日席上に配布している。産業は基本計画のコアになる部分であり,京都には伝統産業の衰退,工場の撤退などいろいろ問題があるが,いい知恵をお出しいただきたい。

  内田委員からご提言についての補足説明等があればうかがいたい。

 

内田委員

  この提言は私が当審議会委員に就任する以前に,京都市基本構想に抜けていると感じたところをまとめたものだ。1つは中央卸売市場に関連して,現代は食べるものがほしいときに好きなだけ手に入る時代で,食の地位が低下しているが,最近は食料自給率の低下も問題になっており,国際的に見てそれではいけないのではないかということだ。もう1つはスポーツについての提言である。

 

堀場委員

  産業に関連したインフラの整備や創業支援工場などの整備は目立たないが重要であり,本当に必要なポイントを明らかにしておくべきだ。ITは初期投資にコストがかかり,膨大なランニング費と償却費がかかる。私の会社でも開発費の半分程度をIT関連にあてている。先行投資が大変かかるが,その辺に焦点を当ててやっていかないと,スタートすることはできない。また,IT関連分野では人材が不足しており,人材やリーダー育成も課題だ。

  そういったインフラを整備しないと競争力のある産業は育たない。情報化時代には企業が京都にあることに昔ほど意味がない。辺鄙なところでもネットワークさえ組めば低コストで対応できる。なぜ京都かということを常に意識しておかなければならない。京都のいちばんの強みは,人材や大学,研究機関との連携であり,それを生かすことを考えるべきだ。

 

竹村委員

  小学校が廃校になり中心部の便利なところが空いているが,小学校跡地を利用して,市民が年齢やレベルにかかわらず身近にパソコンを学べるようなインフラ整備をすれば,ITなどを身近なものとしてすぐに利用できる人材育成や,産業振興につながるのではないか。

 

吉田部会長

  京都はNTTの重点投資地域ではないらしい。初期投資をしても,大阪や東京のようにそれを回収できるだけの利用者がない。初期投資のリスクを推進産業が負ってくれない。CATVのようなものはやりやすいが,能力に限界がある。竹村委員のご意見については,アメリカの学校では生徒1人にパソコン1台があるのに,日本では教える人材もいない。京大に情報学研究科ができたが,まだ修士の卒業生が出た段階だ。やらなければならないことは分かっていても,そのためのリスクをどう乗り越えるか。人材も足りない。

 

市田委員

  和装業界では倒産が続いている。先日の大型倒産の後には,行政が連鎖倒産を避けるための支援をすると聞いた。「政策の検討項目」の最初に「ベンチャー企業等への支援」や「中小企業への経営指導」があがっているが,支援の基準はどうなっているのか。また,大型倒産が出たときどうやって支援するのか。

 

産業観光局(西口局長)

  「ベンチャー企業目利き委員会」は,広くアイデアを募り,うまく事業化できるかどうかを有識者や企業経営者によってランクづけし,Aランク評価を受けた企業には融資など支援するしくみである。「創業支援工場」「ベンチャー企業育成施設」は,創業には初期投資が必要なので,その部分の不動産投資を軽減するもの,「ベンチャー企業育成支援融資」「開業資金融資」は,創業者へは本来は融資に乗れないものだが,そこをあえて融資するものだ。「京都市ベンチャービジネスクラブ助成」はビジネスを始めた方に情報交換やビジネスマッチングの場をつくっていただき,それを支援するもの,「京都ベンチャー大賞」はベンチャービジネスをPRし評価するものである。また,「創業者支援セミナー」は起業を考えている人に対して創業の手続きやアイデア具体化のノウハウを勉強していただくものである。

  伝統産業は大きく繊維産業と非繊維産業の2つに分けられる。東京に開設した「京都館」により首都圏での伝統産業の情報受発信を行い,また,西陣織など業種別の支援,トータルな和装文化の支援等も行っている。連鎖倒産を防ぐためには,相談窓口を設け繊維産業向け融資等の事業を行っている。業界がまとめて取り組んでおられる事業への支援として市場開拓事業や産地宣伝事業,さらに新たな事業分野への展開として「染織デジタルアーカイブ事業」で伝統産業をIT革命の視点から再活用する事業を進めている。また,後継者育成ということで,染織試験場と工業試験場での技術者養成講座の開催,優れた技術者の顕彰,後継者の少ない職種への育英資金の支給等を行っている。なお,染織試験場の今日的役割を模索する中で,染織試験場を京都の繊維産業を活性化する拠点として整備していく計画を進めており,それに関するご意見もいただきたい。

 

市田委員

  これまでの取組ということだが,女性起業家支援などは今も続いているのか。また,支援した企業が成功したり失敗したりした例はあるのか。

 

産業観光局(西口局長)

  目利き委員会でAランク評価を受けた企業は融資などの支援を得て活躍している。第1回のAランク評価企業の中には京都市の廃油燃料化システムの構築に貢献した企業がある。女性起業家セミナーには毎年40人程度の参加があり,全員が起業されるわけではないが,参加者がグループをつくって情報交換されている。今のところ飛躍的に大きくなった企業はないが,女性ならではの創業を模索しておられる。

 

市田委員

  支援するかどうかは目利き委員会が決めているのか。

 

産業観光局(西口局長)

  目利き委員会にはアイデア段階の方や実際に仕事をしているなかで考えていることを広く発表したいという方から応募があり,事業化の可能性に応じてA,B,Cの3段階でランクづけしている。目利き委員会は公募であり,女性セミナーの参加者も創業段階で応募できる。

 

市田委員

  連鎖倒産を防ぐための支援の申し出は,どの程度あったのか。

 

産業観光局(西口局長)

  先日の大型倒産の際には,府市をはじめ政府系金融機関等も相談窓口を設けたが,相談数はそれほど多くはなく,比較的冷静に対応されているようだ。

 

堀場委員

  伝統産業の支援が繊維関連とそれ以外とで違う。繊維以外は技術や職人に対するサポートだが,繊維関連は流通に対するサポートが主となっていて,西陣や友禅の技術者にまで支援が行き届いているのかどうか疑問だ。産業は技術シーズが大事であり,技術者や職人をきちんと押さえておかないと,あるとき突然消滅してしまう可能性がある。業界全体をサポートするためにかなり膨大な資金が投入されているようだが,京都の誇る肝心な部分に対するサポートが少ないのではないか。流通は総合商社も含め将来的には消滅していくと思うので,中途半端にサポートしても将来投資にならない。手に職を持つ人を行政がサポートしないと,流通だけでは京都の繊維産業はもたない。そのあたりできちんとした姿勢を示す必要がある。

 

中村委員

  京都にはたくさんの技術があり,それによってつくられたもの自体の美しさが大事だ。基本になる技術やものの美しさをいちばんに考えてほしい。繊維でも西陣織の美しさを現在どのように楽しめるかを考えて,きもの以外への適用を提言できる人材とそれがつくれる人材が大事ではないか。また,それを世間に広めていく新しいシステムを考え出してほしい。

 

三谷委員

  いちばん大切なのは人材の問題だ。それに対して市がどのように考えているのか分からない。人材育成には年月がかかるが,小学校教育,中学校教育をもっと真剣に考えなければならないのではないか。また,女性の育成も考えなければならない。人材育成に真剣に取り組んでいただきたい。

  高度情報化の問題と関連して,私が住んでいる嵯峨鳥居本は大部分が難視地域で,共同アンテナを立て,月間400円を徴収して維持している。そんな地域が京都市内にある。京都市は発信ばかり考えていて,受信の側について考えていないのではないか。

 

吉田部会長

  難視地域問題は個別課題である。繊維産業は規模が大きいので,他の伝統産業とは異なるやり方が必要だが,どう対応しようとしているのか。

 

産業観光局(西口局長)

  伝統産業でも繊維とそれ以外では産業構造が違い,産業としての規模も違う。和装産業では市場拡大に力点がおかれていることは事実だ。現在染織試験場で通年の講座を開催しているが,和装産業でも技術者育成は大きな課題であり,人づくり,ものづくりの原点である生産者対策をしなければならない。他方で,着物を着る機会づくりや需要拡大にも力を入れなければならない。

  諸工芸については製造直売に近い産業構造であり,生産者対策で足りている。昭和42年から京都市は技術後継者の育英資金を出しているが,当初は集団教育のできるものは工業試験場と染織試験場で,それ以外の業種については事業主が新規従業員を雇うとき育英資金を支給するというように分けて支援していたが,現在はこの枠を取り払い,伝統産業の新規従事者に対して3年間育英資金を支給している。それでもなかなか新規従業者を確保できない。これも市場があれば産業として存続できるので,市場志向でいかに京都でつくられたものが消費者に届くかを考えなければならない。現在も修学旅行生にものづくりの体験をしてもらったりしているが,消費者教育がこれからの大きな課題であり,今後は消費者教育とそれに裏付けられた市場拡大,生産者対策が行政の課題と考えている。

 

吉田部会長

  技術者を確保して維持していこうとすると,産業をやめて工芸にしなければならないが,そこまで踏み切れるかどうか。かといってこのまま産業としてやっていても,規模が今の半分になれば全滅してしまう。残すことだけを考えるなら工芸にすればいいが,産業として残すのはたいへんだ。

 

中村委員

  需要面では西陣織や京都の反物に対する憧れは強い。長崎で祭りの参加者が全員揃いの京ちりめんを着ているのを見たが,そういう機会を捉えて地方にアピールしていくべきだ。きものを実際手に取るとほしくなる。昔は呉服屋が反物を持って家々をまわっていたが,消費者にものに身近に触れてもらう機会を増やすという意味では,いろいろな試みができるのではないか。

 

吉田部会長

  産業として残すのであればコストダウンしかないが,それができるのかどうか。

 

市田委員

  伝統産業の振興ということでいろいろ支援があるが,イベントに対する支援もしているのか。

 

産業観光局(西口局長)

  イベントに対しても支援している。「KIMONO開発事業」は,直接消費者の意向を聴きながらものづくりをしたいという若手生産者の意向を受けて,京都市としても予算をつけて支援している。

 

山上委員

  京都には伝統と革新の両面がある。2010年までの計画ということで,伝統についてはターゲットが分かりやすく,農業や伝統産業などについては具体的な計画が出てくるが,IT革命のこの先の10年についてはどういう計画をつくればいいか分からない。支援という形ではインフラ整備も重要だが,人材育成が中心になるのではないか。

 

吉田部会長

  ITについては京都だけが遅れる可能性がある。東京や大阪にはNTTが集中投資しているし,田舎には農村通信など公共事業でかなりの設備投資がされている。京都市のようなところが谷間になって最も遅れた地域になる可能性がある。

 

伊住委員

  京都市はいろいろな取組をしているが,知られていない。予算も限られており広く薄くなっている感は否めない。支援は必要だが,財政事情も良くない中で,行政としてどこまで支援をするのか。ハードをつくる発想は減ってはいるが,やはりハード先行でものができて,メンテナンス費が出ないため息切れしてしまうケースが目につく。無理にインフラやハード整備が必要なのか。ある程度絞って,行政がどこまで音頭取りをするのかはっきりしておかなければならない。行政も健全な財政に戻ってもらわなければならないので,間接的には行政も儲からなければならないという発想を持つべきだ。財政事情をかんがみて,ここにあがっている事業の支援の枠組みと対象を吟味する必要がある。

 

吉田部会長

  今は行政が呼び水的に支援しても民間が動かないので,結果としてばらまきになってしまう。

 

橋爪副部会長

  要望も含めて意見を3点,質問を1点申し上げたい。1つ目は,今回の基本構想では産業連関都市の構築がキーワードとして掲げられているが,その中身が明快に分かるような施策体系にすべきだ。従来の施策を再編成しながら,産業連関都市をつくっていくという方向性が目に見えるようにしなければならない。そのなかで薄く広くではなく「この10年間はここに重きを置く」というところが見えてくればいいのではないか。本日の資料にも支援やマッチングという言葉が出ているが,従来型の振興で補助金をつけるのではなく,マッチングや支援の概念をうまく取り入れながら産業連関都市を想定すべきではないか。それと関連して,NPOなどが中心となるコミュニティ・ビジネスのような,従来の枠に入りきらない産業を支援する考え方を目に見えるように打ち出してはどうか。本日の資料を見ると,製造業だけが産業連関都市の柱であるかのような書き方がされているが,商業や農業も含めて産業連関都市という概念が浸透していくような施策のあり方を考えるべきだ。

  2点目は南部地域の問題で,南北軸や新京都市という表現が際立っているが,伏見区の基本計画策定懇談会の座長としての立場からすると,すぐ東に伏見の市街や産業があることを忘れないでほしい。南北軸を中心とする「南と連携した新京都市」という表現も必要だが,西は乙訓や長岡,東は醍醐から山科,大津に抜ける東西の軸の考え方があって初めて格子状の都市構造になる。新京都市という言い方もいいが,それが新鳥羽,新伏見でもあるということを忘れないでほしい。

  3点目は「都市環境に調和した農林業の育成」について,今回の計画では農地と住宅地,工業地が混在している地域の課題の解決の方向性を明快に打ち出してほしい。「都市環境に調和した」という言い方ではなく,より積極的に農業と都市的なくらしがうまく混ざり合ったものにすべきではないか。

  最後に質問だが,まちづくり三法ができ,商店街振興とまちづくりは密接に関係があるという認識が広がりつつある。商業集積ガイドプランはどういうもので,どのような施策を提案するものなのか。

 

産業観光局(西口局長)

  6月1日から大型店の規制の枠組みが変わり,大型商業施設が都市計画法上の規制のないところには制約なく建てられるようになった。そこで京都市としての一定のルールが必要ということでつくったのが商業集積ガイドプランである。4月19日に公表して市民のご意見をいただき,6月1日付けで確定した。市内で商業施設等の新たな開発や用地の転用については1,000㎡以上,それ以外は1万㎡以上の開発をする場合に,構想段階で京都市に届け出,住民に説明し,合意を得なければならないということで,産業観光局ではスーパーを含む大型商業施設に対してガイドプランを示した。

  都心部は魅力的な都市商業施設の集積を図るため制限を設けないゾーンとし,私鉄駅などの地域拠点もそれに準じたガイドラインを設け,地域に合わせて規模を定めていく。また,大規模な工場跡地に巨大なスーパーができるのは京都として望ましくないということで,約2万㎡を基準として,地元と協議していただく。京都の商店街は地域コミュニティの核であり,地域住民の生活をより満足度の高いものにする,移動の負荷の少ない歩けるまちにするという京都市の基本的方針の中で,商業施設についてもそれに応じた対応を求めていくというのが骨子である。

 

吉田部会長

  結局中途半端な施策しかできない。左京区からは車で西大津にまで買物に行っている。拠点に大きなスーパーをつくっておかないと,市民は市外に買物に行くので地元商店街には何のプラスにもならない。

 

三谷委員

  島津の五条工場跡地に大型コンベンション施設をつくってはどうか。南部の交通が不便なところにではなく,人が集まりやすい便利なところに集客施設をつくるべきだ。

 

竹村委員

  新大宮や千本などの商店街はアーケードや歩道が整備され,きれいで歩きやすくなったが,反面活気がなくなったように感じる。中新道のようなごちゃごちゃしたところで,ソフト面で地元に応じた開発をしているところのほうが活気がある。

 

吉田部会長

  モータリゼーションの時代には距離は関係ないので,いくら商店街振興をしても売っているものがだめなら客は来ない。根本的なところを変えないと商店街は全滅してしまう。

 

内田委員

  風土の問題で,京都の企業には本社は京都に置いておきたいというところが多い。外に伸びていく企業に対して京都の市民は応援団になってくれるところがあるからではないか。

  京野菜がブームになっているが,京野菜は聖護院大根など京都市域にあった野菜なのに,最近は市内で生産できなくなって京都府下や滋賀県でつくられている。静岡県でつくり,東京圏で売ろうとする話も聞いている。京都府が京野菜を宣伝した結果全国的に知名度が高まってきたわけだが,京都市は遅れていて最近になってやっと京の旬野菜に取り組み始めた。なぜ市と府が一緒になってやらないのか。市だけでは全国を相手にできない。農業は最先端の技術を駆使した産業であると考えるべきだ。

 

産業観光局(西口局長)

  農林業対策は生産者対策がメインで,京の旬野菜はできるだけ環境負荷の少ないものをつくることで京都の農業の特徴づけをしようというものである。京の旬野菜には伝統野菜以外の野菜も含まれる。農業全体の振興ということでは販売促進などもっと広い取組や土地の生産性への視点も必要だと思う。

 

中村委員

  京の旬野菜については,京都で安心して食べられる食材であるとはっきり銘打っていただき,京料理と結び付けるのも1つの方法ではないか。

 

堀場委員

  京野菜はブランド登録しているのか。いくら投資しても他地域でつくれるのでは意味がない。ロイヤリティも含めて,登録証を出すなどのサポートをして権利を確保することが必要で,これは個々の農家では対応できない。

  京野菜の売上規模や企業の売上規模はどうなっているのか。他都市では売上規模と従業員数が大きければ格が上とされるが,京都の場合,小さなビジネスでも歴史と格があればいいと言われる。しかし,それだけではすまない時代だ。私の会社でも下請けを含めて協力会社の7~8割は京都にある。ある程度の規模の企業が伸びれば中小企業も必然的に伸び,技術レベルも国際的水準にまで上がっていく。大企業がやりやすいようにすることは悪いことではない。大きな企業が京都から出ていくのは京都市が大企業に対して冷たいからだ。元気な企業を京都にとどまらせるためには,資金の援助より,容積率の規制緩和などネガティブ要因を取り除く努力が必要だ。

 

吉田部会長

  ここまでの議論をまとめると,まずベンチャーの話があった。各地方自治体は熱心にベンチャー支援をしているがあまり効果はない。アメリカのベンチャー・キャピタリストの話を聴くと日本とは全然レベルが違う。日本にビジネスプランを書く習慣さえないのは致命的である。アメリカでは保育園をつくるだけでも事業予測をしてビジネスプランを書くのが当たり前だ。京都には多くの大学があり,基本構想の柱でもあるので,ベンチャー育成をコアにして計画をつくらなければならないが,具体的には京都高度技術研究所のプラットフォーム事業など,教育も含めた支援をしていく必要がある。

  伝統産業はこの1年間の倒産続きでずいぶん雰囲気が変わった。産業として残すかどうかは重要な決断をしなければならない。堀場委員のご意見にあったコアになる企業をどう引きとめるかについては真剣に考えていただきたい。

  ITのインフラの初期投資をだれがどれだけするか。京都は中途半端で公共投資もされていないし,民間もやりにくい。例えば岡山県のように行政通信を開放することも考えられる。地域教育も重要で,アメリカでもセンターをつくって情報化に対応する能力のギャップをつくらない努力をしている。小中学校にパソコンを入れるのは簡単ではないか。商店街は再編し商業センターを戦略的に配置していかざるをえない。巨大投資をするならメッセのようなものがいいのではないか。農業として積極的な政策をすべきというご意見もあった。

 

堀場委員

  勧業館はどういう経緯でああいうデザインになったのか。規模もインフラ整備も中途半端だ。大阪でやっている展示会を京都に持ってこようとしても,適当な規模の展示会場がない。京都には最初から一流の展示会をするチャンスがない。

  西大津のジャスコに行くと駐車場の4分の1は京都ナンバーの車が留まっている。周辺の商店はいったんはつぶれても,人が集まるようになるとまた店ができる。短期的に大規模店ができると地元商店がつぶれると考えられるが,人が来ないと結局つぶれるわけで,京都は四条通の地下街での失敗を反省して次の展開をすべきだ。

 

三谷委員

  宝ヶ池の国際会議場は,きわめて不便なところに建物をつくってあとから地下鉄を伸ばしたが,海外では集客を狙った施設はたいてい公共交通機関でアプローチできるところにある。島津の五条工場跡地等を利用するにしてもまず交通手段を考えなければならない。以前にセントルイスでは市役所の前に競技場があるという話をしたが,京都でもそういうことを考えるべきだ。京都から関空に行くのも不便だ。ヒースロー空港などは地下鉄でロンドン市内まで入れるが,施設をつくるときには交通手段を考えておかなければならない。

  ガウディのサグラダ・ファミリア教会などは建物の中に工場があるが,京都にも100年,200年かかっても計画を完成するくらいの意欲を持った人材が現れてほしい。

 

山上委員

  資料にはないが,教育産業もそのうち倒産が続くようになるのではないか。所管が違うのかもしれないが考慮してほしい。

 

橋爪副部会長

  いろんな面で京都が遅れており,今まで機会を逸してきているという自覚を持つことは大事だが,意気消沈するのでなく,遅れているからこそ最先端に立てる道を考えなければならない。コンベンション施設にしても大阪に対抗するのではなく,スケールメリットを追求したものではない別の質のものを考えることで前に出る戦略が必要だ。遅れているが故の戦略性を盛り込んでいただきたい。

 

市田委員

  支援をする場合は偏らず,どういう支援がいいのか十分検討していただきたい。ばらまきの支援だけはやめてほしい。

 

竹村委員

  将来に向けて,学校以外に子どもたちが音楽でも伝統産業でも何でもいいから自由に学べる場所が身近にあれば,そこから次の産業が生まれてくるのではないか。

 

吉田部会長

  教育・人づくり部会ではビジネス教育やIT教育についての議論はされていないようだが,京都でもサラリーマンの家庭が増えて商売人の家庭が減っているので,ビジネス教育が必要だ。

 

堀場委員

  子どものころから肌で感じていないと,大人になってからでは商売のセンスは身につかない。

 

(2) その他

吉田部会長

  本日のご意見は基本計画の素案づくりの中で生かしたい。

  次回は「文化」をテーマに6月12日の開催を予定している。橋爪副部会長からご質問のあった商業集積ガイドプランをご用意いただいたので,配布していただく。

  それでは,本日はこれで閉会したい。

 

 

3 閉 会

 

 

審議会(記録一覧)ページ

京都市の総合計画(資料編)のページ

関連コンテンツ

京都市の基本構想・基本計画(第1期) (資料編)

お問い合わせ先

京都市 総合企画局都市経営戦略室

電話:075-222-3030

ファックス:075-213-1066

フッターナビゲーション