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京都市の基本構想・基本計画(資料編)/グランドビジョン(新基本構想)素案

ページ番号35818

2001年2月1日

グランドビジョン(新基本構想)素案

 平成11(1999)年7月1日号の市民しんぶんに掲載した「グランドビジョン(新基本構想)素案」です。

 この素案に対してよせられた意見(パブリックコメント)は, [こちら]に公開しています。
(意見募集(パブリックコメント)の事業概要は,[こちら]をご覧下さい。)

 

 

前 文

 「京都市基本構想」は,平成37年(2025年)を目標年次とする25年間の京都の市政,ならびに市民のくらしとまちづくりの基本方針を描くものである。

 

第1章 京都がめざす都市の姿

1 文明の大きな転換期のなかで

 わたしたちが住む日本社会は,戦後の荒廃から立ち上がり「豊かな」社会,長寿社会を実現したが,世紀の変わり目を迎えて,経済成長率の低下や少子・高齢化など,社会のしくみに大きな転換を迫るような事態に直面している。
 とりわけ大量生産・大量消費・大量廃棄という近現代の都市文明のあり方に対して,わたしたちは,生活や産業による環境への負担をできるかぎり抑え,廃棄物の削減と環境の保全とに早急に取り組まねばならない。
 しかし,環境や人権など市民生活にかかわる問題は,一都市が単独で解決することが困難なものが多く,人類史的ともいえるこれらの課題に直面しているところに,これからのあるべき市政の姿を思い描くときのむずかしさがある。
 わたしたち京都市民は,これらの問題への十分な反省を踏まえ,21世紀社会の新しい価値観と,それにもとづく経済・文化・行政のしくみをつくっていくために,さまざまな知恵を絞り出していかなければならない。

 

2 京都市民の姿勢

 わたしたち京都市民は,これまで近代的な都市文明のあり方と無縁どころか,小学校や市電,琵琶湖疏水など,「京都策」と呼ばれる近代化政策に取り組んできたが,同時に,それとは別の生き方をも提示することのできる奥行きのある文化を形成してきた。また,京都は,戦災による破滅的な被害をまぬがれた数少ない大都市であり,近現代の価値観とは異なったものの感じ方や考え方が,いまもまちの懐でうごめいている。
 わたしたち京都市民は,その豊かな文化と歴史の蓄積によって,同時代の文明に対してさまざまの対案を示すことができるはずである。明治以降の近代化のなかで達成されたものと失われたもの,戦後の民主化と高度成長のなかで得たものと棄てられたもの,それを見分けうる知恵をそなえた市民でありつづけることを,わたしたちはめざしている。

 

3 京都市民の得意わざ

 わたしたち京都市民は,自治の伝統,自由で先駆的な気風,ものづくりの文化,もてなしの心や宗教的な癒(いや)しの文化など,1200年の歴史のなかで育んできた特性が,21世紀の世界の都市のあり方の基本になるべきものと考える。京都市民は,伝統をただ守りつづけてきたわけではなく,つねに全国に先駆けた施策を実行してきた。もっとも近年は,その先駆ける力が十分に発揮できておらず,都市の活性化にもつながっていない。それどころか,これを生かさなければ京都は行きづまるという,切迫した危機感さえある。
 長い時間をかけて培ってきた京都市民の特性を21世紀のくらしの基本として再生させるため,これらのものの感じ方や考え方のひとつひとつを京都市民の得意わざとしてもう一度洗いなおし,それらが未来に生かされるようあらゆる工夫をする必要がある。

 

4 21世紀にむけて新しい生き方を切り開くまち

 これらの得意わざは京都市民の資質のみにもとづくものではなく,京都を訪れ,そこに憩うひとびとや,京都で働き,学ぶひとびととの交わりやふれあいの中で培ってきたのである。都市に文化があるというのは,名所旧跡や文化遺産に恵まれているということだけではなく,内外のひとびととの交わりを積極的に推し進める機会やまちの雰囲気があるということである。ここで求められるのは,京都の地においてしか,あるいは京都を縁とするひとびとの結びつきのなかでしか生みだされないような優れた価値と文化を,このまちが創造しつづけることである。
 わたしたち京都市民は,これからの社会を支えうるべき新たな価値観を模索しながら,21世紀の安らぎと魅力に満ちた都市生活の新しい次元を切り開いていくよう努力する。


 

[→第1章に対してよせられた意見(パブリックコメント)は,こちら]

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第2章 市民のくらしとまちづくり

1 市民がくらすまちの姿

 わたしたち京都市民は,だれもがこの都市の住民として誇りと愛着をもって生活することのできるまち,だれもがこれからもずっとここに住みつづけたいと思えるようなまちづくりをめざす。

 (1) すべてのひとがいきいきと生きられるまち

  子どもも高齢者も,障害のあるひともないひとも,女性も男性も,すべてのひとびとが自分の居場所を確認し,自己の資質を十分に発揮しつつ,いきいきと活動できる場所と機会に恵まれたまち。

 (2) ひとりひとりが支え,支えられるまち

  支えを必要とするひとが別の場面で支える側にまわるというような,柔らかな相互扶助のつながりがこれからますます不可欠となっていくなかで,必要なときに支えを求めるその道筋がだれにも見えやすく整備されているまち。

 (3) 住むひとが美しいまち

  景観の美しさがあるだけではなく,歴史的風土や自然環境と調和した町並みの美しさと,そこに住むひとが満ち足りた顔をしている,ほんとうに美しいまち。

 

2 安らぎのあるくらし

 このようなまちの姿のもとで,わたしたち京都市民は,ひとりひとりが安心してくらせるような社会をめざす。それは,つつましやかだが満ち足りた生活がどのようなものかが目に見えるような社会である。

 (1) 人権の尊重

  市民のひとりひとりが,いかなる差別もなく,個人として厚く尊重されるような心づかいがきめ細かにいきわたっている社会をめざす。

 (2) 健康と福祉

  心身ともに健やかにくらせるように,だれもがいつでも適切な保健医療サービスを受けられるような体制を充実し,病に安心して対応できる社会をめざす。

 (3) 安全と環境保全

  日々のくらしの場が,災害からも,交通事故や犯罪からも安全であるための基礎的な条件が満たされているようなまちづくりをめざすとともに,自然との共生を図ってきた文化伝統を現代に生かしながら環境への負担の少ないまちづくりをめざす。

 

3 産業の振興

 京都がいきいきとした夢のある豊かなまちになるためには,産業経済が元気に息づいていなければならない。
 そのためには,ベンチャービジネスなど新しいいぶきに満ちた産業の担い手が活躍でき,安定した雇用が創出される場でなければならない。また,リサイクル社会やマルチメディア社会にも積極的に対応でき,しかも地域の企業をたがいにきめ細かく関連させていくような京都独自の産業システムを構築していく必要がある。
 とはいえ産業経済の振興は,環境に大きな負担をかけるようなものであってはならず,適正生産と循環経済への転換,新しい都市交通システムの構築,緑地や公園の確保,良質な住宅の供給などとも深くかかわるものであって,そのための基盤整備がぜひとも必要となる。
 これを京都全体として言えば,「保全」が望まれる三山や山麓部,「再生」が望まれる業務機能の集積した市街地,「創造」が望まれる新たな活力を担う南部とが,それぞれの独自性を生かしつつ,多様でかつ市全体としてまとまりのある都市環境を形成していくとともに,広域的な連携を図っていく。

 

4 市民文化の成熟

 市民文化の成熟は,住民ひとりひとりの幸福が「人間の尊厳」に深くかかわり,物質的なレベルから精神的なレベルまで,社会的なものから芸術的なものまで中身が豊かで,その具体的なイメージが濃(こま)やかで多様である社会ではじめて可能となる。
 そのため,有形無形の文化財や創造性の高い大学・学術研究機関,優れた技術力を蓄積してきた企業群,市民の美的感覚やくらしの知恵など,あらゆる文化資源のあいだで活発な交流を起こし,それらをいままで以上に生かしていく必要がある。
 このような市民文化の成熟に対して,情報通信ネットワークのはたす役割は大きく,マルチメディア時代にふさわしい都市づくりに取り組むことがつよく求められる。
 また,まちづくりを主体的に担っていくようなひとづくりが不可欠である。とりわけ,本物を見抜く批評眼(「めきき」の文化),ものづくりの精密な技巧(「たくみ」の文化),他人を温かく迎える心(「もてなし」の文化),創造性のある学習機会(「きわめ」の文化),冒険的な精神(「こころみ」の文化)など,京都市民が時間をかけて培ってきた卓越した能力を産業,経済,教育,文化など市民生活のあらゆる場面で,次の時代に向けて磨きあげていくことができる人物の育成が課題となる。
 こうした成熟社会を京都に実現しようという気概が市民ひとりひとりに浸透したとき,そして私的利害のせめぎあう空間ではなく公共精神の息づいた空間をつくりあげていく力をそこに住むひとびとが十分に身につけたとき,この都市にほんとうの気品が生まれる。

 

 

[→第2章に対してよせられた意見(パブリックコメント)は,こちら]

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第3章 市民がつくる京都のまち

 このような市民のくらしとまちづくりは,行政の努力とともに市民の積極的な参加があってはじめて可能になる。市政への市民のこうした参加は行政との厚い信頼関係のなかで実現されるものであり,わたしたちは市民としてどういう場面で,何をしたらいいのかを正しく把握するとともに,参加のしくみや手法を具体的に整えていかなければならない。

1 市民と行政の協力

 わたしたち市民は市政の主役であり,市民みずからが選択したことがらは確実に実施されねばならない。その基本となるのは議会制民主主義であり,わたしたち市民は市会をとおして市政に参加していくことになる。他方でまた,市民は市長を選び,選ばれた市長は明確な市政推進の方針のもと,実行力を発揮しなければならない。
 地方分権の流れのなかで,市政の重みは増していくが,人口構造の変化等に伴う担税力の低下とあいまって,国からの税財源の移譲が進まないと,市の財政はこれまで以上に厳しい制約を受けることになる。そうした制約を行政サービスの制限というかたちでではなく乗り越えるためには,市民の積極的な協力と分担が不可欠となる。
 市民に協力と分担を求めることは,行政責任の一部を市民に移行するということではなく,行政が市民の意見をきめ細かに吸収し,さらに市民の主体的な参加を得ながら事業をおこなっていくということである。市政の負担をともにみずからも引き受けるという市民の自覚なしに市政参加はありえないし,またそれを支える行政の努力こそが市民生活における信頼や安心につながるといえる。

 

2 市政への参加のしくみ

 市民と行政が,ともに積極的な意思と責任をもって都市運営を担うためには,従来の学区や自治会だけでなく,自発的活動によって組織されたさまざまのネットワークによる市民参加の芽を,行政と対等な立場のなかでの協力関係へと培っていく必要がある。
 市民と行政が対話しつつ政策決定していくために,政策の立案・実施・評価の全段階で,市民と行政がともに責任のある主体として協力しあっていけるしくみを創(つく)りだしていく。
 外国人や長期滞在者まで含めてこのまちに住むひとの意見を十分にきくことや,審議会における公募委員の導入,ワークショップの実施,地域ごとの課題に応じたさまざまな規模のきめ細かな参加など,多様な方式が編みだされねばならないだろう。

 

3 市政参加の先進都市へむけて

 わたしたち市民は,住民としてさまざまの負担と責任を負うが,どんなささいなことでもよいから,ひとりの市民として自分に何ができるか,それを問うことからはじめよう。
 行政は,そうした市民の責任ある行動の実現のために,市民の意見や提案をより客観的な視点から整理・評価し,それらを具体的な政策としてまとめ,実行していく責任がある。
 京都市は,市政参加の先進都市として,それにふさわしい市政参加のしくみとかたちを整えていく。そしてこの基本構想に示されたような都市の姿と,市民のくらしとまちづくりとを,わたしたち市民が行政との厚い信頼関係のもとで実現していくことが,21世紀の京都が進むべき道すじである。


 

[→第3章に対してよせられた意見(パブリックコメント)は,こちら]

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