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市長記者会見(2007年1月30日)

ページ番号13986

2013年6月7日

平成19年1月30日桝本市長臨時記者会見資料

 

 本日は,50年後100年後の京都のまちづくりを見据えた「新しい景観政策」について,今日までにいただいた市民の皆様の貴重なご意見や市会でのご議論を十分に踏まえた今後の対応方針をご報告させていただきます。

 京都市では,昨年11月,「新しい景観政策」の素案を発表し,約1ヶ月間にわたるパブリックコメントの募集を行いました。閲覧会場には,1300人を超える皆様にお越しいただき,60回余の説明会等を通じて,延べ1410件に及ぶさまざまな角度からの市民意見を頂戴いたしました。また,市会をはじめ,市民団体や各種業界さらには全国各地からも多くのご意見やご提言などをいただきました。改めて皆様の関心の高さを実感するとともに,貴重なご意見をいただきましたことに,深く感謝申し上げます。
 市民の皆様からいただきました主なご指摘を類型別に紹介いたしますと,総論としては,「速やかな実現を望む」「新しい規制が後退しないように」といった多くのご意見をいただく一方,「もっと時間をかけて論議すべきである」「規制により都市の活力や資産価値が低下する」などのご意見もいただいております。また,高さ規制については,既存不適格のマンションの建て替えを懸念する声が寄せられました。
 デザイン基準につきましては「画一的,細かすぎる」「狭小な敷地にはなじまない」「植栽基準などの規制が厳しすぎる」などの意見とともに多くのご提言も頂戴し,屋外広告物では,「屋上広告物の全面禁止など厳しすぎる」「違反広告物が多い」とのご意見などがございました。

 さて,京都市では昭和5年の風致地区の指定以来,全国をリードする京都の景観保全に取り組んでまいりましたが,その姿は大きく変容し,今日なお,しのびよる破壊に歯止めがかからず,最近でも俵屋,青蓮院,船岡山周辺におけるマンション建設が大きな社会問題となったことは皆様ご承知のとおりでございます。
 私は,その都度,時には法令の枠組みを超えて個別に厳しく対処し,また歴史的な町並みの保全を可能とする防火条例や都市の緑地を残すための斜面地条例など,景観を守るための本市独自の制度や仕組みを創設してまいりました。
 今回の政策は,こうした長い積み重ねの上に立って,更に1年4か月にも及ぶ審議会でのご審議を受けて発表したものであり,私自身も昨年4月,審議会からの中間とりまとめを受けて,高さ規制などの基本方針をお示ししたところでございます。新たな景観政策の実施を先に延ばせば,京都のまちは取り返しのつかない事態に陥るとの認識は,今も変わりがなく,私は是非ともやりぬく決意でございます。
 また,都市のアイデンティティの確立は激化する都市間競争を勝ち抜く大きな要素であります。日本の文化首都である京都にとって,優れた景観はむしろ京都の都市格,言い換えれば京都ブランドに一層の磨きをかけ,都市の活力や魅力を向上させ,ひいては不動産の価格形成にも良い影響を及ぼすと考えており,市民の皆様にもご理解を賜りたいと存じます。
 一方,デザイン基準などに関する具体的な見直しや代案のご意見につきましては,市民とのパートナーシップの原点に立ち,実際にお住まいになっている市民の皆様のお声を十分に尊重して,「緑化基準」や「ケラバに関する取扱い」など,現時点で大きく8項目の規制策の見直しを行うことと致しました。また,併せて必要な支援措置を19年度新予算に盛り込んでまいります。
 私は,こうした一部の規制策の見直しと支援措置を含めた新しい景観政策を「総合的な政策パッケージ」として,来る2月13日に告示される2月定例市会にご提案し,ご審議を賜る所存でございます。そして議会で条例案のご可決をいただきました後に京都市都市計画審議会に諮り,ご承認をいただたきたいと考えております。
 それではお手元の資料に基づいて主な具体例をご紹介いたします。なお,詳細は後ほど都市計画局からレクチャーを致しますのでよろしくお願いします。

 まず,今回の高さ規制につきましては,直ちに既存のマンションなどに適用されるものではなく,むしろ時間をかけて緩やかに優れた景観を形成しようとするものであります。従って,引き続き住まわれることも改修も可能でありますが,マンションに住んでおられる皆様の不安を解消すると同時に,優れた景観の誘導を積極的に図っていくため,建て替え時の合意形成を円滑に行うための専門アドバイザーの派遣や市場金利より低利の融資制度などの支援措置を京都市独自で創設し,平成19年度予算に盛り込んでまいります。
 また素案に掲げていますように景観の向上に貢献する建築物については高さ規制の特例を認めてまいります。

 次に,デザイン基準につきましては,現実の京都の宅地状況を踏まえ,歴史的な都市景観の保存再生を市民の皆様のご理解を得てスムーズに図るという視点に立ち市民や事業者の皆様のご意見は柔軟に取り入れ,必要な修正を行ってまいります。
 また,デザイン基準は各地区の特性に応じた統一性と明確さが求められますが,他方その中で個性の発揮できる柔軟性と裁量性も持たせることが重要であります。そのため,実際の審査過程を通じて優良な提案は取り入れていくという「進化する,成長するデザイン基準」を目指し,そのために必要な審査体制の充実と関係職員の資質の向上についても併せて積極的に取り組んでまいります。

 最後に,屋外広告物は都市の景観を形成する大変重要な要素であると確信しておりますが,京都市の現在の厳しい基準をすり抜けるいわゆる違反看板が後を絶たないのも現実であります。正直者が不利益を被らないためにも,私は新しい景観政策が施行されるまでに違反看板の一斉取締りに集中的に取り組むとともに,今回の新しい基準に積極的に賛同しようという広告主を増やしていくために,最長6年の経過措置が切れるまでに新基準に適合する改修計画書が提出された場合は,新たに,1年の宥恕期間を設けることと致します。
また,景観に優れた屋外広告物への助成制度や表彰制度を平成19年度から創設し,広告業者の皆様の後押しも積極的に行ってまいります。
 欧米など諸外国の例を見ましても,かつてまちに溢れた醜悪な看板は規制と事業者の努力によって一掃され,今や優れた都市景観を形成する都市が多く見られます。
 今回の政策により,多くの方から京都の景観を台無しにしているとご批判をいただいてきた繁華街などの景観の状況を事業者の皆様とともに改善し,日本の屋外広告物政策に先鞭をつけてまいりたいと考えております。

 以上,素案に対する一部見直しと支援措置についてご説明申し上げましたが,さらに2月市会の提案までに市民の皆様の貴重なご意見をしっかりと精査し,取り入れるべきものは取り入れてまいります。また,デザイン基準などについては,将来に向かって成長させていくことが必要であり,条例案には,施行後も必要な見直しが行える「見直し条項」を盛り込んでいきたいと考えております。
京都の景観は公共の財産,すなわち京都市民ひいては国民の共通の財産であります。しかし,この財産はしのびよる破壊によって「待ったなし」の状況に置かれております。改めまして市民の皆様にご理解,ご協力をお願いし,併せて,市会のご議論を踏まえ,「平成の一大事業」ともいうべき新たな景観政策に不退転の決意で取り組むことをお誓いいたします。

 

 私からは,以上でございます。

 

(参考資料)

 

平成19年1月30日
京都市


新景観政策案に対する市民意見等を踏まえた京都市の考え方及び対応方針
 昨年11月27日から12月28日までの間,「新たな景観政策(素案)」に対する市民意見(パブリックコメント)の募集を実施したところ,約1箇月の募集期間中に576通の意見書,延べ1,410件に及ぶ貴重な御意見をお寄せいただきました。
 これらの御意見につきましては,一つ一つ丁寧に精査してまいりましたが,この度,その主な御意見を踏まえた京都市の考え方及び対応方針を,下記のとおり取りまとめました。
 今後,これらをホームページ,市民しんぶんをはじめ様々な機会を通じて市民の皆様にお知らせしていくとともに,お寄せいただいた御意見をさらに精査し,現在準備を進めている条例案や都市計画案などに取り入れるべきものは取り入れ,2月市会に提案して御審議いただき,その後,京都市都市計画審議会等に御諮りしてまいります。

(参考)ご意見の分野別総数

ご意見の分野別総数
分野意見数割合(%)
1 総論39427.9
2 高さ36926.2
3 美観地区等21715.4
4 風致地区等352.5
5 屋外広告物29821.1
6 眺望景観221.6
7 その他755.3
合計1410100.0

 

1 高さ規制に関すること

【主な意見1】
◇高さ規制を強化すると資産価値や都市の活力が低下する

(1)基本的な考え方

ア)わが国は,それぞれの都市がその個性を発揮し,都市としての魅力を競い合う本格的な都市間競争の時代を迎えようとしています。今回,京都市がご提案している景観政策案(以下「新景観政策案」という。)は,1200年の悠久の歴史の中で育まれてきた京都の伝統・文化を表象する優れた景観を,「忍び寄る破壊」からしっかり保全・再生し,わが国を代表する「京都ブランド」をより確固たるものにしてゆくために,どうしても今講じなければならない政策です。

イ)規制を強化することは,市民の皆様に一時的に痛みを伴うことがあることは十分承知していますが,京都の景観を保全,再生することで都市の品格と魅力の向上という新たな付加価値が生まれるとともに,都市活力や居住環境の一層の向上にもつながり,そのことが,ひいては個人の資産価値にも反映されていくものと考えていますので,是非とも市民の皆様のご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

【主な意見2】
◇新しい基準に適合しない既存の建物は,建替ができなくなる


(1)基本的な考え方

新景観政策案による新たな高さの基準は,直ちに既存のマンションに適用されるものではありませんので,住み続けていただくことはもとより,修繕やバリアフリー化・耐震化のための改修工事も可能です。また,新たな高さの基準を超えているマンション等が全て建替えできなくなるというものではなく,当該敷地の建ぺい率,容積率,前面道路幅員の他,敷地の規模,形態,或いはいつ建築されたのかによって個別に見極める必要があります。

(2)対応方針

良好な景観形成等のために建て替えを計画されている方に対しては建て替えのための合意形成に困難なことも生じることが予想されることに鑑み,円滑な建て替えを図るうえで必要と考えられる,専門家の派遣による相談体制や工事費に対する低利融資制度の支援策を平成19年度予算に盛り込んでまいります。

1)アドバイザー派遣制度の創設
分譲マンションにお住まいの方からの要請に応じて,建替えに向けての法制度,建設費,建築計画等に関する専門家をアドバイザーとして派遣

2)建替えに係る低利融資制度の創設
建替えに必要な資金を通常より低い金利(平成19年1月30日現在 0.9パーセント)でお貸しできる新融資制度

3)分譲マンションの建替え工事費等の助成に関する制度の創設
※今後,具体的な事例が出てきた場合に,更に建替え工事費(共用部分等を対象)等に対する助成制度の創設も必要と考えております。

これらを有効にご活用いただき,円滑な建替えが進むよう京都市も支援してまいります。
また,新景観政策案の中に高さに関する特例許可制度を創設することにしており,良好な景観を形成するための建替えや地震などにより被災した場合の建替えでもこの制度を活用することができます。

【主な意見3】
◇財産権の侵害であり,損失補償が必要ではないか

基本的な考え方

今回の高さ規制は,市民の皆さんの共有の財産である京都の景観を守るために都市計画として定めるものであり,財産権に含まれる社会的な制約として,補償の対象にはならないと考えています。
一般に,財産権は,必ずしも自由に行使できるものではなく,調和のある共同生活を営む上において,社会的な制約がその権利の中に含まれているとされており,その財産が使用できなくなるなど,極端な財産権の制限でない限り,財産権に制約が課せられることに対して,補償の対象にはならないとされています。

【主な意見4】
◇高さの例外許可制度を設けるべきではない

基本的な考え方

高さの例外許可制度については,安易な運用は厳に慎まなければなりません。しかし,画一的な基準の運用のみでは,地震などにより被災した場合の建替えに支障を来たしたり,地域や都市の景観の向上に貢献する優れた計画を誘導できない場合,市民生活や都市の発展に必要な施設の整備に支障を来たす場合も生じます。
地域や都市の景観に十分配慮しながら、一定の弾力的な運用を行うことにより,優良な建築物を誘導し,良好な市街地の形成が可能になるものと考えています。
今回,高さの例外許可制度(景観誘導型許可制度)を創設しようとするのは,このような理由によるものです。
なお,この許可制度の運用に当たりましては,公平性,透明性の確保を図るため,周辺住民に対する計画の説明や意見聴取,第三者機関による審査などの仕組を設けてまいります。


2 (広義の)デザイン規制に関すること

【総括的な意見】
◇設計上の創意工夫が活かせないような硬直的で細かすぎる基準とすべきでない
◇大まかな基準の決定を行い,詳細なデザイン基準は設計事務所等も入れ,行政内部で十分検討してはどうか。協力していきたい。

(1)基本的な考え方

ア)新景観政策案における,建ぺい率の強化等を含む広義のデザイン基準は,各地区のそれぞれの景観特性を発揮しながら,一定の統一性をもった良好な町並み景観を形成する上で極めて重要なものです。

イ)これまで,本市の風致地区や美観地区で採用されてきたデザイン基準の実績等を検証することで,地区の景観特性に応じた,一定の統一性と明確さを持つデザイン基準を定め,かつ,優れた建築物を設計するための創意工夫を可能とする柔軟性を備えた基準とすることを考えています。

ウ)これにより,例えば,各地域の皆さんが協働して創意工夫を活かした独自の基準の追加を京都市に提案いただくことも可能となります。

(2)対応方針

1)例外の許容
地区別基準を大括りするとともに,各地区の共通事項に定めている基準を最小限のものとし,数値を記入できるものは記入したうえで,「原則として」という用語を挿入して運用に一定の幅を持たせるとともに,景観地区計画書の中に設計の創意工夫を可能とする特例措置を組み込むことにより優良な提案にも対応できる制度にします。

2)成長するデザイン基準
また,審査実務の中で得られた優良な提案や地区からの提案を,デザイン基準の中に随時取り入れ,基準の充実を図っていく,いわば「成長するデザイン基準」とし,併せて審査体制の充実と職員の資質の向上を図ってまいります。

【具体的な意見の例1】
◇幹線道路沿道に面した建築物の,道路境界からの1メートル壁面後退と,1・2階部分の3メートルの壁面後退は厳しすぎる

(1)基本的な考え方

一般に,狭い歩道空間の道路の境界ぎりぎりに建築された場合,特に人の往来の多い繁華街の店舗等については,にぎわいの創出や円滑な人の流れを確保するうえでも,配慮が必要と考えています。現在においても,建築基準条例によって,物品販売業を営む店舗などのように不特定多数の人が利用する一定規模以上の建築物については,「前面空地」の設置が要求されております。

(2)対応方針

○壁面後退を景観計画の中で努力義務化
幹線道路の道路境界からの壁面後退の規制については,できるだけ壁面後退するべきである旨を,景観計画の中に努力義務として定めます。

【具体的な意見の例2】
◇「300平方メートル以上の敷地で空き地の50パーセント以上,300平方メートル未満の敷地で空地の30パーセント以上」とする美観地区等の緑化基準が厳しすぎる

(1)基本的な考え方

都市の緑化は,優れた町並み景観の形成だけでなく,潤いのある都市環境と安らぎのある暮らしのために極めて重要です。建築等の工事と併せて,「緑」を増やしていく建築主一人ひとりの努力と協力が大きな効果を生み,町並み全体の品格の向上にもつながるものであり,このため一定の基準は必要と考えています。

(2)対応方針

1)緑化基準の見直しと地区の限定
緑化規定を設ける地区を,美観地区の山裾や水辺等の自然との関わりが大きい山麓型地区と岸辺型地区とし,基準についても,一定規模以上の敷地に対して道路側,河川側等への中木,高木の植樹を求める基準とします。
2)その他の地域の緑化
上記の1)以外の地域については,できる限り空地について緑化するべきである旨を,景観計画の基本方針の中に努力義務として定めます。

【具体的な意見の例3】
◇ケラバの出を30センチメートル以上とると,間口4メートルの敷地では,間口3.6メートルの家が建てられない
 (注)ケラバ:切妻勾配屋根の妻側の屋根の端部をいい,傍軒(そばのき)ともいいます。

(1)基本的な考え方

ア)三方を低くなだらかな山並みに囲まれた自然との共生の中で,1200年の歴史を積み重ねてきた京都においては,日本の建築文化を代表する京町家等の木造建築物や,それらの伝統的建築物によって形成されてきた歴史的町並みがまだ多く残っており,その和風屋根の風情が歴史都市・京都の景観の大切な要素となっています。
盆地の中に形成された都市である京都は,上から美しい町並みを眺める視点も多く,このような京都において建築される建築物については,歴史的風情と調和した屋根の景観の形成も重要な課題です。

イ)今回,ケラバについての基準を定めているのは,山裾や水辺など,自然との関わりの深い地区等としており,西陣や職住共存地区等,軒を連ねて建ち並ぶ歴史的な通り景観を有する地区においては,特に定めていません。

(2)対応方針

○ケラバを規制する地区における例外の許容
新景観政策案は,地区をその特性ごとにきめ細かく区分し,それぞれの地区に相応しいデザイン基準を定めることとしています。ケラバについては和風の屋根の基本ではありますが,特にケラバの数値を定めるのは,山麓型や岸辺型美観地区等とし,「原則として」という用語を挿入することにより,例外(狭小な宅地の建替え等)を認めることとします。

【具体的な意見の例4】
◇公共用空き地に面して,1階2階の壁面より3階の壁面を90センチメートル以上後退することが義務付けられているため,以前より家が小さくなる

(1)基本的な考え方

ア)歴史的市街地及び河川沿いは,2階建ての伝統的な京町家が軒を連ねるなど,風情ある町並みを形成しており,この町並み景観が京都らしい風情を醸し出している重要な要素となっています。この風情を継承するため,新たな建築活動においても周辺の町並みと協調した計画が大切となります。

イ)また,歴史的市街地外においても,自然景観や周辺の低層建築物との形態上の調和を図ることにより,良好な町並み景観を形成することが大切です。

(2)対応方針

○例外の許容
歴史的市街地及び河川沿いにおいては,京町家の建ち並ぶ町並み景観等との調和を図るため,3階以上の壁面の後退規定を定めておりますが,既に新景観政策案の中に,建築物の規模,用途,構造等によって壁面の後退が困難な場合に,周辺の景観,環境の向上に資すると認められるものについての特例の措置を設けていますが,新たに既存の敷地の形状等において止むを得ないと認められる場合,例外措置も定めます。
また,歴史的市街地外の郊外に建つ建築物については,周辺への威圧感の低減を図るため,一定の配慮を求めることとします。

【具体的な意見の例5】
◇開放された駐車スペースに門扉が必要な基準になっている。狭小敷地には無理な基準である

(1)基本的な考え方

ア)京町家等の建ち並ぶ町並み景観は,道路に面した軒や外壁面が揃っていることが大切な要素になっています。建築物の前面に駐車スペース等の空地ができると,町並みの連続性が途切れ,歴史的風情が損なわれることがあり,このような場合に,屋根付き門扉等の設置により町並みの連続性を保つことも京都の歴史的町並みを守るための有効な手法です。

イ)また,山裾や水辺に面した敷地においても,道路に面した空地部分に塀や生垣を配することにより,良好な通り景観を形成するための有効な手法です。

(2)対応方針

○例外の許容
門扉等を設置することの例外(狭小な宅地の建替え等)を認めることとします。

【具体的な意見の例6】
◇風致地区として拡大した地区等の基準の適用に当たり,壁面線の後退などについて,狭小敷地への配慮がほしい。

(1)基本的な考え方

ア)世界遺産周辺等の良好な風趣と住環境の保全のため,これまでの実績に鑑みれば風致地区の拡大は必要で有効な取組です。

イ)また,従来から,基準の施行日以前から存在している既存の敷地等については,狭小などの理由により新たな基準に適合させることが困難と認められるような場合において,例えば,壁面後退規制に関する緩和などの「特例的な救済措置」を行っていましたが,その仕組については,今回変更していないので従来と同様です。

(2)対応方針

○各基準の組合せの見直し
今回拡大しようとする地域については,その拡大の目的に応じて,風致地区における高さや建ぺい率,緑地率等の各基準の適切な組合せを行っていくこととします。
具体的には,例えば,世界遺産周辺において風致地区を拡大した地域については,主に,世界遺産の境内等からの眺めと,世界遺産周辺の風情との調和を目的としたものであることから,建ぺい率,緑地率などについて定めないこととします。


3 屋外広告物規制について

【具体的な意見の例1】
◇屋上屋外広告物の全市での禁止は厳しすぎる
◇商店街の活力がなくなる
◇経過措置の期間をもっとほしい

(1)基本的な考え方

ア)屋外広告物は,都市の良好な景観形成に大きな影響を与える重要な要素です。良好な屋上景観を創出し,優良な屋外広告物による美しい品格のある都市景観を形成していくことは,京都の魅力の向上と付加価値を高めるうえでどうしても必要であり,ひいては都市の活力の増大につながるものです。

イ)広告物も「量から質」の時代と言われています。また,誰の目にも入ってしまう広告には公共的責任があるとも言われています。規制と事業者の努力によって美しい景観を創出させ都市の活力を生み出してきた欧米の先進的な都市の例に見習い,今こそ,歴史都市・京都の地から美しい景観形成へのイニシアチブを取る屋外広告物を発信していく必要があると考えています。

ウ)また,屋外広告物は,そこに表示されている情報を発信するだけでなく,屋外広告物自体も一つの景観として発信するものです。優良な屋外広告物は,その看板自体も人の目と心を和ませ,より鮮明に情報を伝えることができることになります。

(2)対応方針

○経過措置に関する新たな仕組の導入
できるだけ早く,新たな基準に適合する屋外広告物に切り替わっていくことによって,繁華街等の景観の状況が改善され,京都の都市景観は見違えるようになると考えています。屋外広告物は,それだけの影響力を持っているものであり,一律に経過措置の期間を延長することは適当ではありませんが,一定期間内にすべての屋外広告物を新しい基準に適合させていくために,経過措置に関する新たな仕組を導入することとします。
具体的には,屋外広告物については,すべて新景観政策の施行後に行われる更新のうち一回だけは従来の基準による許可を受けることができることとしていますので,屋上屋外広告物も含め,現在の基準に適合するものは,新たな基準の施行前直近の許可の時期によって,新たな基準の施行後,3年超から6年までの範囲で従来の基準に基づく存続が可能です。加えて,その許可の期限が到来するまでに,改善時期等を明確にした改善計画書が提出された場合については,すべての屋外広告物について,新たな基準の施行日から7年を限度として,その改善の履行を見守る,いわば宥恕期間を設けることとします。


【具体的な意見の例2】
◇基本的には賛成であるが,繁華街については,賑わいの創出の観点から規則にメリハリを付けてはどうか

(1)基本的な考え方

屋外広告物は,都市の品格を決定する重要な要素の一つですから,建築物のデザインとも調和した屋外広告物の基準の強化が必要です。

(2)対応方針

○表示率の見直し
今回の基準では,建築物と屋外広告物との関係をより密接に検討するため,建築物の壁面の面積に対する屋外広告物の面積の割合(表示率)を,きめ細かく定めるとともに,壁面への配置のバランスに関する基準も定めました。しかしながら,商業地域においては,屋外広告物とまちの賑わいとの関係が重要であると考えていますので,四条通,河原町通などの繁華街において,その地域特性を配慮して屋外広告物の表示率を見直すこととします。

【具体的な意見の例3】
◇市内全域で点滅式屋外広告物を禁止するのは厳しすぎるのではないか。町が暗く寂しくなるのではないか

(1)基本的な考え方

点滅式照明や回転灯などの可動式照明は,刺激的で強い印象を与え,景観に対して悪影響を及ぼすこと,また,警告や注意を促すための点滅式照明や可動式照明と混同する恐れがあるので禁止しようとするものです。
なお,点滅しない照明を使用した一般の屋外広告物はもちろん,点滅しないネオンサイン,電光ニュース板等の可変表示式屋外広告物は,禁止するものではありません。また,建物の装飾のための照明やイルミネーションなどは屋外広告物ではなく,対象外です。

【具体的な意見の例4】
◇違反広告物の多い実績に鑑みると,規制が厳しくなれば広告主は違反業者に仕事を発注し,正直者に仕事がこないことになる

(1)基本的な考え方

京都の優れた景観を保全,再生していくためには,行政はもちろん,市民,事業者がそれぞれの立場で京都の都市格の向上のために努力していただく必要があります。本来,「違反」は許されるものではなく,行政としては,違反の撲滅に一層強力かつ重点的に取り組んでまいります。

(2)対応方針

○違反対策の強化
新景観政策の実施に併せて,違反広告物や違反広告主等に対する指導を強化してまいります。特に施行日までの期間に重点的かつ強力に取り組んでまいります。
具体的には,悪質な違反に対して,告発,代執行も視野に入れた強力な取組を集中的に実施します。

【具体的な意見の例5】
◇景観に調和した優良な屋外広告物であれば,規制に合わなくても許可すればよいのではないか
◇京都の景観にマッチした広告物のコンテストを開いてはどうか

(1)基本的な考え方

屋外広告物は,都市の良好な景観形成に大きな影響を与える重要な要素であり,新景観政策案においては,規制強化,違反指導の強化と併せて,優良な屋外広告物の誘導の3つの施策を一体的に行うことにより,京都の優れた景観の保全,創出を図ろうとするものです。
そのため,新景観政策案においては,次の2つの誘導施策を提案しています。

*優良屋外広告物表彰制度
既設の優良な屋外広告物を表彰し,許可期間の延長などの誘導策を導入します。

*優良屋外広告物特例許可制度
基準に適合しないものであっても,意匠が優良な屋外広告物で,良好な景観の形成に寄与するものについては,審議会に付議し,例外的に許可する制度を創設します。

(2)対応方針

○優良屋外広告物デザイン助成事業の創設
平成19年度予算に,商店街や一定のまとまった地域等が景観に配慮した優良なデザインの屋外広告物を設置するために要する調査費や製作費等の一部を助成する制度を盛り込みます。


<参考>

 

「19年度予算に盛り込む新たな景観政策に伴う主な支援・誘導措置の概要」及び
「デザイン基準等の主な見直し項目」

1 既存建築物の円滑な建替え等を促進するための支援・誘導措置

1)分譲マンション建替え・大規模修繕アドバイザー派遣制度の創設
(本市独自制度として創設)400万円

目的:マンション建替えや大規模修繕の合意形成を促進する。
措置:分譲マンションの管理組合に対して合意形成の方法,建替えや大規模修繕の進め方について助言を行う専門家を派遣するなど,相談体制の拡充を図る。
  
2)景観形成マンション建替支援融資の創設
(本市独自制度として創設)融資額5億6000万円(本市預託額4億5000万円)

目的:既存不適格マンションの円滑な建替えと優れた景観の形成を促進する。
措置:分譲マンションの建替えに要する費用について,1戸あたり700万円を限度額として,住宅金融公庫(19年4月から住宅金融支援機構)の継足し融資を低利で行う。

3)分譲マンションの建替え工事費等の助成に関する制度の創設
(予算措置は具体的な事例に応じて)

目的:既存不適格マンションの円滑な建替えと優れた景観の形成を促進する。
措置:建替え工事費(共用部分を対象)等に対する助成を行う。


2 優れた都市景観の形成と都市の活力との調和を図るための支援・誘導措置
【屋外広告物に対する措置】
優良な屋外広告物の誘導措置の創設
(本市独自制度として創設)1200万円

目的:優良な屋外広告物を誘導することにより,良好な都市景観の形成を図る。
措置:優良屋外広告物デザイン助成事業の創設
平成19年度予算に,商店街や一定のまとまった地域等が景観に配慮した優良なデザインの屋外広告物を設置するために要する調査費や製作費等の一部を助成する制度を盛り込む。
<以下は,新景観政策案において打ち出し済みの措置>
*優良屋外広告物表彰制度
既設の優良な屋外広告物を表彰し,許可機関の延長などの誘導策を導入する。
*優良屋外広告物特例許可制度
基準に適合しないものであっても,意匠が優良な屋外広告物で,良好な景観の形成に寄与するものについては,審議会に付議し,例外的に許可する制度を創設する。


3 デザイン基準等の主な見直し項目(8項目)
○緑化基準の見直し
○ケラバに関する取扱い
○既存の狭小敷地における壁面後退の例外許容
○沿道型美観地区等における壁面後退の見直し
○狭小敷地における駐車スペースの門扉設置の例外許容
○風致地区における狭小敷地への配慮
○屋外広告物規制の経過措置(宥恕期間)
○屋外広告物表示率の見直し

お問い合わせ先

京都市 総合企画局市長公室広報担当

電話:075-222-3094

ファックス:075-213-0286

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