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京都市在住外国人意識・実態調査報告書

ページ番号8649

2008年8月28日

1 調査概要

(1) 調査の趣旨と実施概要

 京都市では,在住外国人が同じ市民の一員として受け入れられる,暮らしよいまちづくりを進めている。本調査は,京都市のこの取組を推進するにあたり,市内に在住する外国人の生活上の不便や悩み,行政への要望などの実態を把握し,今後の市政に反映させるため実施したものである。
 調査票は在留期間や在留に至った背景などを考慮し,部分的に質問項目を違えたものを2種類作成して両方を同封,発送した。「1952年以前から日本にお住まいの方,あるいは日本で生まれたすべての方」用と,「外国で生まれて,1953年以降日本にお住まいの方」用であり,どちらか一方を選択して回答してもらった。本報告書では,必要に応じてこれら2種類の票別集計・分析や比較をおこなうが,その際の便宜上,前者を「オールドカマー」,後者を「ニューカマー」と呼ぶ場合がある。
 また,調査票は,日本語版・ハングル(韓国語・朝鮮語)版・中国語版・英語版を用意し,対象者の国籍に応じて日本語とその他の言語の計2言語分を同封した。なお,その他の言語での回答希望にも応じる体制をとった。

 

調査期間:1997年1月31日~3月4日
方  法:郵送(配布・回収とも)
対  象:京都市に在住する20歳以上の外国人登録者
抽出方法:外国人登録者名簿を用いた層化抽出法(各行政区および支所に比例割当,抽出率約10分の1)

 

(2) 回収状況

回収状況は以下のとおりである。
発送数    3,400票
不達数     292票
回収総数    882票
有効回収数   868票(オールドカマー 529票,ニューカマー 339票)
有効回収率  27.9%
回答言語別の内訳は,日本語75.2%,英語18.4%,中国語 4.8%,ハングル(韓国語・朝鮮語) 1.5%であった。

2 結果概要

(1) 基本的な属性

◆京都市における外国人の居住分布には地域的偏りがある。韓国・朝鮮籍者(特にオールドカマー)には南区・右京区・伏見区などへの集住傾向があり,左京区では主にニューカマーにおける出身国籍の分布が多様化している。
◆職業・学歴(教育歴)の面では,自営業が多く学歴がニューカマーほどには高くないオールドカマーと,教育・研究・専門職が多く高学歴のニューカマーという二極化傾向がみられる。

 

表1 職種分類
 専門職 管理職 ホワイトカラー ブルーカラー その他の被雇用者 自営業
オールドカマー 8.8 10.0 23.5 19.4 4.1 34.3
ニューカマー 57.7 8.3 11.3 11.3 2.4 8.9

 

 

表2 最終卒業学校
 小学校 中学校 高等学校 専門・専修 短大・高専 大学 大学院 その他 なし
オールドカマー 5.6 22.5 40.5 6.9 7.5 12.5 1.5 0.4 2.7
ニューカマー 2.1 4.5 11.6 3.9 7.4 31.8 35.7 1.2 1.8

 

◆外国人であることを意識する機会は,オールドカマーではなんらかの制度的・心理的差別を受けた時が多く,ニューカマーにおいては言葉の壁や,日本文化に異質なものを感じた時に多い。

 

表3 外国籍であることを意識する機会
 よくある たまにある あまりない ほとんどない
オールドカマー 26.3 40.7 22.0 11.0
ニューカマー 56.9 20.8 18.1 4.2

 

 

(2) 地域とのかかわり

◆現住所での居住年数は,オールドカマーでは約3分の2が10年以上であるのに対し,ニューカマーでは半数以上が3年未満である。

 

表4 現在の住所での居住年数
 3年未満 3~5年 5~10年 10~20年 20~30年 30~50年 50年以上
オールドカマー 13.9 7.8 14.1 23.9 19.4 13.3 7.6
ニューカマー 58.7 15.6 15.3 8.1 1.8 0.6 -

◆近所とのつきあいは,韓国・朝鮮籍者,また就業形態では自営業において深い。

◆自分が外国籍であることを近隣の人に「あまり」もしくは「ほとんど」知られていないケースは,オールドカマーの在日韓国・朝鮮人においては,通名を使用することなどにより25%を超えている。

 

表5 在日韓国・朝鮮人の地域での本名使用と外国籍であることの認知状況
 多くの人が知っている ある程度知っている あまり知られていない ほとんど知られていない
現在,名乗っている 71.6 20.3 2.7 5.4
場合によって使い分けている 61.6 28.3 7.1 3.0
現在,名乗っていない 34.1 26.4 15.4 24.0

◆ニューカマーにおいては,近所とのつきあいが少ない人ほど,「災害のときにどうすればよいかわからない」などの生活上の不安や困難を感じている度合いが高い。

 

 

(3) 育児・教育

◆オールドカマー・ニューカマーを問わず京都市在住の外国人の子どもの大多数は日本の公・私立の学校に通学している。

表6 子どもの通学状況(学校の種類)
日本の国公立 日本の私立 外国系・民族系
オールドカマー 51.5 39.0 9.5
ニューカマー 62.5 34.4 3.1

*複数回答のため延べ人数を100%として計算

◆ニューカマーにおいては,保育園・幼稚園・小学校に通っている子どもの割合が高く,乳幼児を抱える共働きの親が多い。学費面や学校との意思疎通に困難を感じている人も少なくない。また託児所への入所について悩みを抱える共働きの親もいる。

 

表7 子どもの通学状況(学校の段階)
保育園 幼稚園 小学校 中学校 高等学校 各種・専門学校 短大・大学 その他
オールドカマー 9.8 9.8 29.5 19.6 14.9 3.3 11.3 1.8
ニューカマー 31.0 12.1 29.3 10.3 7.8 2.6 5.2 1.7

*複数回答のため延べ人数を100%として計算

 

◆オールドカマーの子どもに対するいじめや差別が「ない」と答えた人でも,「外国人であることを隠しているので」という理由が多い。

◆オールドカマーにおいては,「外国人とわかると差別にあう」ため子どもに本名の使用を「望まない」と答える記述が多い。

 

(4) 保険・年金・医療

◆大部分の人が何らかの保険に加入している。欧米系のニューカマーには,近い将来離日するために未加入であるという人もいる。保険料の高さを経済的負担と感じている人も多い。

 

表8 医療保険への加入状況
加入していない 国民健康保険 勤務先の健康保険 それ以外の医療保険
オールドカマー 4.7 48.9 41.3 5.1
ニューカマー 9.5 56.0 24.2 10.1

◆年金は,未加入者が全体の4割近くに上る。国民年金への加入が認められていなかったため,高齢者ほど未加入率はさらに高くなっている。

 

表9 年齢別・公的年金への未加入状況(オールドカマーのみ)
20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代 70歳以上 総 計
オールドカマー 31.7 31.5 30.7 38.7 38.6 65.1 37.7

◆病院は,医者の患者に対する説明不足や,日本の医療システムの構造的問題点から,不信感を抱いている人が多い。また,医療情報のいっそうの提供が強く求められている。

 

(5) 行政サービス

◆行政サービスの認知度は,「国民健康保険」を除くといずれも高くない。

 

表10 行政サービスの認知度
 国民健康保険国民年金母子健康手帳予防接種乳幼児健診
オールドカマー93.485.588.588.483.2
ニューカマー85.846.542.143.339.7

 

 

表10 行政サービスの認知度
 がん検診成人病検診エイズ抗体検査生活保護児童・児童扶養手当
オールドカマー78.4796977.273.9
ニューカマー31.332.733.420.625.6

 

 

表10 行政サービスの認知度
 乳幼児医療費負担金交通災害共済敬老乗車
オールドカマー53.168.672.6
ニューカマー22.121.730.1

 

◆区役所の窓口の応対は,好意的な意見と批判的な意見の両方が寄せられた。外国人向け窓口の整備,外国語での情報提供(サービスそのもの,またその手続きの方法についての)などきめ細かい配慮が求められている。

◆京都市国際交流会館は,ニューカマー(特に留学生)に利用者が集中しているが,オールドカマーのニーズを満たしているとは言えず,認知度も低い。

 

表11 京都市国際交流会館の認知度
会館があることを知らない 知っているが行ったことがない 行ったことがある
オールドカマー 60.4 25.4 14.2
ニューカマー 17.4 30.4 52.2

 

 

(6) 差別と偏見

◆オールドカマーの7割,ニューカマーの5割以上が過去に何らかの差別をされたと答えている。現在では,差別が「よくある」という回答は減少しているが,「ときどきある」を加えると,回答者の4割以上が依然として何らかの差別を感じている。

 

 

表12 被差別体験(過去)
 よ く ときどき あまり まったく
オールドカマー 38.3 34.0 20.3 7.4
ニューカマー 19.4 37.5 28.3 14.9

  

表12 被差別体験(現在)
 よ く ときどき あまり まったく
オールドカマー 8.2 33.1 42.8 15.9
ニューカマー 9.9 36.4 34.8 19.2

◆オールドカマー・ニューカマー,アジア系・欧米系を問わず,住宅入居時の差別が深刻なものとして挙げられた。

◆韓国・朝鮮籍者を中心とするオールドカマーのうち7割近くが,「仕事をさがすとき」に差別や偏見を「感じる」もしくは「感じたことがある」としている。

◆欧米系の外国人にとっては,ジロジロと好奇の目で見られたり忌避されたりすることが,不快な被差別体験となっている。

 

表13 差別されていると感じた経験(複数回答)
 住まいをさがすとき 仕事をさがすとき こどもが学校で 受験・進学のとき 仕事のうえで 町を歩いていて 近所の人とのつきあいで
オールドカマー 45.8 66.5 18.6 20.9 29.5 2.3 16.0
ニューカマー 43.8 35.1 4.7 5.6 26.1 25.5 20.2

 

 

表13 差別されていると感じた経験(複数回答)
 レストランや買い物のとき 役所や公共機関で 日本人との結婚を考えたとき 日本人の友人との交際のとき 社会保障制度の面で 政治的権利の面で クレジットカードを申し込むとき
オールドカマー 0.6 24.9 45.2 25.8 32.3 59.3 10.4
ニューカマー 21.4 14.3 11.5 11.8 16.8 18.9 21.4

 

 

表13 差別されていると感じた経験(複数回答)
 知らない人からジロジロみられた 電車などで避けるようにされた 母国・民族を傷つける言葉をいわれた 知らない日本人から悪口をいわれた 「外国人お断り」という表現をみた
オールドカマー 3.5 1.0 58.0 15.4 18.6
ニューカマー 43.5 29.9 36.7 20.4 22.4

 

◆在日韓国・朝鮮人の「本名使用」の問題は,本名をつねに名乗って生活している人が,わずか15%しかおらず,依然として「本名では生きづらい」日本社会の現実が変わっていないことを示している。

 

表14 在日韓国・朝鮮人の過去・現在の本名使用(地域,近所)
 以前から名乗っている 現在は名乗っている 現在は名乗っていない 以前から名乗っていない 相手により使い分けている
韓国・朝鮮 15.4 2.4 5.4 53.0 23.9

 

 

(7) 住まい

◆居住形態は,オールドカマーにおいては持ち家(マンション等を含む)にすむ人が7割であるのに対して,ニューカマーでは借家や社宅・社員寮,学生寮にすむ人が多い。

 

表15 住居の形態
 持ち家 借 家 社宅・社員寮 間借り・下宿 学生寮 その他
オールドカマー 69.9 25.8 1.5 1.0 0.0 1.7
ニューカマー 16.5 49.8 14.8 5.0 8.3 5.6

◆住居をめぐるトラブルは,全体では「とくに困ったことはない」が6割近くあったが,「外国籍であるとわかると,不動産業者の対応がよそよそしくなったり,家主などから入居を断られたりした」「入居を希望した物件に『外国人お断り』と書かれていた」という経験をもつ人も少なくない。こうした差別に起因するトラブルの経験は,どちらかといえばオールドカマーの方がニューカマーよりも多く,国籍別ではアジア系の人に多くみられる。

 

表16 住居の関するトラブル
 オールドカマー ニューカマー アジア系 欧米系
外国籍を理由に対応が悪化・入居拒否 30.3 22.4 30.9 9.6
入居を希望した物件が「外国人お断り」 15.3 18.6 17.5 13.6
入居後に立ち退きを要求された 0.7 1.0 0.7 1.6
保証人がみつからない 12.1 10.8 12.0 9.6
その他 6.1 5.4 5.6 7.2
とくに困ったことはない 55.6 61.0 55.3

 

 

(8) 緊急時の対応

◆災害の発生に備えて在住外国人がとっている対策に関しては,ニューカマーにおいて,「避難場所の確認」・「地域での協力体制の確保」・「防火・防災行事への参加」などの実行率が低い。防災情報が言葉の壁によって伝わりにくいことと,近隣住民との日常的な接触の乏しさがその原因と思われる。

◆行政に対しては,外国人向けに防災知識や情報を提供することがニューカマーによって強く求められている。オールドカマー,ニューカマーを問わず要望の多かった災害対策は,「災害時の医療体制を充実させる」,「公共施設を地震に耐えられるようにする」,「『災害ボランティア』の支援体制をつくる」などである。

 

表17 京都市に望む防災対策(複数回答)
 防災訓練の充実 公共施設の耐震性を高める 外国人向け防災知識を普及 医療体制の充実 ボランティアの支援体制 ふだんから災害情報を提供 その他 とくに希望なし
オールドカマー 27.4 46.7 9.7 64.7 37.3 11.2 2.4 20.5
ニューカマー 28.1 43.5 54.0 40.1 34.9 39.5 2.8 9.0

 

 

(9) 在住外国人施策のあり方

◆オールドカマーにおいて「ぜひ必要」との要望が最も強かったのは,「年金などの社会保障関係を含め,行政上の扱いを日本人と同等にする」であり,9割に近い高率である。ついで,およそ8割の人々から「ぜひ必要」との回答があったが,「公務員採用の門戸を広げる」と「在留期間などの一定の条件を満たした人については,地方参政権を保証する」の二項目である。日本人と同等の市民的権利がまず求められている。

◆「ぜひ必要」に「するほうがよい」を加えれば,「国籍や民族の違いを理解しあえる教育を学校でおこなう」や「民族学校・外国人学校の支援など,外国籍の人びとが安心して学べるようにする」など教育や相互理解にかかわる要望も強く,オールドカマーにおいては8割を超えている。

◆ニューカマーにおいては,「差別や偏見がなくなるよう啓発を」,「行政上の扱いを日本人と同等に」,「国籍や民族の違いを理解しあえる教育を学校で」などの要望が上位を占めた。教育や啓発を通じて,在住外国人への理解を深めることが求められている。これに次ぐのが,「地方参政権の保証」・「公務員採用の門戸拡大」などであり,社会生活上の権利に関しても要望は高い。

◆ニューカマーのみを対象とした設問(「区役所などに,気軽に相談できる窓口を充実させる」,「生活するうえで必要な情報を母国語などで知らせる」,「日本語や日本の文化を学べる機会をつくる」,「公の場などで外国語表示を増やしていく」)のすべてに7割以上の要望があり,各方面での生活情報格差の解消が望まれている。

 

表18 在住外国人施策のあり方
 ぜひ必要 する方がよい 余り必要なし 必要なし わからない
地域の日本人との交流事業の開催や支援 オールドカマー 23.5 33.9 19.6 6.1 17.0
ニューカマー 25.2 42.9 13.5 10.3 8.1
国籍や民族の違いを理解しあえる教育を学校で行う オールドカマー 59.5 26.8 5.8 3.1 4.8
ニューカマー 50.9 34.6 6.6 3.8 4.1
民族学校・外国人学校の支援などを行う オールドカマー 53.1 28.8 7.4 1.7 9.1
ニューカマー 35.8 29.4 14.2 11.6 9.0
日本人が外国の歴史や文化を学べる機会をつくる オールドカマー 50.9 37.5 4.0 1.9 5.7
ニューカマー 46.5 37.3 8.9 2.5 4.8
差別や偏見をなくすよう啓発を進める オールドカマー 63.2 24.5 4.8 2.5 5.0
ニューカマー 59.1 29.4 5.9 2.5 3.1
年金などの行政上の取扱を日本人と同等にする オールドカマー 88.9 8.9 0.2 0.2 1.9
ニューカマー 59.0 25.9 2.8 1.9 10.4
母国の民族文化にふれる施設を整備 オールドカマー 26.9 39.6 16.5 3.8 13.1
ニューカマー 23.2 27.1 22.6 16.6 10.5
公務員採用の門戸を広げる オールドカマー 81.9 11.9 2.3 1.4 2.5
ニューカマー 44.7 32.5 7.8 4.1 10.9
地方参政権の保証 オールドカマー 79.5 11.3 1.2 2.7 5.3
ニューカマー 46.7 31.5 7.2 5.0 9.7
区役所などでの相談窓口の充実 ニューカマー 34.4 40.4 10.7 5.7 8.8
生活情報の母国語による提供 ニューカマー 39.0 35.6 13.3 8.3 3.8
日本語や日本文化を学ぶ機会 ニューカマー 40.9 37.8 11.9 5.6 3.8
公的な場の外国語表示 ニューカマー 34.8 36.1 16.1 9.2 3.8

 

 

(10)自由記述欄より

◆永住権をもつオールドカマーがもっとも強く訴えたのは,日本社会からこれまで受けた差別の体験と,今も受けている排除の現実である。オールドカマーの大半を占める在日韓国・朝鮮人住民のこうした痛みについて,歴史を踏 まえた正しい理解が施策の実施にあたっても求められている。

◆オールドカマーにおいては,権利と義務の不公正が第一の課題にあげられていた。納税などの各種義務を地域社会の構成員として果たしているにもかかわらず,政治的,社会的権利は十全に保障されていないという実感が数多く指摘されている。

◆ニューカマーの意見は,アジア系と欧米系で傾向がはっきりと分かれた。
 アジア系の住民にとっては,日本社会の根深い「脱亜入欧」志向が,アジア軽視,あるいはアジア系への差別の風潮をつくりだしているということが問題にされた。また,高額な医療費や保険掛け金など生活上の不便さと困難を訴える人が目立った。
 欧米系住民には,外見上の違いから「ガイジン」扱いされる不快を訴える声が強かった。また京都の伝統的町並みが無秩序に開発(破壊)されていくことへの,心配する声も寄せられた。

お問い合わせ先

京都市 総合企画局国際交流・共生推進室

電話:075-222-3072

ファックス:075-222-3055

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