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京都市消防局

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平成29年3月号 予防タイムズ・リターンズ

ページ番号214826

2017年3月1日



後輩:先輩,よく,「管理権原者」という言葉を聞くのですが,そもそも「管理権原者」って消防法のどこに書かれているの

   ですか?

先輩:実は消防法には,「管理権原者」という言葉は出てこないんだ。消防法の中では,第8条などで「管理について権原

   を有する者」という言葉が出てくるが,これを便宜上,「管理権原者」と省略して言っているんだ。この防火対象物等の

   「管理について権原を有する者」いわゆる「管理権原者」は,消防法第8条(防火管理者)のほか,第8条の2(統括防

   火管理者),第8条の2の2(防火対象物点検報告),第8条の2の3(防火対象物点検報告特例),第8条の2の4(避難

   施設等の管理),第8条の2の5(自衛消防組織)や第36条において準用する第8条(防災管理者)・第8条の2(統括防

   災管理者)・第8条の2の2(防災管理点検報告)・第8条の2の3(防災管理点検報告特例)などでも使用されている。

後輩:こう見ると,かなり多くの条文で「管理について権原を有する者」という言葉が出てくるのですね。

先輩:そうだ。消防法第17条に基づき,消火器などの消防用設備等を設置し維持しなければならない者が「関係者」であ

   るのに対し,防火管理者を選任するなどの防火管理が義務付けられている者は「管理権原者」であるということをま

   ずは覚えておいて欲しい。

後輩:わかりました。

先輩:せっかくなので,少しだけ,消防法第8条を見てみよう。君もよく知っていると思うが,消防法第8条では,ある一定規

   模以上の防火対象物の管理権原者に,防火管理者を定め,防火管理上必要な業務を行わせることを義務付けてい

   るが,この場合,防火管理者を何人選任する必要があると思う?

後輩:義務が課せられているのは管理権原者なので・・・,ひょっとして,管理権原者の数だけ防火管理者が必要になるの

   ですか?

先輩:基本的にはそのとおり。消防法第8条には,「・・・防火対象物で・・・管理について権原を有する者は,防火管理者

   を定め・・・・防火管理上必要な業務を行わせなければならない」と書かれており,その防火対象物にいるすべての

   管理権原者に防火管理者の選任義務がかかっていると読み解く必要がある。ただし,防火管理を他の管理権原者

   に委託する「内部委託」などの制度があり,必ずしも管理権原者数=防火管理者数にはならないので,注意が必要

   だが・・・。

    これについては改めて教えるとして,防火管理に係る制度は,管理権原者に義務を課していることが多いので,こ

   の管理権原者について,今からしっかりと勉強していこう!

後輩:では,その管理権原者とはいったいどういう人のことを言うのですか。

先輩:防火管理に関する参考図書などでは,「防火管理上の正当な管理権を有する者」と説明されていることが多い。

   また,通知文では「防火対象物等の「管理について権原を有する者」について」(平成24年2月14日付け 消防予第

   52号。以下「52号通知」という。)において整理がされており,管理権原者を「防火対象物又はその部分における火気

   の使用又は取扱いその他法令に定める防火の管理に関する事項について,法律,契約又は慣習上当然行うべき者」

   と規定している。一般的には,建物の所有者や管理者,テナントの賃借人である経営者等がこれに当たると言われて

   いる。

後輩:共同住宅などの管理会社は,管理権原者となるのですか?査察や検査の立会いや,不備事項の改修の段取りをし

   てくれますが・・・・

先輩:管理会社は管理業務の一部をビジネスとして委託されているだけで,管理権原者とはみなすことはできない。たとえ

   ば,防火に関する不具合があった場合は,管理会社が費用を捻出するわけでもないし,防火管理の責任を取るわけ

   でもないだろう。よく,「所有者に伝えます。」なんて言葉を管理会社から聞いたことがあると思うが,この言葉からも到

   底管理権原者とは言えないね。

後輩:なるほど,確かにそうですね。てっきり,管理会社は管理権原者だと思っていました。

後輩:管理権原者は,防火管理の最終責任者で,人事に関する権限のほか,防火管理上必要な経費を支出し,建物や設

   備を管理できる権限を有していて,そして防火管理の責任を負うべき人でなければならない。

    この52号通知でも,「管理権原者の判断に当たっては,防火対象物又はその部分の所有形態,管理形態,運営形態

   契約形態等を踏まえて総合的に判断する必要がある。」と書かれており,慎重に判断しなければならない。


後輩:では,先ほどの管理権原者の例で,テナントの賃借人がありましたが,テナントビルなどは,複数の管理権原者が

   いることになりますよね?

先輩:基本的には,そのとおり。52号通知でも,複合用途防火対象でテナントが入っているような防火対象物は,管理権

   原は複数が基本であると書かれている。

後輩:でも,百貨店など,テナントが入っている防火対象物でも単一権原で防火管理者が一人しか選任されていないとこ

   ろもありますよね。

先輩:なかなか鋭いなぁ。確かに複数のテナントが入っている防火対象物の場合,複数権原が基本なのだが,単一権原

   とみなすことができる場合がある。

    大きくは2つの場合があり,

    1つ目は,当該防火対象物を一人の管理権原者が使用していると認められる場合。ビルの1階と2階で,お店の名前

   が異なっているが,よくよく聞くとすべてのお店を一人の所有者が経営していたということがよくあるが,これはそのよう

   な場合だ。

    2つ目は,管理権原者と各テナントとの間で,防火管理の責務を遂行するために必要な権限が管理権原者に付与さ

   れる取り決めが確認でき,統一的な防火管理を行うことができる場合。まあ,普通に考えれば当然のことで,防火対象

   物全体の防火管理をするには,管理権原者に防火管理ができる権限が必要となり,その権限として,

   1 管理権原者が,各賃貸部分を含め防火対象物全体の防火に関する権限を有していること。

   2 管理権原者又は管理権原者が選任した防火管理者が,防火管理上,必要な時に防火対象物の部分に立ち入るこ

    とができること。

   3 管理権原者又は管理権原者が選任した防火管理者が,各賃借人に対する防火に係る指示権限を有していること。

    この3つの権限を52号通知では挙げている。詳しくは52号通知を確認しておいて欲しいのだが,これらの条件を満た

   せば単一権原とみなすことができるんだ。しかし,裏返すと,この厳しい条件をクリアできない限り,単一権原にはなら

   ないということも言えるね。

後輩:百貨店などは,複数のテナントが入っていますが,テナント部分も含め,防火対象物全体の防火管理ができる権限が

   あるから単一権原なのですね。

    大分,管理権原者についてわかってきました。


先輩:じゃあ,最後に,防火対象物の関係者に指導するときに,注意してほしい点を伝えておく。

    まず,防火対象物の管理権原者は簡単に判断できないことが多いので,実際の査察では,関係者から事業所の管理

   状況や契約状況などをしっかり聞き取りしてから,慎重に判断しなければならない。単一権原か複数権原かという判断

   もこの際に考慮する必要がある。

    また,管理権原者は防火管理の最高責任者で,その責任は重く,防火管理に係る命令の対象になるし,火災等が発

   生した場合,消防法,刑法,民法などさまざまな角度から責任が問われることになる。関係者にそのことをきちんと説明

   しておくことが重要だ。わかった?

後輩:はい,よく,わかりました。

先輩:返事は一人前なのだが,本当に大丈夫かなぁ。ちゃんと52号通知を読んでおくんだぞ!

消防予第52号 防火対象物等の「管理について権原を有する者」について 

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電話:075-682-0119

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