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京都市消防局

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平成28年5月号 研究課レポート

ページ番号197306

2016年5月2日


 新築住宅のうち3割程度がオール電化住宅(2012年調査)で,既存の住宅においても,直火を使用せず安全性の高いIHクッキングヒーターに変更するという家庭も増えてきています。今回は,最近,発生したIHクッキングヒーターからの火災事例をもとに,発火,着火に至る経過を火災実験で再現しました。


⑴ 火災実験1

   汚れ防止のために,卓上型IHクッキングヒーターのトッププレート上に紙類を敷き,鍋を掛け,加熱して紙類の状況を確認します。

  使用する紙類は次の5種類です。

 (ア) A4再生紙1枚

 (イ) A4再生紙5枚

 (ウ) 新聞広告紙1枚

 (エ) 新聞広告紙5枚

 (オ) 36面新聞紙二つ折り

⑵ 火災実験2

  市販のIHクッキングヒーター用汚れ防止シートをトッププレート上に敷き,鍋を掛け加熱してシートの燃焼状況を確認します。

  使用する市販IHクッキングヒーター用汚れ防止シートは次の2種類です。

 (ア) ガラス繊維製シリコンコート(耐熱温度360℃)(写真1)

 (イ) フイルム製(耐熱温度400℃)(写真2)



 実験方法は,トッププレートの汚れ防止として,鍋の下に紙類及び市販のIHクッキングヒーター用汚れ防止シートを敷き,その上に水100mlを入れた鍋を掛け,加熱モード最大火力(強)で加熱し,鍋底の内側中央部に熱電対を1箇所取付け,温度を測定しました。

 使用する卓上型IHクッキングヒーターは(S社製 100V,80~1400W,空炊き防止装置作動温度220℃,製造年月日不明),鍋はオール熱源対応3層底面両手鍋 直径20cm,深さ9cm,容量約2.7L,ステンレス鋼底厚3.0mmです。


⑴ 火災実験1の結果は次のとおりです。

 (ア) A4再生紙1枚では,再生紙が鍋底の形状に炭化し,実験開始から約8分30秒後に空だき状態となり,約11分後に鍋底の温度は204℃に達し,発煙しました。

 (イ) A4再生紙5枚では,再生紙が鍋底の形状に炭化し,実験開始から約8分30秒後に空だき状態となり,約10分後に鍋底の温度は226℃に達し,発煙しました。(写真3,4)


 (ウ) 新聞広告紙1枚では,実験開始から約8分30秒後に空だき状態となり,約11分後に鍋底の温度は221℃に達し,発煙しました。鍋を除去すると,新聞広告紙が鍋底の形状に炭化しているのを確認しました。

 (エ) 新聞広告紙5枚では,実験開始から約8分30秒後に空だき状態となり,約10分後に鍋底の温度は186℃に達し,新聞広告紙が鍋底の形状に炭化し,無炎火を確認しました。

 (オ) 36面新聞紙二つ折りでは,実験開始から約8分30秒後に空だき状態となり,約9分後165℃に達した時点で新聞紙から発煙しました。新聞紙表面は無炎燃焼が起こっており,しばらくすると有炎燃焼へと移行しました。(写真5,6)


⑵ 火災実験2の結果は次のとおりです。

 (ア) ガラス繊維製シリコンコート(耐熱温度360℃)では,約8分後に空だき状態となりましたが,シートからの発煙はなく,シートの端が反るとともに中央が若干波うち状態となって,280度で電源が切れました。

 (イ) フイルム製(耐熱温度400℃)では,約8分後に空だき状態となりましたが,シートからの発煙はなく,中央が若干波うち状態になって,300℃で電源が切れました。


⑴ 汚れ防止のために,卓上型IHクッキングヒーター上に紙類を敷いたときの紙類からの出火危険について

   各実験結果から,各紙製品はいずれも発煙炭化し,複数枚敷いた場合には,出火する危険があることが分かりました。

   注意しなければならないのは,鍋底の温度が空炊き防止装置作動温度220℃よりも高くなっても,電源が切れないことです。(図1)


⑵ 卓上型IHクッキングヒーター上に市販の汚れ防止シートを敷いたときの出火危険

   市販の汚れ防止シート2種類は若干変形するものの発煙,発火することはありませんでした。(図2)

   なお,汚れ防止シートは国民生活センター実施の実験(※)にあるように,温度検知機能が損なわれ,空炊き防止装置が作動しないこともあるので注意が必要です。



 IHクッキングヒーターは取扱説明書にある禁止事項を遵守し使用すれば,大変便利で安全な調理器具です。しかし,空だきの状態で火力が「強」(最大)になっていた場合,鍋底の温度は鍋内の水分が蒸発すると短時間で上昇します。そのため,少量の油を使用する調理時や煮たき物の水分蒸発時の空だきによる発煙,発火が発生すると予想されます。火災防止のため,空だきに注意し調理中はその場を離れないようにしてください。

 また,トッププレート上に紙類を敷いていた場合,紙類が発火し火災につながる恐れがありますので注意しましょう。


※ 独立行政法人国民生活センター 平成25年2月21日 報道発表資料

   「IHクッキングヒーターに用いる汚れ防止マットの使用に注意」

  • 目次

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