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京都市消防局

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平成28年4月号 ザ☆救助

ページ番号195342

2016年4月1日


 私の消防人生も,早17年が過ぎました。年齢も40才を過ぎ,いわゆる,組織の中で「中堅」と呼ばれるポストで,現在,仕事をさせていただいています。

 本来なら,災害現場での話をするのが適切であると思いますが,今,印象に残る現場をすぐに思い出せないのが本音です。私は,すぐ,人に影響される性格でありまして,今まで様々な方に影響されてきました。その影響された人と,そこから学び,考えたことについて,お話させていただきたいと思います。

 まず,1人目は,「私の考えていることを,ことごとく読み通してしまわれる」先輩です。元々,単純な私ですが,この先輩にはうそがつけません。まだ,駆け出しの隊員であった頃,訓練,現場でミスを重ねる私の心を見透かしたように,適切な指導をしていただきました。この先輩から受ける指導は,全て,私の心に響くものでした。

 人間は十人十色と言いますが,指導の仕方もその人に応じた指導が必要です。私は優秀な隊員ではなかったので,言い方は野蛮かもしれませんが,「箸にも棒にも掛からぬ」者をその者に応じた指導をし,一人前に育てたいと常に思っています。例えば,自分の思うとおりに指導し,それに応えることのできない後輩を怒鳴り散らすのは簡単ですが,怒鳴り散らすのは教える側の苛立ちに思えます。もちろん私にもその感情はあります。でも,前術の私の尊敬する先輩のような指導ができれば,後輩も一人前に育ち,またその後輩が後に続いて同じ指導をしていく連鎖が起きていくことを願います。

 2人目は,「自分の体力,腕力も救助ツールだ!」と教えてくれた先輩です。初め,この先輩のトレーニング量は,「人間の常識の範ちゅうを超えている」と思うくらい,すごいものでした。先輩と同じトレーニングをこなすのは,苦痛なものがありました。しかし,一緒に体力錬成をしていくうちに,付いて行けるようになり,体格も見る見るうちに変わっていきました。

 災害現場で一番早い救出方法は,人力であることは言うまでもありません。しかし,我々は安全確実に救出するための担保として,器材を使用して救出しています。現在,消防装備,救助技術は省力化が進んでいます。例えば,ロープレスキューの倍力設定で,要救助者を引き揚げていく際,倍力を増やすと楽に引き上げることができますが,ロープを引く量が増え,救助に時間を要します。これは,我々の負担は軽減されますが,要救助者にとっては負担が増えることになると考えることができると思います。

 また,体力を使う災害現場は,そんなに数が多いものではありません。以前は,この体力をいつ使うのか,悩んだり,体力を持て余していると思ったこともありました。そこで,私なりに考えたことは,消防の体力は国防の考え方に近いと認識することにしました。それは,戦争というものは,一部の地域,国を除き,特に日本においては,頻繁に起きるものではありません。しかし,各国は抑止力として,軍事力を高めていきます。消防の体力も体力を高めることによって,数少ない体力を必要とする災害現場へ立ち向かう準備と,自分は体力があると自信を持つことで,過酷な災害現場へ勇気を持って挑めますし,あるいは,「絶対,要救助者を助けるぞ!」と高いモチベーションにつながっていくものだと思います。これからも,私は体力錬成に努め,モチベーションの維持を図っていこうと思います。

 最後になりましたが,採用時の論文試験で「10年後の私」という題材を与えられ,私は,人に影響力を及ぼす人間になりたいと書きました。10年はとっくに過ぎてしまいましたが,この投稿を機に考えてみると,人に影響されてばかりで,自分は人に影響されるような人間になれていないと思います。消防人生,折り返し地点を過ぎようとしているのに,まだ10年の目標を達成できていない私ではありますが,これからも生涯の目標として前述したことを意識し,仕事に精進していきたいと思います。


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