スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市消防局

言語選択を表示する

検索を表示する

スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都消防OBによる職員研修会【第2回】を開催しました

ページ番号193279

2016年2月9日

  第2回研修会は、平成20年3月に警防部長を最後に御退職され,その後,得度され仏門にはいられた,坂本太一郎氏をお招きし、「ミレニアル世代の皆様へ!」と題して講演をしていただきました。

★ ミレニアル世代とは?

 アメリカでは1980年以降に生まれた人,30代後半から40代くらいの人を「ミレニアル世代」といいます。

 年代的に,私達の世代が日本では「団塊」の世代と言われ,その子供に当たる60年代,70年代の世代が「団塊ジュニア」,そこから下は全く新しい感性や価値観をもった人たちであると言われることがあります。

 ミレニアル世代の特徴は,デジタルネイティブ,通信系に強い,既婚率が低い,生まれたころからサイバー世代,SNSに強い,自己顕示型の消費はしないといった傾向が強いということです。

★ 消防の原点

 消防の仕事はたくさんありますが,共通した心構えを一言でいうと「プリペア フォー ザ ワースト」です。つまり,ザ・ワースト=「最悪」,フォー=「~に」,プリペア=「備える」,『最悪に備える』ということです。

 毎当務出勤してきて,「今日もどうってことないやろう。」という考えで勤務をスタートしているとすれば,それは「アマチュア」なんです。プロ消防は,やはり『プリペア フォー ザ ワースト』,何があるか分からないいうところにスイッチを入れて勤務しなければなりません。

★消防業務の「長」とは?

 組織における責任の所在は?「長」とは?消防隊長,救急隊長,レスキュー隊長,あるいは査察のグループの長,それらの責任というのは業務の内容や状況に応じてどうとるべきなのか?いろいろ問題がありますが責任の所在というのはどこまでいっても最終は一人の長の責任となるということを現役時代感じました。

 1個部隊5名編成となると,フロントに立っている「長」というのは業務に対するすべての責任をとらなければならないという辛さがあると思います。そして,ここでお伝えしたいのは,周りの隊員にはフロントに立っている「長」を支えるという責任,役割があるのです。


★ 全体像・つながりを読むことの大切さ!

  知識はものすごく大事です。大事ですけれども,今言いました「感性」,「空気を読む」,「嗅覚を働かす」,「ものごとをつなげて把握する」ということが,特に消防の人は大事だと思います。学歴や採用区分などにかかわらず,全員スタートラインは一緒です。自分の築き上げてきた知識や色々な情報,それを自分の中でミキシングして,フィルターを通して,嗅覚を働かす。

 例えば,ミスタージャイアンツの長嶋茂雄さん。この方は天才的なバッターですが,そのバッティング方法を活字で表わせられるかというと,できません。最後のところは言葉の世界を超えたところで体得するほかありません。

 

★ 落とし穴は慣れた時にあり

 火災現場,査察業務等,全てにおいて言えることですが,慣れた時が一番危ないのです。人事異動直後などは,メンバーも分からず,環境も今までと異なり,最初は足が重いです,しかし慣れてくると軽くなって,上司・同僚・先輩・後輩の顔も分かってきた,楽しいなと思いだしたときが一番アクシデントが起こりやすいのです。


★ すべて「レンタル・預かりもの」

 私たちは,社会組織,消防人,上司,部下,同僚,家族,知人等様々な人々と関わっていますが,心を澄まして考えますと自分以外のものは全部「借りもの」です。

 つまり,よく「俺の」っていう風に表現をしますが,「の」というのは自分のものということですが,あらゆるものは何かきっかけがあって,自分のところに来てくれた。つまり「預かりもの」であるということ,いつかお返ししなければならない。職業もそうです,「俺の職業」とか言いますけれども,消防署の寿命は人間の寿命よりはるかに長いのです。だから,同僚・上司全て「レンタル」,「お預かりしている」と思ってください。そのことに気付いたとき,視点が変わります。

★ 視点を変える

 視点を変えるということに関連して,「逆さ日本地図」というものがあります。富山県の土木部が作ったものですが,皆さん日本列島を思い浮かべてください。

 100パーセントの人は北海道が上で,九州が下にある日本列島を思い浮かべると思います。これが先入観,固定観念です。

 九州が上,北海道が下に来る日本地図からは,色々なことが見えてきます。

 この逆さ日本地図を部屋に貼っておくだけでもお勧めします。そして,視点を変えるために是非ともお願いしたいのは,他者の意見を聞いて先入観を離れるということです。これは災害現場活動の鉄則でもあります。

★ サイバー世界の弱点

 仏教用語で「面授(めんじゅ)」という言葉があります。

 大事なことは「対面して授けなさい・学びなさい」という仏教の教えです。サイバー世界の情報と現実世界の情報の質や広がり方は大きく違います。面授が抜けているのもその一つです。

 サイバー世界で動画を見ても決定的に抜けているのは匂いや温度,全体像などです。知識を身に着けるときはSNSでよいが,消防には現場視点と面受を伴うことが必要です。

 また,サイバー世界では,沈黙情報は抜け落ちるということです。現場では「沈黙」というのはものすごい情報であり,情報が入らないのが最も重要な情報ということもあります。


★私が生まれ変わったら?

 もし,「坂本さん,生まれ変わってもまた消防士になりますか?」と聞かれたら,たぶん「また消防士になる。」と言うと思います。

 最後に,消防士の道を選んだ理由ですが,それは一冊の本がきっかけだったんです。

 ニューヨーク市消防局の一人の消防士の手記が基になった『第82消防班の日々』という本です。

 当時,殉職者が出ると「五点鐘」といって,ニューヨーク市内の消防署一斉に鐘が鳴るんですね。突然カーンカーンと5つ。それはどこかの消防署で仲間が命を失ったということなんです。その5点の鐘の話,それとその本の一番最後に心肺停止状態になった女の子を消防士が抱きかかえたまま,マウス・トゥ・マウスを,人工呼吸をしている場面が載っていました。その写真が私を消防へ足を運ばせたきっかけになりました。命の大切さ,消防の仕事の大切さを思う気持ちは今も当時と変わりません。

今回の研修を受けて,職員から感想が寄せられました。

●  現職時代,努力し続けてこられた姿勢に感銘を受けました。

 司令補になられて 企画の仕事をはじめられたとき,はじめは苦労することも多いなか,努力することにより局本部の機構改革という大きな仕事をまかされるようになられたお話しを聞き,苦しい時こそ努力しなければならないと感じました。現在は,仏教の道に進まれ,さらに英語やドイツ語も勉強されておられ,いくつになっても挑戦され続ける姿勢を見て,「自分に限界を作らない」,「ブレーキをかけないこと」によってどこまでも成長できるのだと感じました。私も現場活動や訓練から様々な経験を積み,知識を身に着けこれからもどんどん成長していきたいと改めて思いました。

 

● 壇上に上がられた姿には少し驚きました。

 「心は今でも消防です。」の言葉どおり,お話の内容は消防職員として理解しやすく心を打たれるものでした。メールやSNSが発達して,効率やスピードだけが重視されがちですが,顔を合わせることで感じる大切なことや人と人のつながりなど,消防の原点でありながらも便利さに流されつつある自分自身に気付かせていただく機会となりました。今年,勤続20年になる私も,身に着いた経験と知識による嗅覚を大いに活かす時期がきているのかも知れません。一つひとつの仕事に責任を持って,周りの環境に感謝しながら,部下の指導に当たっていきたいと思います。

 

● 私が特に印象に残ったことは,「慣れてきたときが一番ミスを起こしやすい」

 今から2年前,消防学校を卒業し,西京消防署に勤務し初めたとき,経験したことのない仕事や新たな人間関係と向き合うことで,刺激的な日々を過ごしていたが,1年程が経ち,現場活動の流れがある程度理解できるようになった頃に,深夜の救助出動で私は防火衣を積み忘れました。当たり前のように積んでいた防火衣を積み忘れるなど思いもしませんでした。現場活動以前の問題です。これが,慣れからくるミスであると思います。いつまでも初心を忘れずに責任感のある仕事をしていきたいと思いました。 

このページに対してご意見をお聞かせください

このページは役に立ちましたか?
このページは見つけやすかったですか?

お寄せいただいたご意見は、今後のホームページ運営の参考とします。

お問い合わせ先

京都市 消防局西京消防署

電話:075-392-6071

ファックス:075-381-1999