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京都市消防局

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平成27年8月号 ザ☆消防

ページ番号186175

2015年8月3日


 消防人生の3分の1が経過し,その間,諸先輩方から数々の知識・技術・心構え等を学ばせていただきました。その中で紹介したいことは山ほどあるのですが,今回は,火災現場での出来事から感じたことを1つだけ紹介したいと思います。

 私が初めて救助隊員になった頃の出来事で,共同住宅の1室が燃焼する中層建物火災の現場でした。「逃げ遅れあり」の情報を得て,ほぼ同時に現場到着した先着救助隊の2名と先輩と私で,火点建物に進入することになりました。先に進む先輩の姿が見えない程の濃煙が充満する共用廊下をホース伝いに進み,火点室の玄関前で筒先を構える最先着消防隊を追い越し,先輩に続いて屋内進入しました。室内はほぼ全面燃焼で,あまりの火炎と熱気から,這ってても肌に刺すような痛みを感じ,面体が焼けるような臭いがして,現場経験豊富な先輩も室内の奥には進めない様子でした。すると,「逃げ遅れ発見」の無線が入り,火炎の中から先着救助隊の2名が要救助者を抱えて出てきたのです。先着救助隊の1人は先輩よりも更に経験豊富な方で,内部から要救助者の呼吸音が聞こえ,経験上,今ならまだ屋内進入できると判断し,救出に向かったとのことでした。

 火災現場の室内温度は,通常,発生から約5~10分で500℃程度に達します。さらに,フラッシュオーバーが起こると1,000℃以上にもなります。人間の皮膚の表面温度は約32℃で,約44℃で痛みを感じ,約56℃で熱傷Ⅱ度になるそうです。防火衣は短時間の火炎のばく露であれば退避できるように,燃えにくい耐火性能と裏地の温度が熱傷Ⅱ度に至る24℃上昇するのに十数秒掛かる耐熱性能を有しているそうです。人命救助活動時は,リスクを背負って活動しなければならない場合がありますが,当然,現場に活動限界を示す数値があるはずもなく,感性に頼るしかありません。燃焼状況,建物状況,その他諸々の情報を直感的に感じ取り,活動の可否を判断しなければなりません。その判断の時機を失することは,貴重な救助チャンスを逃してしまうことになるのです。多くの現場を経験したからといって感性は磨かれるものではなく,その現場活動を検証して訓練する等,日々の準備をしっかり行い,次に備えておくことが肝要です。要救助者を救出した先輩は,数々の現場経験で磨かれた感性で,燃えている室内への進入の可否を瞬時に判断できたからこそ,救助チャンスを見事に手中にできたと実感した現場でした。

 そんな経験から10年以上が経過し,様々な災害現場に出動してたくさんの経験をさせていただきました。私たちが活動する災害現場は不安全なもので,経験則が通じないことも起こります。私は,数年前,京町屋が倒壊した火災現場に救助隊として出動しました。当時,その事故原因が究明され,今では京町屋の特性を踏まえた活動が確立されていますが,災害現場には予測不可能な危険がまだまだたくさん存在します。そのような中で,微細な違和感を感じ取り,少しでも予測不可能を予測可能とできるように,諸先輩方の経験により構築された今ある知識や技術をしっかりと受け継ぐとともに,これまでの経験やこれからの経験を一つ一つ大切にして,経験に裏付けされた感性を磨き続けていきたいと思います。


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