スマートフォン表示用の情報をスキップ

京都市消防局

言語選択を表示する

検索を表示する

スマートフォン表示用の情報をスキップ

現在位置:

平成27年月号 調査マンからのメッセージ

ページ番号184234

2015年7月1日



 「車両火災の調査は難しい」という声をよく聞きます。

 実際,一口に車両と言っても,車輪の数や大きさ,用途,動力の種類や構造等は多岐にわたり,さらに近年では,動力源に従来の内燃機関だけでなく,電気や燃料電池を使用したものや電子制御により高度な制御を行っているなど,車両火災の調査には幅広い知識を必要とします。

 しかし,まだまだ内燃機関を動力とする車両が大半を占めていることから,当面の間は旧来の車両火災が発生するものと思います。


 近年,京都市内で発生した車両火災の件数は,1年間に20件から30件で推移しています。

 火災の原因については,放火(疑いを含む。)が半数近くを占めているほかは,車両ならではの火災原因で「排気管」,「交通機関内配線」等が多く発生していることがわかります。

 「その他」の火災原因として,ベルト,ランプ,スイッチ,オルタネーター及びモーター等,車両に使用されている様々な部品等から出火しています。

 昨年は,リコール対象車ではなく,国土交通省に届出義務がないサービスキャンペーンに該当する出火事例も発生しています。

 そこで,今回は火災調査の一助となるような出火事例を紹介します。



 廃油回収業者のトラックが高速道路を走行中に,車両下部に設置されている排気ガス浄化装置から出火し,車体の一部を焼失しました。

 原因は,廃油回収業者が荷台に積載している廃油タンクからこぼれた廃油が,荷台敷板の隙間から車両下部に設置されている排気ガス浄化装置上に滴下し,高温(内部は約1,000度,表面は400度以上)になっていた浄化装置の熱により,発火温度に達し出火したものです。

 排気管等の高温物からの出火は,過去10年間で24件発生しており,高温の排気管にオイル等の可燃物が接触することで起こります。

 一般的に,排気管に燃料のガソリンが接触すると火災になると思われていますが,仮に高温になっている排気管にガソリンを滴下しても,瞬間的に蒸発・拡散するため火災となり難く,京都市内で発生した排気管を原因とする車両火災でもガソリンが着火物となった事例はありません。

 逆に,一般的に燃えにくいと思われているオイル(エンジンオイルやブレーキオイル)類が排気管に接触し出火した事例は多く発生しています。

 これは,オイルはガソリンに比べて粘性があるため,排気管に付着しても蒸発せずに発火温度に達して発火するためです。車両火災の調査中に「エンジンルームから白煙が噴出した。」というような情報があれば,オイル漏れを疑うとよいでしょう。

 事例の火災では,運転手は荷台に油がこぼれていることに気付いています。もし,「漏れた油が排気管に接触すれば…」などと気を付けていれば,火災は防げた可能性もあります。

 皆さんも,車のオイル量を定期的にチェックを行って,異常に減っているときや,自宅の駐車場に油溜まり等があることに気付いたら,早めに業者点検を行ってください。


 走行中の普通乗用車の後部から出火し,同車両の後部の一部を焼失する火災が発生しました。

 20年以上前に初度登録された外国製車両を中古販売する際,販売業者がイグニッションコイルからバ ッテリーへ直接つなぐ配線を取り付けていました。

 この配線をボディーの貫通部に通すときには絶縁・緩衝処置(グロメットの取り付け)をしていましたが,配線の被覆との摩擦等の経年劣化から,ボディーと配線の芯線が接触してスパークし,付近の可燃部に着火し出火したものです。

 交通機関内配線からの火災は,過去10年間で19件発生しています。このうち,71%の着火物が付近の配線被覆となっています。

 この交通機関内配線からの出火は,予防が難しいかもしれません。しかし,今回の事例では,出火の約2週間前に異臭を感じ,数日前にエンジンの始動不良症状が出ていたようです。

 このように,定期点検以外でも,異常を感じた場合はなるべく早く業者に点検してもらうことで,愛車を守れる可能性が高くなります。



 走行中の大型スクーターが,交通事故により転倒し出火。同スクーター1台が焼失しました。

 本火災は,交通事故を起こしたスクーターから燃料漏れが発生し,イグニッションキーがオンの状態であったため,約1分後,ガソリンの蒸気が事故によって破損した配線から発生した火花で着火し,出火したものです。

 衝突発火による火災は,衝突時の衝撃火花や車両の配線から発生した火花がガソリン等に着火し,出火する事例が多くみられます。

 交通事故が発生した場合,イグニッションキーをオフにして車両の配線の電気を遮断すること,ガソリンの臭気がある場合は,いち早くその場を離れることが大切です。



 駐車中の軽乗用車の車内から出火し,車内の一部を焼失しました。

 この火災は,運転者が喫煙しながら車両を運転中に誤って灰皿をひっくり返し,吸殻は清掃しましたが,残った火種によりフロアマットの埃等でくん焼が継続し,出火したものです。

 なお,この運転者は車内に漂う白煙にはずっと気付いていたにも関わらず,きちんと処理しなかったために最後には出火したものです。

 過去には,たばこによる火災は多く発生していましたが,近年ではそれほど多く発生していません。

 これは,車両内装に関して車両の保安基準による難燃規制が定められたことが大きな効果を発揮しているものです。しかし,車両の内装材は難燃規制により,燃えにくくなっていますが,車内に置かれた座布団や衣類等の可燃物にたばこの火種が残ると,出火する危険性は建物火災と同様です。

 車両火災の調査で車室のたばこが疑われる場合は,喫煙状況と共に車内の着火物の調査が重要です。


 軽乗用車を駐車して,数分後にエンジンルームから出火し,同車1台を焼失しました。

 出火車両は,「オイル交換の際に,誤ってオイルをこぼしてオルタネーターに掛かると,出火危険がある。」ということで,メーカーにより注意喚起シールの配布や点検を促すサービスキャンペーンが実施されていました。

 しかし,ユーザーは,サービスキャンペーンの通知が届いていたことは知っていましたが,中身を確認しておらず,さらに,出火前にはオルタネーターの発電異常を示す警告灯が何度も点灯し,異臭の発生にも気付いていながら,放置していたものです。

 リコール,改善対策及びサービスキャンペーンは,多くの場合,封書の送付でユーザー等に知らされます。「重要なお知らせ」と書かれているメーカーからの封書は,必ず目を通してください。また,警告灯の点灯時は,すぐに停車し,説明書を読んで対処方法を確認することが必要です。



 ラジエターの配管に亀裂が生じ,冷却水が漏れていたため,定期的に冷却水を補充して使用していた車両であったにも関わらず,高速道路を走行し,オーバーヒートでエンジンストップすれば車を停めて自然冷却後に再度走行することを繰り返していたところ,過度のオーバーヒートによりエンジンのシリンダー内部に熱疲労による亀裂が入り,そこから漏れ出て飛散したエンジンオイルが排気管に接触して出火しました。

 車両の故障を自己の判断で応急処理し,使用を続けるのは極めて危険な行為です。



 駐車中車両の車室内のコンソールボックス前に置いていたゴミ箱が,シガーライターに接触して同ライターを押し込み続けた状態であったため,同ライターが発熱を続け,ダッシュボード内のゴミ類に着火し出火しました。


 このほかにも,点検時に使用したウエスの置き忘れや,バッテリーの短絡など,車両火災の出火原因は多岐にわたっており,調査活動はいつも困難です。また,将来はハイブリッド車等の火災が増加することも予測され,それらに関する知識も必要になっています。

 たとえ,調査に多くの時間と労力を要しても粘り強く調査活動を行い,調査結果を同様火災の予防に活用してください。


  • 目次

お問い合わせ先

京都市 消防局消防学校教育管理課

電話:075-682-0119

ファックス:075-671-1195