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京都市左京区

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左京食文化プロジェクト「”ほんまもん”の食を楽しもう」シンポジウム第2部

ページ番号195235

2016年5月26日

特別講演 「土に触れ,野菜と語る ~左京区大原の野菜と出会って~」

講演者:中東久雄氏(「草喰 なかひがし」主人)


中東久雄氏

講演の要旨

 1997年に独立して店を出すときの条件として,「山に近いこと」「地下水があること」を求めて,銀閣寺の近くにご縁をいただきました。最初の頃,野菜を求めて八百屋を見て回ったのですが,なかなか「命」を感じないんです。それで色々探し求めて,上賀茂とか美山の農家さんに足を運びました。ある農家の方から「百姓は野菜を作ってるんやない,いい土を作って種をまいて草取りして手入れをし,風雨や鳥獣被害にさらされながら育ててるんや。いい野菜なら美味しくできるのは当たり前。でき過ぎた物とかでき足らん物をどう使うかを考えるのが料理人の仕事ちゃうか」「欲しかったら全部持って帰り」と言われ,ごもっともだと全部いただいて帰りました。またその頃から大原で朝市が催されるようになり,たくさん野菜をいただきました。そのご縁で毎日畑へ寄せていただき,野原を回り料理に飾る草をつんだりと,お邪魔をしながら18年経ちました。

 私は花脊で生まれ,子供の頃,我が家では薪を割って薪運びをさせられました。街ではガスをひねったら火が付くのが羨ましかったです。しかし山に育ったおかげで,今では,街は恐らく仮の姿で,水道の蛇口をひねったら水が出るのは当たり前のことではない,生活をしているのではなく,させていただいていると強く感じます。毎日山に行って自然の命を頂戴して,店では料理と一緒に自然の命・力・気をお出ししています。

 野菜は良し悪しの区別なく,できるだけ全部食べ尽くすようにしています。大原や静原で毎朝発生する霧や冬の寒暖の差が野菜を美味しくする。美味しいものには出汁は要らない。食材自身のうまみや香りを生かすようにしている。すると,食材と話ができるようになり,気持ちが分かってきます。調理場では頑張っても料理が思い浮かばないのに,フッと椿をみると「ああ,赤カブでやろうか」と,赤カブのほうが教えてくれます。


赤カブによる蕪椿(かぶつばき)の調理実演

 野菜の調理法としては茹でると旨みが逃げてしまうので,焼くのが一番です。生でダメなら焼いて,焼いてダメなら炊いて,炊いてダメなら揚げて,揚げてダメなら炒めるっていうことを,食材と会話すると教えてくれます。

 年に一度小学校に食育の講演に行くのですが,4~5ヶ月前にお話をいただいたときに,実施するときのための野菜を花壇に植えて育ててもらっています。例えば大根を種から植えてカイワレを間引きながら大根を食べさせたら素晴らしい人生教育が出来ます,と提案しています。人間が食べるために野菜が出来ている訳じゃなくて,野菜は種を植えたらそこから成長していって,次の世代につなぐために花が咲いて実が出来る,そして命をつないでいくという大事なことを理解してもらいたいです。

 大原の朝市に,朝6時頃から多くのお客さんが来られて,作った人とお話をしてその商品を買うということは,品物としてではなく,「食」のプロセスや作り手の心・命を買いに来られていると感じます。そういう物を食べると五臓六腑に染み渡って,体が喜ぶのです。左京区はわずか20~30分でそんな自然環境に入れる,とても恵まれた珍しい大都市です。北は久多から花脊,鞍馬を経て大原・八瀬・静原,そして町に繋がっていきますが,自然が全てを支えてくれているのではないかと感じます。私はその中で毎日智恵を授かって料理を作りますが,皆さんにもそういう体験をこの左京区でしていただきたいと思います。  

(挿話1)野菜(草)の春について

 だいたい植物の春は11月くらいからです。秋の紅葉は,木から水分を止められてしまって,仕方なく木の葉が赤く色づくのですが,落葉したらそこからすぐ次の芽が出て野原には春の草が出てきます。それが自然の摂理なんです。冬になり外がマイナス20度くらいになっても,芽が出ているため,光合成して糖度を上げることによって凍らず,春になるとニョキニョキ顔を出してきます。驚かれますが,今の時期(1月),落ち葉の中からツクシやスギナ,フキノトウ,そしてタンポポやノビルも地面に這いつくばって出ています。私はこの頃,よく野原で朝からツクシを摘んでいます。

(挿話2)野菜の扱い方

 菜っ葉類を保存するとき,いつまでも青くしなびさせないようにと,袋に入れたり水に浸したりされていると,却って栄養分が減っていきます。水と風に弱いので,ちょっとしなびても野菜を新聞に包んで冷蔵庫に入れておき,使う時にたっぷりの水に一時間ほど浸けておいたら甦ります。野菜は仮死状態にした方が長持ちするのです。

(挿話3)ごはんについて

 20年前,東北の冷害などにより米不足が起き,緊急輸入米で外国の米が出回った時に,少しでも美味しいご飯を炊けるようにと,信楽の知人が土鍋を作りました。それを用いて炊いたごはんをいただくととても美味しく,昔のおくどさんのごはんの味が胸に甦りました。炊飯器はスイッチを入れた時点でもうごはんを炊いていることを忘れてしまいますが,土鍋で炊くと水と米が動いてどんどん水が減っていって吸収されていく様子がわかり,水がいっぱいに吸収された時プチプチっと焦げる音とおこげの香りがします。うちの店ではその煮えばなの甘くて香りのよいアルデンテの状態のものを最後に少し,メザシと共にお出ししています。量は食べられませんが,このごはんの美味しさを皆さんにも一度試していただきたいです。

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