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京都市教育委員会

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最終答申 1

ページ番号6399

2012年12月25日

 

1 変化と多様化に対応した「個」と「選択」の高等学校教育

 本構想委員会は,21世紀が「個」の時代であり,多様な価値観が尊重されて画一からの脱却が一層進行するものと予想する。青年たちには,他者とは異なる自己の存在を見いだし,主体的に生きることが求められる。同時に,自己とは異なる他者の存在を認めて尊重し,他者とともに生きる豊かな人間性が養われなければならない。
 「個」の時代であるとともに,21世紀はまた,「選択」の時代であると考えられる。青年たちはそれぞれの自立に向かって,主体的に選択する力をもつ必要がある。そのためには,基礎基本の充実が不可欠である。確かな基盤の上でこそ,さまざまな選択が可能となるからである。
 これらの点を踏まえ,本構想委員会は,学習・生活両面における基礎基本の重視と,個性に応じた教育の展開を基本的な軸として,「①一人ひとりの個性の尊重,②変化に対応する力の育成,③生涯学習社会への対応,④京都の地域的特性の尊重」を検討の視点とした。
 高等学校が,生徒の可能性を積極的に肯定する多面的な支援を行うことによって,21世紀を生きる青年を育成する場となるよう望むものである。

(1) これからの高等学校教育に求められるもの
 「個」を尊重し,「選択」を重視する教育は,生徒それぞれの個性や可能性を伸長する多面的な機会を提供することによって,生徒が自己実現を図るための学習活動を展開できるよう支援する教育である。人間の成長において特に欠かせないものは,他の人間との関係である。そのことに十分配慮して,生徒一人ひとりの成長過程を支援する教育を進めることが必要である。
 本構想委員会は,生徒一人ひとりの個性を尊重し,変化と多様化に対応し主体的に選択する力と,未来を切り拓くたくましい創造性と他者を尊重する豊かな人間性を育成することを,京都市立高等学校教育の理念として提示した。 
 

① 生徒一人ひとりの個性を尊重すること
 個性の尊重とは,生徒一人ひとりの存在や人格を尊重することを前提として,生徒の興味・関心,適性,能力,進路希望に応じて多様な学習機会をきめ細かに提供することである。生徒のもつさまざまな可能性をひきだし,その自己実現への取組を支援する教育活動を展開しなければならない。

 人が社会の一員として生きるにおいては,人権や福祉の意識,また倫理観の醸成が必要である。生徒の自己実現を支援する観点から,異なる価値観への理解や他者の存在への認識と協同を生み出し,社会性の育成を図る教育活動の展開が求められる。授業はもとより特別活動を含めたあらゆる場面における生徒の学習活動が,人間としての成長に結びつくよう,一層の工夫と配慮を希求する。

② 変化と多様化に対応し主体的に選択する力を育むこと
 変化への適応力や主体的な選択能力は,基礎基本を正しく修得した上に築かれる。各教科・科目における基礎基本を精選するとともに,知識や技能の教授についても画一的・一方的に行うのではなく,生徒自身が主体的に学習し,その学習内容を発展させていくことのできる教育活動を展開することが必要である。

 

 知ることは目的であると同時に手段である。獲得した知識を基盤として,個々に存在する知識や事象を,必要に応じて選び分けたり結び付けたりする力が必要である。この力を高めるには,生徒自身が多様な経験を通して学ぶ啓発的経験学習や,一定の課題に対して試行錯誤を伴いながら学んでいく課題解決学習等が効果的である。知識の修得を知識の活用に発展させるための経験を積む学習活動の在り方を追求することにより,主体的に判断し選択する力を育成することが求められる。

③ 未来を切り拓くたくましい創造性と他者を尊重する豊かな人間性を育むこと
 未来を切り拓くたくましい創造性とは,自己の理想とともに,普遍的な人類の理想を実現する力と,そこに至るため,集団や個人が直面する課題を克服する力を意味する。また,他者を尊重する豊かな人間性とは,自己の主体性の確立を前提として,自己と異なる存在としての他者を認め共生することを意味する。
 未来を切り拓くたくましい創造性と他者を尊重する豊かな人間性は,個別に存在するのではなく,極めて深い関連をもつものである。言い換えれば,これらの調和を図ることが教育の使命であると考える。
 一層複雑化する21世紀の社会にあって,理想の実現を追求する青年に必要なリーダーシップ,また,文化の享受能力や創造力等も,偶然に生まれるものではない。教科指導・生活指導・進路指導等,高等学校における多くの教育機能の有機的な結合が必要である。その結実が,生徒一人ひとりの個性の尊重と,変化と多様化に対応し主体的に選択する力の育成であり,それらを通して,たくましい創造性と豊かな人間性が育まれると考える。

 

 

(2) 求められる高等学校像
 これからの高等学校教育に求められる理念を具体化するため,生徒の個性に応じた多様な教育活動の展開と,生徒の選択に応じうる弾性のある高等学校の創造を求めたい。そのために,青年期に属する生徒の成長過程を支援する高等学校教育の在り方と,興味・関心,適性,能力,進路希望に応じて生徒が求める高等学校の在り方について示す。

 

① 生徒の成長過程を支援する高等学校教育の在り方
 教科・科目の学習において,生徒にとってもっとも重要であるのは,基礎基本の修得である。高等学校に学ぶすべての生徒が修得するべき基礎基本の具体的内容を明確にすることと,その学習内容を授業の改善や教育方法の多様化によって生徒一人ひとりに定着させることが求められる。その上に立って,生徒の個性に応じた学習,専門的な学習,発展的な学習等が展開されなければならない。必修科目・選択科目の適切な設定,単位認定の弾力化等,柔軟な教育課程により,生徒の選択幅の拡大を図ることが必要である。このことによって,生徒の個性に応じた学習活動の展開,学習内容の高度化・深化が可能となり、進路実現への展望が開かれる。
 高等学校に在籍する時期にはみずみずしい感動や喜びとともに,挫折や不安もあり,高揚と消沈が不連続に出現する。さまざまな行動となって表出される心理状況の変化は,生徒が成長の過程にある証しである。この観点から,各高等学校においては,生徒を理解し,受容する機能を一層高め,時に試行錯誤を伴いながらも生徒が自ら成長していく過程を支えることが必要である。同時に,将来にわたって安全で健康的な生活を営むことのできるよう,十分な配慮が望まれる。
 生徒一人ひとりが,学び,鍛練し,未来を考える場となる高等学校教育の在り方が求められている。

② 「選択される」ことを自覚した高等学校の在り方
 生徒のニーズが一層多様化する中,高等学校の在り方を検討する際に重要であるのは,高等学校が,学習する主体である生徒によって選択されるという視点である。高等学校におけるあらゆる教育活動が,常に生徒による評価を受けるという冷厳な事実を真摯に受け止めることが必要である。教育目標,教育方針,また教育計画等の具体化を進め,それらを生徒に提示することによって,生徒自身がよりよい高等学校生活を求めることができるよう配慮しなければならない。
 先に述べたとおり,各高等学校においては,基礎基本の徹底を図る授業の一層の改善や,丁寧なガイダンスを前提とする柔軟な教育課程による選択の拡大を推進することが求められる。高等学校が,画一的,一方的,閉鎖的な状況から,多面的,双方向的,開放的な状況へと進展することが強く望まれる。
 また,生徒の学習活動の個性化が進行するのに伴って,高等学校自体の個性化が求められている。激しく変化し複雑化する社会にあって,一層多様化する中学生の進路希望に応えうる高等学校教育改革を進めることが重要な課題である。もとより公教育においては公平性が重視されなければならない。現行公立高等学校教育制度の基調にある公平の原則を尊重しつつ,中学校との一層緊密な連携を前提として,生徒の希望に応えることのできる魅力ある高等学校を創造することが必要である。

 

 

 

 

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