[内容]
本事業は、一般家庭及び食堂等の事業所から排出されるバイオマス資源である廃食用植物油を回収し,メチルエステル(バイオデイーゼル燃料)として再生し、本市のごみ収集車や市バスの燃料として利活用することにより、バイオマス資源の利活用推進と同時に二酸化炭素排出量削減に取り組むものである。
[対象物の種類とその量]
廃食用植物油 - 約 5t/日
[計画規模]
バイオディーゼル燃料製造量 - 5,000 リットル/日
[総事業費とその財源]
建 設 費: 751,000千円(プラント工事請負金額:436,380千円)
財 源: 国庫補助金(二酸化炭素排出抑制対策事業等補助金(環境省))
(バイオマス利活用フロンティア推進事業補助金(農水省))
起債,一般財源
本市では、地球温暖化防止京都会議(COP3)の開催に先立ち、平成9年11月から、廃食用油から精製した環境負荷の小さいバイオディーゼル燃料をごみ収集車約220台に利用するとともに、平成 12年4月からは一部の市バス約80台の燃料(20%混合)としての使用を開始し、現在年間約150万リットルのバイオディーゼル燃料を使用することにより、同量の軽油の使用により発生する年間推定約4千トンの二酸化炭素排出を削減してきた。一方、平成9年8月からは家庭系の廃食用油のモデル回収を開始し、順次回収拠点を拡大してきており、現在,市内約1000拠点において年間約13万リットルを回収し、バイオディーゼル燃料の原料として再生利用している。また、学識経験者等による技術検討会を設置し、燃料品質の暫定規格(京都スタンダード)の策定にも取り組んできた。現在、その暫定規格を満足する品質の燃料を安定供給するため、平成16年6月から日量5,000リットルの燃料化プラントを稼動している。
本市では、地球温暖化の防止と持続可能な循環型社会の構築に向けて、市民・事業者及び行政の連携の下で、具体的な地域循環システムの取組みとして、家庭や事業所から排出される廃食用油を回収しディーゼル燃料として活用するバイオディーゼル燃料化事業を推進している。この燃料化事業の有用性としては、①化石燃料の使用抑制に伴う地球温暖化防止②環境にやさしい低公害燃料③市民啓発(環境意識の向上)としての役割④循環型社会の形成を促進する誘発剤等が挙げられる。
しかしながら、この様なバイオディーゼル燃料による地域循環システムの確立に向けては、今後技術や制度面での更なる充実が必要である。具体的には、①バイオディーゼル燃料の品質安定化と適合車両開発促進などのための品質規格の制定、②地域における廃食用油の回収や燃料化施設の整備に対する支援や燃料使用に伴う税制面での優遇措置などバイオディーゼル燃料化事業への支援制度の確立などが今後の課題である。

家庭から排出される廃食用油の回収は、地域に根ざした市民運動として、各地域単位で設立された市民、事業者、行政で構成される「地域ごみ減量推進会議」等が主体となって行っている。回収の手順は、拠点にポリタンクを設置し、月一回の頻度で集め、市が委託した民間業者によって回収されている。現在,市内約1000拠点において年間約13万リットルを回収しているが、将来の想定回収量としては、回収拠点の設置密度によって変化するが、現状の約300世帯に一箇所の回収拠点であれば、本市全域で年間約45万リットルが見込まれ、更に、約20世帯に一箇所と拠点の密度を高めると約150万リットルの回収が可能であると推定している。当面は、市民、事業者、行政の連携を強化して、回収拠点が設置されてない未設置学区の解消に向けた取組を進めている。
バイオディーゼル燃料の製造方法は、廃食用油にメタノールを添加し、アルカリ触媒により脂肪酸のメチルエステルへ変換するもので、副産物としてグリセリンができる。

①バイオディーゼル燃料の原料についての課題
バイオディーゼル燃料の品質は、適切に製造すれば原料廃食用油の劣化(特に油の劣化度を示す酸価)の影響はそれほど受けないが、劣化があまり大きいと燃料の収率が悪くなることが懸念される。したがって、劣化の進んだ廃食用油と比較的劣化の進んでいない廃食用油との原料段階での混合による均一化を考慮することが重要である。
②バイオディーゼル燃料の精製工程での課題
反応により生成されたメチルエステルを精製燃料とするために、水洗浄により遊離グリセリンや残留メタノールなどの不純物が除去される。その際、洗浄廃水として含油水が排出される。今後の課題として、このグリセリンや含油廃水を有効利用等することによりプラントのクローズド化を考慮する必要がある。一例として、グリセリンは燃焼させることにより温水又は蒸気などで熱回収して有効利用することが考えられる。このグリセリンの燃焼による熱回収は、独自の設備を設置する方法もあるが、近隣の廃棄物処理施設で助燃材として燃焼させ、そこで発生した蒸気や電気をバイオディーゼル燃料化プラントに供給することも大きな意味でクローズド化と考えられる。一方、含油廃水は、近隣の廃棄物処理施設の浄化機能を活用する方法以外に、本市のもうひとつのバイオマス利活用への取組みであるメタン菌による生ごみのバイオガス化設備における原料として利用の可能性も検討する価値があると考える。この方法が可能であれば、発生したバイオガスによって発電された電気をバイオディーゼル燃料化プラントに供給することにより大きな意味でのクローズド化になる。

③バイオディーゼル燃料の性状面での課題
バイオディーゼル燃料の性状では、低温流動性と長期保管や使用する際の酸化及び熱安定性の課題がある。これらは、原料廃食用油中の飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有比率の影響を受ける。例えば、不飽和脂肪酸量が多ければ多いほど低温流動性は良くなるが酸化及び熱安定性は悪くなる。飽和脂肪酸が多い場合はその逆の結果となる。したがって、これらの課題に対しては流動点降下剤や酸化防止剤の添加の他に、原料段階や精製段階での飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の含有比率の調整や低温化による分離も検討する必要があると考える。
本市では、バイオディーゼル燃料の使用に伴うごみ収集車両に及ぼす影響について、短期及び長期的影響について各種調査を実施している。
①短期的影響についての現状と課題
長期規制車両、いわゆる平成12年以降に導入された新型車両において、燃料フィルターや噴射ポンプなどの燃料供給系統で一部燃料の影響によると思われる不具合現象が認められた。原因調査を実施した結果、燃料フィルターの付着物や噴射ポンプ内の残留物は、燃料の製造過程で副次的に生成するグリセリンや反応触媒のカリウム等が主成分であることが確認され、不具合現象は、精製不十分な燃料の使用により生じたことが推定された。したがって、バイオディーゼル燃料の精製については、可能な限り不純物を除去し、燃料の純度を上げることが重要である。
②長期的影響についての現状と課題
バイオディーゼル燃料化事業開始後、約4年間にわたってニート使用(バイオディーゼル燃料100%)した車両のゴムホース類や燃料配管の劣化状況を調査した。その結果、NBR(二トリルブチルゴム)のゴムホースについては、内面にミクロクラックが発生し、交換時期に達していることが明らかになったが、現在、ゴムの部分は、新車購入時にバイオディーゼル燃料に適合したフッ素系ゴムや布巻きゴムを採用しているため、特に問題とはなっていない。また、当初懸念されていた燃料配管内部の銅メッキについても、溶けた痕跡は確認できなかった。なお、同じ燃料配管でもより高温になるリターンパイプでは、軽油使用時と同様に腐食の進行は認められており、より長期の影響を継続して確認する必要はある。

③自動車メーカーの保証の現状と課題
わが国の自動車メーカーに対するアンケート調査によると、バイオディーゼル燃料については再生可能なエネルギーとして非常に興味は示しているものの、燃料規格もない状態では適合車両開発等の対応は難しいというのがおおよその回答であった。また、軽油使用を前提としたディーゼルエンジン車両への使用についても原則メーカーの保証は得られないことから、車両に不具合が生じた場合は、使用者及び燃料供給者の責任で対応せざるをえない状況である。一方、バイオマスエネルギーの利用を積極的に進めようとする欧米では、バイオディーゼル燃料の使用を前提とした適合車両の開発も行われ、Mercedes―Benz, Volkswagen,Peugeot等の車両メーカーは車種によっては最新のコモンレール式高圧噴射ポンプを使用した車両にも保証することを示している事例がある。
今後、広くバイオディーゼル燃料を普及させるためには、車両影響を考慮した燃料の品質規格を設定することが重要である。バイオディーゼル燃料の先進地域である欧米では既に燃料として品質が規格化されているが、わが国ではまだ規格化されていなかったが、最近、国においても、品質確保法の観点からその検討が開始された。

地域資源リサイクルの推進及び地球温暖化防止の促進の観点から、バイオディーゼル燃料の導入に積極的に取り組む本市では、実車走行から得られた知見に加えて、欧州統一規格の案や欧米の規格事例を基礎情報として、新型車両にも適用できるバイオディーゼル燃料の品質を確保するために暫定規格(京都スタンダード)を策定した。特に、冬季低温時の影響として、流動点と目詰点については、京都での冬季の最低気温を考慮した数値とした。また、フィルターの目詰りや粘性を高め噴射特性にも影響を及ぼす遊離グリセリン、未反応油等のグリセライド類については、車両影響を考慮した厳しい数値を設定した。なお、自動車排ガスの規制強化に伴ってエンジン等が変化していくことに対応し、円滑に燃料化事業を推進するためには、次に示す様な技術的課題を、今後とも継続して調査・検討することが重要である。

地球温暖化防止京都会議(COP3)の開催都市である本市において、現在、日量5,000リットルの燃料化プラントが、平成16年6月から稼動しており、これらの取組みを契機に、地域のバイオマス資源の利活用や地球温暖化防止への取組みが、市民・事業者・行政の連携のもとに、本市においてより一層促進されると共に、全国にも拡大させていくことが重要である。

京都市では,バイオディーゼル燃料化事業にあたって,種々の問題の原因解明と解決のため2001年から多くの分野の学識経験者や専門家から成るバイオディーゼル燃料化事業技術検討会を設けており,この技術検討会で得られた知見や経験の集大成とも言えるガイドブックが池上詢技術検討会委員長(福井工業大学教授,京都大学名誉教授)の編纂により2006年9月に発刊された。
本書は,バイオディーゼル燃料の一般的性質,製造法及び利用法並びに諸問題,国内外のバイオディーゼル燃料製造・利用事業の動向及び京都市バイオディーゼル燃料化事業技術検討会での検討成果をもとに,今後のバイオディーゼル燃料化事業の円滑な推進・普及を目指した,事業化に際して特に配慮すべき諸事項,起こりうる諸問題への対策,最適な運転方法などの技術マニュアルを紹介している。
書 名 バイオディーゼル・ハンドブック~地球温暖化の防止と循環型社会に向けて~
編 纂 池上 詢(福井大学教授,京都大学名誉教授)
発行所 株式会社日報アイ・ビー
発売元 日報出版株式会社