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京都市上京区

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上京区基本計画(平成13年~22年) 第1章

ページ番号14928

2015年3月27日

上京区のまちと暮らしーまちづくりの課題

1 上京区の個性

 

 上京区の個性は,その歴史と文化にあることはいうまでもなく,これからのまちづくりも,この豊かな歴史に培われた個性を活かしていくことが大切である。このため,歴史,文化,産業,暮らしなど,各方面にわたり,上京区の特徴を分析していくこととする。

 

(1)まちの変遷と成り立ち
平安京の中心であり続けたまち
 上京は,平安京以来1200年を超える歴史を有し,時代の流れとともにまちは変化し,今日の姿となった。平安京は,一条通を北限として整然と区画され,平安末期にはおおむね二条通を境として北と南に分離,北半分は南北朝から室町時代に「上京」と呼ばれるようになった。平安京の中心であった内裏は,火災での焼失等を経ながら東方の現在の京都御所付近に位置を変え,それをとりまくように公家邸宅が集積した。また,室町幕府の花の御所も設けられ,上京の東部は公武の政治的な中心地となった。

 

近世のまちの骨格と情緒を今日に残すまち
 上京の西部では,応仁の乱以後,北部は西陣機業地となり,今日に至っている。西南部は,いわゆる「内野」と呼ばれる野に帰したが,近世には,豊臣秀吉が聚楽第を造営し,破壊された後は,二条城を中心とする新たな市街地が開発された。こうして,市街地や道路構成などまちの骨格ができあがり,江戸期を通じて市街地は成熟した。通りをつなぐ「図子」や行き止まりの「袋路」も多く,古い歴史とまちなみの情緒を醸している。

 

近代の都市発展を経て成熟段階に至ったまち
 明治12年,京都のまちに区制が施行され,「上京区」が誕生した。明治以降の人口増加,都市発展の時代に入ると,おおむね鞍馬口通付近を北辺としていた市街地は,徐々に北へ拡大し,昭和4年には左京区及び中京区を分区し,昭和30年には北区を分区して,現在の上京区(面積7.11km2)が成立した。
 明治から昭和にかけて,東西(今出川通,丸太町通),南北(河原町通,烏丸通,堀川通,千本通)の幹線道路が整備され,昭和56年に地下鉄烏丸線が完成して,現在のまちの基本的な姿がほぼ完成した。

 

(2)自然・歴史・文化
豊かな自然環境とまちのあちこちに残る歴史資源

 自然環境としては,京都の都心の公園では最大の面積を有する京都御苑(約65ha)があり,大規模な緑のオープンスペースとして,市民や観光客の憩いの場となっている。また,区の東端を流れる鴨川は,潤いある水辺空間を人々に提供している。
 さらに,相国寺や北野天満宮をはじめ,由緒ある社寺が数多くあり,都会のオアシス的な空間となっている。こうした社寺をはじめ,様々な文化遺産が豊富に分布しており,歴史を今に伝える大切な役割を果たしている。

 

上京の誇る多彩な伝統文化
 たび重なる戦乱や火災等を経ながらも,長い歴史に磨かれた質の高い文化が蓄積されている。
 茶道家元の表千家,裏千家,武者小路千家の三千家はその代表的なもので,全国の茶道の中心地として,伝統文化の継承はもとより,世界への日本文化発信の拠点ともなっている。また,茶道にかかわりの深い「千家十職」と呼ばれる茶道具の職方も,工芸の世界に独自の技術と作風を継承している。さらに,洗練された和菓子の老舗も多く,様々な分野で質の高い工芸文化が継承されている。
 京都を代表する伝統産業である西陣織は,長い歴史を通じて,宮中や幕府,社寺等の庇護を受けながら,我が国の代表的な織物産業として発展し,多様な図案や繊細な表現技法など,質の高いデザイン文化を蓄積し,発信してきた。
 また,華道や和歌,能・狂言などの伝統芸能も盛んであり,歴史的な伝承や行事も継承され,区民の間では幅広い文化活動が盛んに行われている。そのほか,有形・無形の文化財が数多く残され,歴史文化の宝庫とも呼べる地域である。

 

学術文化のまち上京
 こうした歴史・伝統・文化の蓄積を背景に,上京区には同志社大学,同志社女子大学,京都府立医科大学,また,京都市の歴史研究の拠点となる歴史資料館,さらに,埋蔵文化財研究所及び考古資料館などがあり,学術・文化の拠点としての役割を果たしている。
 多くの研究者や学生が区内で生活し,地域と結びついた活動に取り組むとともに,国際的な学術文化交流も盛んに行われている。

 

(3)上京区の暮らし
人口と世帯の動向ー緩やかになりつつある人口減少
 区の人口は,昭和30年の約14万9千人をピークに減少し,平成12年10月1日現在で84,114人(国勢調査)となっている。ただし,近年,人口減少のカーブは徐々になだらかになりつつある。なお,昭和35年当時の人口密度は209人/haもあり,当時は相当過密な状態にあったことがうかがえる。
 人口減少と併せて高齢化が進んでおり,65歳以上人口の高齢者比率は22.8%(平成12年4月1日京都市推計人口)と,市内では東山区(26.3%)に次いで2番目に高い。
 また,1世帯当たりの世帯人員も減少しており,昭和35年の4.16人から,平成12年には2.11人にまで減少している。住宅事情などから親と同居できない若年世代の区外への転出,ワンルームマンションなどによる若年単身者の増加,少子化などがその背景にあると考えられる。

 

個性ある17の学区
 上京区では,明治期の番組小学校設立の際からの学区自治が連綿と継承されている。今日でも,住民福祉協議会などを中心に,各種団体が連携して様々な活動が展開されている。
 また,学区ごとに,環境整備,福祉のまちづくり,自主防災,地域振興,生涯学習,都市農村交流など,他にはない個性的な取組を打ち出しており,ボランティアの参画や行政の支援を得た活動が活発に進められている。
 そのほか,北区,中京区,下京区も含めた堀川沿いの多くの学区や団体が連携した堀川再生の取組をはじめ,商店街の活性化,町家の保全・活用等の取組,町内ぐるみの活動など,多彩なタイプのまちづくり活動が広がりつつある。

 

職住共存のまち
 上京区は,西陣織などの伝統産業をはじめとする産業と暮らしが結びついた「職住共存」のまちとして発展してきた。
 しかし,区の中心的産業である西陣織産業は,昭和40年代後半をピークに,消費者の和装(着物)離れ,生産機能の海外移転による空洞化,近年の不況等により,生産量は減少してきている。そして,多くの工程が組み合わさり,まちの構造をかたちづくってきた分業体制は徐々に崩れつつあり,伝統的な技術も失われつつある。
 そうした中,業界では西陣の再活性化に向け,西陣ブランドを活かした新商品やデザインの開発,観光と結びつけた産業振興等の取組が進められている。
 また,身近な暮らしを支える商店街については,地域産業の停滞や上京区周辺での大型店舗の立地,担い手の高齢化等により,経営環境は徐々に困難さを増している。そのため,活性化に向け,様々なイベントや,高齢者向けサービス,美しい商店街づくり,地下駐車場整備など,個性的な商店街づくりの取組が進められている。

 

まちなみ
 「うなぎの寝床」に例えられる「町家」のまちなみは,上京区の原風景といえる。特に,西陣地域では,機織に適した「織屋建」の建ち並ぶ特徴的な景観が形成されている。
 しかし,こうした町家の多くは老朽化が進み,居住者も高齢者が多く,改修等が進みにくくなっている。また,「バブル経済」以降,町家がマンションや建売住宅,駐車場となったものも多く,まちなみ景観や居住環境の面で問題が生じている。
 そうした中,町家の改修や空き家となった町家のあっせんの取組など,市民主導による町家の活用も進みつつある。きめ細かい福祉・保健・医療  高齢化の進む中で,区内には,デイサービスセンター(上京,出水,聚楽など)等の福祉施設が徐々に整備されてきており,さらに,小川小学校跡地には特別養護老人ホームをはじめとした高齢者の総合福祉施設が建設されるなど,地域に根ざした福祉・健康活動の拠点の充実が図られている。
 福祉活動の担い手としては,上京区社会福祉協議会がその中心的な役割を担うとともに,学区社協組織を核として,住民・行政・ボランティアの連携による高齢者ケアの活動,配食サービス等のきめ細かいサービス,健康すこやか学級(ミニデイサービス)など,高齢者が安心して地域に住み続けられるための多彩な取組が進められている。
 保健・医療の面では,上京東部医師会と西陣医師会の2医師会を核として,昭和51年の地域医療計画の策定を契機として,以降,医師会と住民団体との協力による健康診断が続けられ,また平成9年「地域医療連絡協議会」も発足し,さらにきめ細かい地域保健・医療の取組が進められている。今後は,地域において,日常生活の中で糖尿病や高血圧予防などの生活習慣病対策が育っていくような取組が必要となっている。

 

2 まちづくりの基本課題

 

 上京区には様々な課題が山積しているが,その課題の大部分は,京都市全体に共通する課題でもあり,京都市基本計画の中で基本的な対応方向が示されている。
 したがって,この計画においては,上京区に特化した課題の解決に向けた道筋を示すことに主眼を置き,上京区の個性を活かしたまちづくりを行うという視点から整理すると,次の三つの事項が課題となっている。

 

(1) 歴史・伝統・文化を活かした上京らしいまちづくりに向けた課題
○ 区内に立地する社寺やまちなみなどの歴史資源や,伝統文化,ものづくり技術,民俗行事など,有形無形の歴史文化を保全し,次世代に継承していく必要がある。
○ そうした個性ある資源を,区民の日常生活や地域産業,観光などに積極的に活かしていくことによって,生きた形で維持継承していく必要がある。
○ さらに,歴史や伝統を踏まえつつ,21世紀の新しい上京文化を生み出していくと いう創造的な姿勢を持ちながら,上京らしいまちづくりを進めていく必要がある。

 

(2)西陣織をはじめとした都心産業の活性化に向けた課題
○ 生産が減少しつつある西陣機業については,新たな市場の開拓や伝統技術と先端技術の融合等を通じて,地域の基盤的な産業として再活性化を図っていく必要がある。
○ さらに,「西陣」のブランドを活かした新たな産業創出など,地域産業の裾野を広げていく必要がある。
○ また,高齢社会における住民ニーズに的確に対応する,地域に密着した商業・サービス業の振興を図っていく必要がある。

 

(3)安心して暮らせるコミュニティづくりに向けた課題
○ 人口減少や高齢化の進む中,安全な住環境の整備や地域防災力の強化,福祉・保健・医療活動の活性化などを通じて,子どもから高齢者まで,安心して住み続けられる条件整備を行っていく必要がある。
○ 明治以来上京区に根づいている元学区を核とした住民主体のコミュニティ活動をさらに発展,振興させていく必要がある。
○ さらには,文化,産業をはじめ,地域に根ざした各種団体やコミュニティの活動など,21世紀上京区のまちづくりの新しい担い手となる人づくりを進めていく必要がある。