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ベーシック35/誠信の交わり4

[2011年4月8日]
誠信の交わり
滋野浩毅さん

滋野浩毅さん

 大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー,京都市伝統産業活性化検討委員会委員等。
 地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。

4.「いい会社」とは

石田梅岩肖像画/明倫舎蔵


 「景気回復」の声が聞こえてきました。日銀短観や様々なデータを見ると,景気は上向きであることは事実です。しかし,人々の生活が本当に「楽になったか」となると,どうもそうでもないようで,生活の中ではあまり実感できない,というのが正直なところのようです。
 就職活動を間近に控えた学生がこんなことを言っていました。「景気回復で就職率は良くなるかもしれないけれど,生活上の実感はないし,それでまた企業が儲けばかりに走るのもいやだな」この言葉は,これから社会に出る学生の不安であるとともに,生活者にとっての不安でもあると思います。

石田梅岩肖像画/明倫舎蔵

 

 最近,市民の安全・安心を脅かす企業の不祥事が相次ぐ中,CSR(企業の社会的責任)という言葉を新聞紙上などで目にすることが増えてきました。CSRとは,今回の「ベーシック」の特集記事でもあるように,環境,社会・倫理,雇用などの関係に配慮した,「企業市民」としての企業活動のことです。CSRという言葉は欧米が起源ですが,日本にも古くから石田梅岩(いしだ ばいがん)※2の説いた「石門心学(せきもんしんがく)」や,近江商人の「三方良し」,また,老舗に見られる「家訓」など,はじめに事業における倫理や道徳観がありました。商売における利益は「手段」であり,それによって顧客や社会に貢献し,信頼を得ると考える文化が,日本の社会にはもともとあったのです。

 

 

KES認証登録証


 こうした考え方は,今日でも京都では比較的残っているような気がします。老舗や経営者の哲学が見える企業が多いことが,その理由のひとつとして挙げられます。もうひとつ忘れてはならないのは,京都議定書誕生の地・京都発の環境マネジメントシステム「KES※3」の存在です。中小企業が多い京都ならではの「KES」が誕生して3年,その取組は京都を越えて全国に広がり,この7月までに累計353もの事業所等が認証を取得するなど,ISO14001と並ぶ環境規格として育っています。

KES認証登録証

 

 バブル崩壊から10年余りがたち,いわゆる「失われた10年」を経た今,社会は,環境問題とその解決に向けての取組,消費者の品質や安全に対する関心の高まり,ボランティアやコミュニティビジネスなど,市民セクターの興隆といった変化が生まれました。一方,企業では,不況とグローバリゼーションの中,コストの削減やリストラなど,血のにじむような努力をされてきたことは誰もが認めるところでしょう。しかし,その中で,安全や安心,もっと突き詰めれば,企業の持つ哲学のようなものまでそぎ落としてしまったのであれば,それは大変残念なことです。それに,リストラで人員が少なくなっている中での景気回復が過重な労働につながるのであれば,従業員にとって,会社はいきいきと仕事のできる環境ではなくなってしまいます。
 景気回復も,企業の業績アップも,従業員や取引先,あるいは環境などを犠牲にしたものでは本末転倒です。「きれい事」でなく,環境対策や人権問題解決への取組などは,企業イメージの向上や従業員の幸せにもつながり,ひいては会社の業績に結びつくものです。従業員にも社会にもやさしい,本当に「いい会社」が選ばれる時代が来ているのではないでしょうか。

 

参考文献 日本経済新聞夕刊 ドキュメント挑戦「CSRで競う」2004年6月28日~7月30日連載

 

 

※1 「誠信」
江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒(こうりんていせい)』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。

 

※2  石田梅岩(1685-1744)
江戸中期の心学者で石門心学の祖。丹波桑田郡東懸村(現在の亀岡市東別院町)出身で,京都の商家に奉公に出る。45歳のときに学塾を開き,神,儒,仏三教を合わせた実践的倫理思想を平易に説く。主著に『都鄙問答(とひもんどう)』『斉家論(せいかろん)』。

※3  KES…KES Environmental Management System Standard の略。
「KES・環境マネジメントシステム・スタンダード」
KES認証事業部  「KES

 

 

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