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ベーシック42/誠信の交わり 11

[2011年4月8日]
誠信の交わり
滋野浩毅さん

滋野浩毅さん

 大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー等。
 地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。

11. 十人十色

 

 ここ数年,「仕事・雇用」に関する原稿依頼や講演をお引き受けすることが多くなりましたが,多様な人材を上手に組織に組み込んでいるところは,職場そのものが生き生きとしているように見えます。職場には様々な人がいますが,その一人一人の力が総合的に機能することで目的が達成されます。もちろん,時には摩擦も生じますが,それも組織を成長させたり個人の能力を高めたりするうえで有効なことだと思います。
 これまで,わが国の職場は,「家族主義的な結束力」が強さの源泉とされてきました。しかし,どうもいつの間にかその「結束力」を都合よく解釈し,同質性の維持とそれに沿わない者の排除へとすりかえてきたのではないでしょうか。しかし,そもそも人にとって,年齢,性別,国籍,出生…全てが「違い」なのです。つまり,「家族主義的な結束力」は,それぞれの「違い」があることが前提のはずです。
 さて,違いといえば,「障がいの有無」もその一つです。雇用支援や施設におけるバリアフリーの導入など,制度そのものは整いつつあります。しかし,重要なのは,職場の中に障がいの有無を問わずともに働ける環境や意識があるかということであり,言い換えれば,「心のバリアフリー」があるかどうかだと思います。
 現在,私が一緒に仕事をしているパートナーの一人には,聴覚に障がいがあります。しかし,文書のやり取りなどの業務は,メールとFAXで十分に事足りますし,コミュニケーションは,手話を使えなくとも筆談で十分に行うことができます。確かに,コミュニケーションにかかる時間は多くなりますが,こちらの意図をしっかり理解して,とても素晴らしい仕事をしてくれます。
 それまで,障がいのある方と一緒に仕事をした経験はなかったので,最初はもちろん不安もありました。しかし,一緒に仕事をする中で,何よりも重要なのは真摯にこちらの考えを伝えることであり,コミュニケーションの手段は,それぞれに合ったものを選べばよいということに気付きました。今では,仕事のみならず,様々な悩みを打ち明けることのできるかけがえのない存在です。
 人は生まれてきたときからそれぞれが異なり,様々な環境を経る中で,さらに個性豊かになっていきます。まさに「十人十色」です。それぞれの持つ「色」が経糸と緯糸に織り成されることで,初めて1枚の美しい布,つまり大きな成果が生まれるのです。

 

 私が約3年間担当させていただいた「誠信の交わり」は,今回をもって最終回となります。これまで,私が仕事上であるいは普段考えていることで,人権に関わる様々な問題をエッセイ風で綴ってきましたが,私が何より伝えたかったのは,「違い」を越えるものは,相手の立場に立って思いやる心や他者への尊敬の念,信頼であり,これこそ今から300年ほど前に雨森芳洲が唱えた「誠信の交わり」に他なりません。
 皆さんも,職場などでの「他者との関係」の中で,うれしい思いをすることもあれば,辛い思いをすることもあると思います。そんな時,「誠信」という言葉を心の片隅に置かれてはいかがでしょうか。
 最後になりましたが,長い間御愛読ありがとうございました。

 

※1「誠信」 江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。

 

 

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