

滋野浩毅さん
大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー,「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」チーフコーディネーター等。
地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。
長かった不況を乗り越えて,景気は上向いてきており,中小企業も含めた本格的な景気回復が期待されます。
日本経済は「失われた10年」を経て,体質改善が進み,足腰の強いものになったような印象を受けます。
ところが,日本社会が耐え,苦しんだ先にあった社会は,決してバラ色のものだけではありませんでした。それは,「格差社会」の問題です。「勝ち組・負け組」,「上流・下流」といった言葉をテーマにした書籍が多数出版されているほか,新聞やテレビの特集でも採り上げられており,最近では,国会でも,格差の拡大の有無などについて議論がなされています。
行き過ぎた格差拡大は,世代間や職業間,生まれ育った環境において,個人の努力だけでは埋めがたい格差が生じることを意味します。個人の努力が報われないことでもたらされる歪みは,社会の活力をそぎかねないばかりでなく,事件や社会不安を引き起こしたり,また,新たな「差別」を生み出したりする恐れすらあります。
日本社会の特徴は,職業,思想,宗教などにおいて,長い歴史や地域ごとに人文,自然が混じりあって形成された風土の中で培われた「多様性」にありました。このことが,幕末維新,太平洋戦争の敗戦などといった歴史の中で幾度となく訪れた危機や混乱に際し,時に対抗し,時に順応しながらも,困難を乗り越えて新しい時代を築いていく,という知恵を蓄えました。また,その中で活躍した人物も,決して一握りのエリートではなく,社会の幅広い層から現れた者たちでした。こうしたことが,社会の「しなやかな強さ」を生み,連綿と続く歴史を築き上げてきたといえるのではないかと思います。
かつていわれた「一億総中流」(もはやこの言葉も懐かしいものになりましたが)が,望ましい社会だとは思えませんが,全てを「勝ちか負けか」,「白か黒か」と二極分化的に考えたり,必要以上にあおり,過当な競争に駆り立てたりする世の中には,多様性を見落としたり,無視したりする危険性もはらんでいると思います。
「遊び」や「のりしろ」のない社会は大変息苦しく,人はそこから逃れようとして,枠に当てはまらない人や考え方を排除しようという不寛容を生みます。職場においても,「経済効率一辺倒」ではなく,寛容さや遊びといった人間的な要素を決して捨てるべきではないと思います。歴史的に見ても,長い目で見れば,多様性のある社会の方が,社会変化に適応できるのではないでしょうか。
参考 YOMIURI ON-LINE(読売新聞)「大手小町 生活ふぉーらむ『勝ち組』『負け組』どう思う?」
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/forum/20040428.htm
消費社会白書2006より『コラム 勝ち組・負け組意識』
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/report/2006/hakusho2006sample.html
※1 「誠信」
江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。
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