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ベーシック39/誠信の交わり 8

[2011年4月8日]
誠信の交わり
滋野浩毅さん

滋野浩毅さん

 大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー,「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」チーフコーディネーター等。
 地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。

8.情報と人権

 

 ブログ※2やソーシャルネットワーキングサービス(SNS)※3の普及で,個人がネット上で気軽に情報発信することが可能になりました。
 現在,このようにして個人個人が「記者」としてブログ上にアップした「記事」を,多くの人が読むことによって社会的影響を与えたり,そこでの記事や寄せられたコメントなどが書籍として出版されたりするという例も出てきています。
 アメリカや韓国等では,すでに,災害時における現地の状況をリアルタイムで報告することや,大統領選での選挙活動など,政治や市民運動の分野でもブログが大きな力を持ち始めており,ブログなどを活用した「市民メディア」が活発になることは,ジャーナリズムの活性化につながることも示唆しています。
 また,わが国においても,企業が自らのPR手段として,ブログを使って消費者の生の声を集めながらファンを増やし,新製品や新サービスなどの情報を「口コミ情報」として浸透させる手法が広がっています。
 しかし,記者としての経験のない人たちや教育を受けていない人たちが,不特定多数の人たちに向けて情報を発信するということは,プライバシーや人権侵害につながる記述が無意識のうちに書かれたり,未公表の,あるいは不確定な情報が漏洩することによって,それが流布してしまうという危険性もあります。
 実は,私自身ブログを立ち上げ,自分が関わった出来事を,「京都」という切り口で書き綴っていますが,いくつか気をつけていることがあります。一つ目は,特定の個人名を書くことを極力控えることです。これは,その人の名前などが検索エンジンに引っかかってしまうことにより,その人に不利益を与える可能性があるかもしれないからです。二つ目は,発表前,もしくは不確定な情報は,事前に掲載の確認をする,もしくは書かないことにしています。そして,記事の内容は,事実と個人的見解とをきっちり分けて示すようにしています。
 さて,企業におけるインターネット活用の利点は,社会や顧客,そして従業員や株主などのステークホルダー(利害関係者)に向けた情報公開と,コミュニケーションの円滑化にあると思います。「環境報告書」や「CSR報告書」の類を,インターネット上からダウンロードできるようにしている企業も数多く見かけます。
 ところが,先述のとおり,個人の情報発信が容易になったことから,企業や団体の管理の及ばない範囲において,一個人のブログなどへの安易な書き込みが,問題を引き起こす可能性も出てきました。例えば,企業の機密情報を個人のブログで書き込み,それが元でその会社を解雇された例,ブログに書き込まれた個人的感想がもとで,その人が働く企業に苦情が殺到し,会社が謝罪をしなければならなくなった例など,今後も起こりうる問題だけに注意が必要です。
 更に,平成17年4月に,「個人情報保護法」が施行されました。情報公開と個人情報の保護との兼ね合いについては,多くの企業や団体でも頭を悩ませているところだと思いますが,現在では,インターネットによって個人からの自由な情報発信が容易にできることから,新たに従業員からの情報発信についてもしっかりしたルールを設ける必要性も出てきました。社内での情報発信のルールについては,従業員ともよく話し合い,たとえ個人のブログなどでも業務上知りえた秘密を無断で掲載しないといったことや,個人情報データの自宅持ち帰り禁止など,プライバシーポリシーを確立したうえで,インターネットと上手に付き合うのが,これからの企業,団体にとって経営リスクを未然に防ぐ方法であると思います。

 

※1 「誠信」
江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。

 

※2 「ブログ」
ウェブ(web)と日記(log)の合成語。ホームページ上の日記という意味で,簡単に更新・公開できるほか,他人のブログにコメントやトラックバック(関連記事へのリンク)ができるといった機能を持つ。

 

※3 「ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)」
参加者が互いに紹介しあって,交友関係を広げることを目的としたコミュニティ型のウェブサイト。既存加入者からの紹介がないと閲覧も書き込みもできないため,ネットの匿名性に起因する問題が起こりにくいという利点を持つ。

 

 

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