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ベーシック38/誠信の交わり 7

[2011年4月8日]
誠信の交わり
滋野浩毅さん

滋野浩毅さん

 大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー,「京(みやこ)のアジェンダ21フォーラム」チーフコーディネーター等。
 地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。

7.組織の風通し

 

 最近,企業や団体による事件,事故,不祥事と,それへの対応のまずさが指摘されることが増えてきました。それがもとで信頼を失ったり,ひいては,会社などそのものの存続を危うくさせてしまうことも少なくありません。問題が起こったときに,誠実に対応していれば,そこまでことを大きくすることもなかっただろうし,むしろ支援者が多く現れただろうに,と思うこともしばしばあります。
 こうした問題をひも解いてみると,組織内の「風通し」の悪さや取引関係の不透明さ,いびつさなどに原因のひとつがあることに気付きます。
 組織に対する個人,得意先に対する下請け,上司に対する部下,先輩に対する後輩など,実社会において力関係の強弱は,現実問題として存在します。しかし,こうした力関係が,弱い立場の者が強い側の非を指摘することを,言葉や態度,あるいは取引における圧力で封じるような「ものが言えない」関係になってしまったとき,組織の暴走が始まるように思えます。とはいうものの,「上の者には言いにくい」,「(部下の言い分は)わかっているけれど,聞き入れることができない」という場面が多いのもまた事実です。
 では,どうすればいいのでしょうか。そこで,「社会全体として見た場合,それは正しいことなのか」,「相手の意見はどのような観点から述べられているのか」ということを常に意識しながら接することが,特に強い立場の者に求められます。そのためには,まず,「聞く耳を持つこと」,「時に一歩引いて対象を見てみること」が必要なのではないでしょうか。そうすることで,異なる視点からの軌道修正や,あるいは新たな問題の解決策にもつながり,ひいては,事故や不祥事を未然に防ぐ安全装置の役割をも果たすのです。

 上司と部下,先輩と後輩,あるいは商売の取引における関係などは,たとえ厳しいものであっても,そこに根拠や信頼があるものでなければなりません。また,目標のない,あるいは根拠のない精神主義では人や組織を動かすことはできないでしょう。ましてや,単に「気に入らない」といったいじめは言語道断です。厳しさの中にも,「お互い目標を達成しよう」とか「一人前に育てよう」といった優しさや愛情がなければ,風通しの良い関係にはなりにくいのです。

 

高瀬川

高瀬川  

 

 伝統芸能や伝統工芸などにおける「師弟関係」は厳しいものですが,師匠は弟子を一人前にして世に送り出すという使命を持って接しています。また,弟子も,それに耐え,学んでいくことで一人前になれるという,お互いの信頼関係で成り立っているように思えます。しかし,今,組織の中で,「お互いの信頼関係」を醸成しているでしょうか。「最近の若い者は怒るとすぐにへこむ,すねる」と嘆く前に,お互いの信頼関係を構築し,明確な目標や到達点を与えてみてはいかがでしょうか。「最近の若い者」は決して厳しさを避けているのではないと思います。

 

 

※1 「誠信」
江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒(こうりんていせい)』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。

 

 

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