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ベーシック37/誠信の交わり 6

[2011年4月8日]
誠信の交わり
滋野浩毅さん

滋野浩毅さん

 大学卒業後,室町の和装メーカー勤務を経て,立命館大学大学院政策科学研究科在学中の1998年8月,京都市まちづくり塾支援事業「夢・ロマン・京都シティ」のまちづくり塾企画募集に「京都ものづくり塾」を応募,採択される。現在,まちづくり・地域産業・文化支援NPO「京都ものづくり塾」代表,京都・まちブランドプロジェクト「楽洛まちぶら会」メンバー,京都市伝統産業活性化検討委員会委員等。
 地域産業が地域文化や地域経済に与える影響や,日本におけるNPOの方向性とNPO・社会起業のあり方等を専門にするほか,東アジア,特に韓国・朝鮮の歴史文化,国際交流史などについても関心が高い。

6.「韓流(はんりゅう)」ブームと朝鮮通信使

 

 昨年から続く「韓流」ブーム。ヨン様(ぺ・ヨンジュン),チェ・ジウなどの俳優,ピ(チョン・ジフン)やシン・スンフンなどのアーティストへの人気が一気に高まりました。
 今年は,年明けからテレビ番組や雑誌の特集などで韓国を題材に扱ったものがことのほか多かったようです。映画やテレビ番組,音楽などへの関心の高まりから始まった昨年から続く「韓流」ブームは今年も続いています。
 私の伝統産業・地場産業への取組と並ぶライフワークに,日本と東アジアとの交流があります。とりわけ韓国との関係は,高校時代から始めた語学学習に始まり,大学学部生時代から始めた日本と朝鮮半島の交流史研究,会社を辞めた年にソウル,プサンなど4都市を巡ったホームステイなど,これまで20年近く続いています。ハングルを学ぶ日本人がごく一部だった80年代半ばの頃から振り返ると,現在,「普通の人」が,普通に韓国の俳優やスポーツ選手,アーティストに対して関心や憧れを持つようになったことについては,本当にうれしく思っています。
 さて,2005年は日本と大韓民国の国交正常化40周年となる記念の年であり,「日韓友情年2005」として,日韓両国で様々な交流事業などが予定されています。こうした時期と同じくして巻き起こっている今日の「韓流」ブームは,国レベルでの政治的,経済的な関係とは違う,「市民から高まった文化への関心」というところに大きな特徴があります。
 実は,この現象は,江戸時代,朝鮮通信使が日本にやってきた時代にも起こりました。

 朝鮮通信使は,将軍の慶事(将軍職即位等)を慶祝するために,室町・江戸幕府と朝鮮王朝との間で行われた善隣友好の一大イベントで,江戸時代には計12回の使節団が日本にやってきました。江戸時代に通信使を再開した当初は,豊臣秀吉が朝鮮半島に攻め込んだ「文禄・慶長の役(壬辰倭乱・丁酉再乱)」によって途絶えた両国の国交回復と捕虜の返還を求めた,極めて政治色の強いものでした。
 その後も,徳川幕府,朝鮮王朝双方に政治的思惑は存在したのですが,回を重ねるうちに民は違った反応を示し出したのです。

兵庫県御津町

朝鮮通信使が寄港した室津の港(兵庫県御津町)

 

 初回にも書きましたが,異国から来たこの使節団を沿道の住民は興味津々で眺め,宿泊地には使節たちに詩文の添削や書の揮毫(きごう)を求める者が後を絶たなかったと記録に残っています。また,各地に通信使の身なりや音楽や踊りを取り入れたと考えられる祭りを見ることができます。このように,江戸時代の「韓流」ブームは,日本各地に書画や風習といった形で多くの足跡を残したのですが,幕末・明治維新以降の両国の国内・国際情勢の変化によって起こった「不幸な歴史」の中に埋もれてしまいました。つまり,「ブーム」で終わってしまったのです。 
 その後,この史実が知られ,さらに21世紀の「韓流」にいたるまでの道のりは,200年近く※2を要してしまいました。
 江戸時代における朝鮮通信使に向ける民の関心は,私たち現代人が「韓流スター」たちに送る歓声に似てはいないでしょうか。これを江戸時代のように「ブーム」で終わらせないためには,さらにお互いが学びあい,コミュニケーションをとることが必要です。また,今日の様相を呈するようになるまでに,政治,経済,文化の各分野で,交流や関係づくりに尽力した先人たちのことも忘れてはなりません。
 今日の「韓流」が,「お隣の国」への真の理解のきっかけになることを願ってやみません。

 

*参考ウェブサイト:日韓友情年2005 http://www.jkcf.or.jp/friendship2005/

 

※1 「誠信」
江戸時代の儒者・雨森芳洲は,朝鮮外交に携わった経験をもとに『交隣提醒(こうりんていせい)』を記し,その中で,国家,個人とも互いに誠意と信義を以って交際することを説き,そのあり方を「誠信の交わり」といった。

 

※2 江戸時代の朝鮮通信使は1811年の第12回(対馬での聘礼(へいれい:招いて接待すること))を最後に途絶える。

 

 

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